竹原慎二、世界を獲るヤツは誰だって最初は「勘違い野郎」 “ガチンコ騒動”の本音も激白 
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 控室に入ると、キレイに揃えられたひと際大きな革靴が目に入った。聞けばそのサイズは29センチ。大きな足の主は、元ボクシングWBA世界ミドル級王者・竹原慎二さんだ。

「現役時代は28.5センチだったんですけどね……現役を退いてから足裏の筋肉が衰えてアーチが低くなり、ベターッと偏平足気味にサイズが大きくなったみたいです」

 かつての“コワモテ”イメージからは想像もつかないほど、他愛ない質問に対して笑顔で答えてくれた竹原さんは、2014年11月にステージ4の膀胱がんを患い、過酷な闘病生活の末に完治を果たした。今月12日に更新した自身のブログでは、グラス片手に笑顔を浮かべる写真を公開しており「今日で術後丸5年だよ。今頃ICUで地獄の悶絶中だった。もう2度と経験したくないわ」と“生存率25%”からの生還をしみじみ振り返った。

 竹原さんといえば、現役時代の強さ、迫力もさることながら、およそ20年前に放送されていたTBSの人気企画「ガチンコファイトクラブ」の“鬼コーチ”の印象が思い浮かぶ人も多いだろう。荒くれ者を集め、スパルタ教育でプロボクサーを養成していく企画だったが、若者の成長する姿と同様に、随所に繰り広げられる乱闘劇も見どころの一つだった。

 その人気を改めてうかがい知るきっかけとなったのが、15日に放送を終了したAbemaTVの格闘リアリティ番組「格闘代理戦争4thシーズン」でのある出来事だ。同番組は格闘技界の次世代スターを誕生させるべくスタートした格闘ドキュメンタリ番組で、第4弾となる今回は「K-1」のトップファイターたちが「監督」となり、勝ち抜き制によるチーム戦で激突した。その中で、さながら「ガチンコファイトクラブ」のような一幕が繰り広げられたのは、竹原さんがK-1の人気ファイターである芦澤竜誠率いる「芦澤一家」のもとを訪れた時だった。

「おい、お前らちょっと来いや」

 ジムに入るなり、そう凄まれた芦澤監督は“売り言葉に買い言葉”で胸倉を掴み大乱闘劇を演じてみせた。そしてその動画は、135万回の再生回数を数えた。そのことについて触れると、竹原さんは次のように答えた。

「本気であんなことやったら俺、とんでもない輩じゃないですか(笑)」

 とはいえ、久しぶりの“ガチンコ”は懐かしく、楽しくもあったようで「彼ら(芦澤一家)も面白がってやってくれたのでよかった」と笑顔を見せた。そしてその放送以降、街で視線を感じる回数が増えたという。

「それが直接的な原因かは分かりませんが、年配の人ではなく、若い人からの反応が増えました。中学、高校生くらいの子どもたちが、僕のことをジロジロ見るんです。ただ見るだけじゃない。以前ガチンコをやっていた時と同じ、二度見、三度見です。ネットで過去のことを色々と検索したんでしょうね。『このオッサン、昔はスゴかったんだ』という目です」

竹原慎二、世界を獲るヤツは誰だって最初は「勘違い野郎」 “ガチンコ騒動”の本音も激白 
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■世界を獲るのは「勘違い野郎」

 今回の企画を通じて、格闘家のプロを目指す若者を多く見たことで、刺激を受けたと話す竹原さん。自身も東京大田区で同じくボクシングの世界王者に輝いた畑山隆則さんとボクシングジム「T&H」を運営(会員は130名、プロは5名)し、後進の指導にあたっている。

「若くイキイキとした選手に入門して欲しい。井上尚弥選手の活躍に代表されるように、今のボクシング業界はトップこそ盛り上がりを見せていますが、私たちのジムも然り、小さなジムには強い選手は入ってこない。ほとんどが大きなジムに流れて行ってしまう。そのため今のボクシング界には“叩き上げ”の選手が少なくなっています。それでは寂しいので、皆で切磋琢磨しながら世界を目指せる環境が整ってくればいいですね。我々のジムにも、一緒に世界を夢見ることができる子が来てくれれば嬉しいです」

 世界を目指すために不可欠な要素として「努力できること」を真っ先に挙げる竹原さん。スピードや打たれ強さなど、ボクシングの強さを構成する要素は様々あるが「素質があるヤツは横着なヤツが多い」という考えが根底にある。また、その「努力」を上回る才能があると竹原さんは続ける。それが「勘違い」だ。

「俺はこの世界で一番になる、なれるんだという『勘違い野郎』に来てほしい。その勘違いが強ければ強いほど、トレーニングに打ち込めるものです。僕もそうでしたし、チャンピオンになるヤツはだいたい同じ。井上尚弥選手だって最初は『勘違い野郎』だったと思いますよ(笑)。もちろん、素質(パンチ力やスピードなど)もあった方が良いですけどね」

 そんな竹原さんの教え子が、来月立て続けにビッグマッチを控えている。一人は7月1日に後楽園ホールで井上尚弥の従弟で、現日本スーパーライト級王者でもある井上浩樹選手のタイトルに挑戦する池田竜司選手だ。竹原さんいわく「噛ませ犬として呼ばれた」そうだが、その表情からは密かな自信もうかがえる。もう一人が12日、同じく後楽園ホールでWBO女子世界ライトフライ級王座を返上した天海ツナミ選手と、自身が持つWBA女子世界フライ級王座をかけて戦う藤岡奈穂子選手だ。この一戦は、日本女子ボクシング史上“最高のカード”との前評判で注目が高まっている。

 前述した映像を見たネットユーザーからは「元気になってよかった」という快気祝いから、「強いチャンピオンを育ててほしい」という願いまで、様々な声が聞かれた。病を克服して新たなスタートを切った竹原さんの今後の活躍にも注目したい。

文/車谷悟史

(C)AbemaTV

【見逃し視聴】

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