最下位のFC岐阜を相手に6試合ぶりの白星を飾ったFC町田ゼルビア。J1昇格に向けて厳しい状況に変わりないが、上昇気流に乗るためにも次節のホームで行われる栃木SC戦で連勝したいところ。
そんな重要な栃木戦のキーマンは“小さな魔法使い”戸高弘貴だろう。
小さくても大きな存在感
小さな魔法使いといえば、オールドフットボールファンならば、元アルゼンチン代表のファン・セバスティアン・ベロンを思い出す方も多いだろう。しかし、戸高のプレースタイルがベロンに似ているわけではない。
戸高の身長は161cm。その小柄な体格はピッチ上でも一目瞭然で、彼が左サイドハーフを主戦場としていることを知らなくても、すぐに彼のポジションがわかってしまうほど。さらに静学こと名門・静岡学園で磨き上げたテクニックはJリーグの舞台でも輝きを放ち、小さな体格ながらもその存在感は大きい。
また、今のゼルビアは前線からプレスを仕掛けてボールを奪い、丁寧にビルドアップするスタイル。その中にあって、オフェンスでの戸高の動き出し、ボールの配給、ドリブルなどはまさに魔法使いのようで見る者を魅了する。
そんなチームのキーマンが、5試合未勝利となった第14節の京都サンガF.C.戦後に印象的な言葉を残している。
「ここまで勝てていないですが、悪い試合をしているとは思っていない。これからもベースは変わらずに、攻撃は単調になりすぎている部分もあるので、もっと変化は必要」
勝利した岐阜戦では繋ぐサッカーの中にも、様々な変化があった。実際に得点シーンは2つともロメロ・フランクの個人技によるもの。1点目はショートコーナーからボックス内にドリブルを仕掛けたロメロ・フランクが倒されて得たPKであり、2点目もボックス内にドリブルを仕掛けたロメロ・フランクが決めたゴラッソだった。
戸高自身も中央の位置へとポジションを移したり、うまく相手のギャップでボールをもらったりするなど、チームの攻撃に変化をつけようとプレー。これまで単調だったオフェンスのリズムが、徐々に変わってきている印象を受けた。
そうした変化の中で掴んだ岐阜戦の勝利で、一番大事なことは自信を手にしたこと。「勝つことで、選手たちやチームの中に自信が生まれるんじゃないかなと思っています」と相馬直樹監督が言うように、1つの勝利で選手たちは自分たちのやってきたサッカーに自信が持てるようになる。
戸高自身も「悪いサッカーをやっていない」と言う思いが確信に変わったはず。その思いをより強固にするためにも栃木戦での連勝が必要だ。ホームで5試合ぶりの勝利に向けて、ゼルビアの攻撃を司る小さな魔法使いに注目してもらいたい。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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