大手芸能事務所「avex」にも、なかなか例がない異色の経歴を持つ俳優がいる。がっしりとした体型と、優しげな笑顔が特徴の近藤廉(れん)は元陸上選手。中でも砲丸投げ・円盤投げで、日本トップクラスの選手ということもあり、担当マネージャーも「うちでは聞いたことないですね…」という反応だ。そんなぽっちゃり新人俳優・近藤が、学生時代から没頭したという趣味が麻雀だ。昨年10月に開幕したプロ麻雀リーグ「Mリーグ」のファンでもあり、近い将来、麻雀プロになる希望も持っている。究極の目標は、砲丸投げ・円盤投げでは届かなかったオリンピック出場を、牌に持ち替えてかなえることだ。
中学生から陸上を始めた近藤は、部活動の熱心な学校に進んだこともあり、めきめきと上達。高校時代には日本一にもなった。さらには大学も陸上で進学し、リオオリンピックの代表選考会にも出場した。日本代表の座を勝ち取ることができなかったことを契機に、avexのモデルオーディションに飛び込み、体重が本人の半分くらいのモデル候補たちに囲まれる中、まさかの合格。事務所が立ち上げを考えていた役者集団に「ぽっちゃり枠」で選ばれた。
陸上競技に明け暮れていた近藤だったが、趣味として麻雀は中学生のころから楽しんでいた。親戚との家庭内麻雀で「英才教育を受けました」と徹底的に叩き込まれ、大学時代には「練習して麻雀しての繰り返し」の日々を送った。何事も徹底的に取り組むと、何かのチャンスを生むものだ。avexが参加する麻雀の企業対抗戦に選手として参加を志願すると、出場した日に見事個人優勝。サイバーエージェントの代表取締役社長である藤田晋氏とも同卓した。そんな藤田氏がチェアマンを務めるMリーグの目標の一つが、麻雀のオリンピック競技入り。「自分が一度ダメだったオリンピックを麻雀で目指したいですね」と、目を輝かせた。
「俳優と麻雀」といえば、先駆者がいる。Mリーガーでもある萩原聖人だ。当然、近藤も萩原の芝居、麻雀をよく見てきた。「萩原さんが麻雀プロの世界に参入されて、今まで目が向かなかった人たちにも、かなり注目されていると思うんですよ。萩原さんがおっしゃっていたのが、自分だからできる宣伝ということ。僕も若い世代へのアプローチはしたいし、できると思うんです」。出演しているAbemaTVの恋愛リアリティーショー「恋愛ドラマな恋がしたい3」の視聴者層は、10~20代の女性がメイン。麻雀とは縁がなさそうなこの女性視聴者たちに、麻雀牌を初めて握らせることができたとしたら、それは近藤の大きな成果だ。
演技と麻雀、一度に悩んだ時期がある。憧れのプロ雀士を真似るばかり、自分の持ち味を消す打ち方を続け、まるで勝てなくなった。演技でも、渡された台本に忠実に演じるわけでもなく、かといって自分らしさを出すでもなく、中途半端な出来となり「周りの方からも不評をいただいた」とスランプに陥った。この時も、萩原の言葉が思い出された。「インタビューで萩原さんが、麻雀も(芝居の)役作りと一緒だと。手牌をもらったのが台本だとして、この台本をいかにおもしろくするか。役者としての技量を問われるし、麻雀師としても技量を問われるという話を聞いて、すごいなと思いました」。そこから演技も麻雀も必死に勉強し、憧れたものを真似するのではなく、自分に合ったものや個性が出るものがわかるようになってきた。自然と演技への評価も、麻雀の成績も上昇した。
今後は、萩原同様に俳優とプロ雀士の二束のわらじを履くことも考えながら、より活動に精を出していく。「藤田社長の『仕事が麻雀で麻雀が仕事』という本に出てくる雀士とかの役をやってみたいんですよね。『会社は学校じゃねぇんだよ』みたいな。あれの麻雀版のストーリーがあれば、めちゃくちゃおもしろそうだなと思います!」と笑顔で語る目は、本気そのものだった。
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近藤廉
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