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 「オールドメディアの崩壊が現実になってきた」「社員の方は大変だと思うけど、それが世の流れだ」「取材の概念と、コンテンツの作り方を考え直す時代なのかもしれない」(Twitter投稿より)。

 『毎日新聞が200人規模の早期退職、役員の呆れた「仕事削減策」に怒る現場』。毎日新聞社が社員の1割に当たる約200人の早期退職を求めていると報じた『ダイヤモンドオンライン』の記事(取材:千本木啓文記者)が大きな注目を集めている。新聞全体の総発行部数は1997年の約5377万部をピークに、昨年は約3990万部にまで落ち込んでおり(日本新聞協会)、この減少トレンドは今後も続くとみられる中、新聞業界はどのようにすれば未来を切り拓くことができるのだろうか。

 4日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、元毎日新聞常務の河内孝氏と、同紙の元記者で、ノンフィクションライターの石戸諭氏に話を聞いた。

■「ヤフーさんからいくらもらっているかを聞いて、ひっくり返った」厳しさを増すビジネス環境

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 まず、前出の新聞発行部数について『週刊東洋経済』の山田俊浩編集長は「今までの部数が多すぎたということだ。戸別配達制度が整備されている日本では多くの人が家に届く新聞を読んでいたし、中には2紙購読している家庭もあった。新聞社も余部、いわゆる"押し紙"を出しても部数を伸ばしていこうという方針でやってきたので、実売部数よりも発行部数が多い傾向があった」と指摘する。

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 河内氏は「部数が多ければ紙面に広告が入るし販売店には折り込み広告が入るという、"大きいことはいいことだ"のビジネスモデルでやってきたし、それでも高度経済成長期にはwin-winの関係だった。ここ10年ほど、全国紙が地元紙に刷ってもらったり、その販売網で配達してもらったりといった相乗りも出てきた。手遅れではあるが、何もやってこなかったわけではない。しかし、このビジネスモデルは既に破綻してして、"大きいことが苦しいこと"になってしまった。深刻なことに、販売実数は日本新聞協会のデータのおそらく15%、場合によっては30%程度少ないと思う」と説明。石戸氏も「20代、30代の人たちはまず紙の新聞を読んでいないし、家に宅配されていたという経験のない世代が増えていく時代に入った」と分析した。

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 一方、新聞社は自社サイトで記事を配信しているほか、ポータルサイトやニュースアプリへの二次配信も行うなど、デジタル展開も進めてきた。

 この点について河内氏は「私は2002年に毎日新聞のデジタルメディアの担当役員になったが、最初に"ヤフーさん(Yahoo!ニュース)さんやマイクロソフトさん(MSNニュース)などからいくらもらっているのか?"と聞いてひっくり返った。つまり、卒倒するような低い額だったということだ。当時の新聞社にはネットに対するいわば蔑視があり、"まあ、宣伝くらいにはなるか"くらいの気持ちで配信をスタートさせてしまった」、石戸氏は「自社サイトについては莫大なページビュー数を持っているサイトからユーザーが流入してくればネット広告が入るし、その単価も上がってくるので、紙の減少分を補えるのではないか、という理屈でやってきた。ユーザーにとっても無料で質の高い情報にアクセスできるのは良いことだが、お金を払う習慣がなくなってきてしまったし、SNSやサイトを検索すれば無料で色々な情報が引っかかってくるし、有料会員制にしてしまえば"じゃあ他で見るからいいや"と、ますます立ち行かなくなってしまう」と、厳しさを増すビジネス環境について明かした。

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 また、別の収益源について、山田氏が「新聞社は新聞"紙"社ではない。例えばテレビ朝日は朝日新聞の傘下にあるわけで、歴史を見れば形を変えたり、領域を広げたりしてきた。今も大手新聞のうち2社は不動産の収益が大きく、それが経営の安心感に繋がっているのではないか」と尋ねると、河内氏は「朝日新聞の場合、新聞事業そのものは赤字に近く、利益のうち半分くらいが不動産によるもので、あとの半分は連結子会社としてのテレビ朝日など、様々な事業からの収益だ。でも、僕はそれでいいと思う。この不動産収入があるうちにデジタル化や、次のモデルに転換することにお金を使えばいい。しかし今回の毎日新聞の話のように、紙の新聞を出し続け、全国の販売店網を維持するために社員をリストラするというのは、大変失礼な言い方だけれど、枯れている井戸に水を入れるようなもの。これでは辞めていく社員はたまらない」と断じた。

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 ビジネス環境の側面からは厳しい状況が続く新聞業界だが、メディアとしては依然高い信頼性を保っており、それはインターネットよりも優位だとするデータもある。

 石戸氏は「"新聞沙汰"という言葉があるように、新聞に取り上げられるということは社会性が高く、ネットニュースに書かれるよりも"ショックが大きい""大事だ"という受け止められ方をされると思う。また、情報接触の場としてはインターネットに抜かれているが、ネット上のニュースの情報ソースを見てみると、新聞記事が元になっているというケースが非常に多い。業界的には閲覧された場がネットに抜かれたということでショックを受ける人もいるかもしれないが、新聞社が出したニュースに触れてくれる人が増えているという面もあるし、逆にインターネットメディアは真面目にニュースをやろうと思っても、それほど広告が入ってくるわけではないし、経営的にはきつい」と指摘した。

■毎日新聞の戦略は"大間違い"、紙を止め、"通信社"になるべき

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 『ダイヤモンドオンライン』によると、毎日新聞側は今回、50代以上の社員が4割を占めるという構造の是正を目的に、50歳以上60歳未満の社員を対象に200人を削減する方針だという。対象者の多くは記者職を含む編集部門とみられており、これとセットで地方支局の人員削減についても労働組合に提案したとしている。これに対し社員からは長時間労働や取材力低下を懸念する声も上がったというが、ある執行役員は「(突発的に発生する事件は)テレビを見て取材する方法もある」「発表もので県版を埋めてもいい」と反論したと報じている。

 石戸氏は「人材をきちんと育成できるのは、今のところマスメディアだけだと断言できる。全国紙には"県版"といって、その地域でしか読めない紙面も作っている。これが若手記者にとっては取材のいろはを学ぶトレーニングや実践の場になっているが、支局が切られるということは、その機会が減ってしまうということにもなる。また、紙のルールに合わせて取材網があるので、県版も本紙の社会面も全部埋めようとすれば、それこそ働き方が大変になってしまう。それこそ仕事を見直し、いっそ県版を止めて本誌の社会面を手厚くするとか、そういった改革が必要だと思う。僕もそうだが、インターネットのおかげで、取材の場や記事の可能性はぐんと広がった。記事の行数をぐっと増やし、写真や動画を使うこともできるし、それをダイジェスト的に短くして紙に流すこともできる。つまり、現場の記者からすれば、インターネットの柔軟さはむしろありがたいことだ。その中で、新聞って一体何なのか、毎日新聞は何に強みを持っているんだろう、と改めて問い直す良いきっかけにすればいい。記者の数が減っていくというのは避けられないが、記者の仕事そのものがなくなるわけではない。個人でもできることはいっぱいあるし、時代の変化を取り込みながら、どういう記者になりたいか、それぞれが考えていくことも必要だ」と訴えた。

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 河内氏は「紙はなくなるのではなく、意識的に止めた方がいい。アメリカのニューヨークタイムズは完全にデジタルに舵を切り、今や紙の半分くらいの契約読者がデジタルだし、それで広告も取れ、利益も出している。聞くところによると、やはり地方の通信網や支局の記者を減らそうという話だが、これは大間違いだと思う。そうではなく、紙からデジタルに移行する時にいらなくなる販売局や広告局や流通網に関わる事務職から減らすべきだ。自社の航空機も、そのパイロットも整備士も、本当に必要なのだろうかまた、数年前、毎日新聞は共同通信に加盟して、地方からニュースが上がってくると言っていたが、とんでもない話だ。地方の記者の数は共同通信の方が少ない。むしろメリットは東京のニュースだ。東京の記者クラブに十数社の政治部記者が集まって、二階幹事長が話したことを全員が同じように書いている。そんなことこそ共同通信にやってもらって、代わりにコツコツと現場を歩いて独自のネタを発掘してくればいいではないか」と提案。

 「地方銀行の場合は、監督官庁の財務省が将来を見据えて統合もさせた。新聞社の場合、そういう監督官庁がないことと、読売新聞の某親分のように総理に文句を言うひともいるので、役人がなかなか口を出せず、合理的な行政指導もできなかった。通信社も、共同通信だけでなく時事通信もあるが、これも異常だ。アメリカにはAP通信社の一社しかない。しかし私は今の新聞社が通信社になり、過渡期的に4社くらいの体制になるのではないかと考えている。毎日新聞の社員数は共同通信よりも多い。そう考えれば、通信機能を強化した新聞社が併存して"うちのニュースがいいぞ"と競争し、色んなところにコンテンツを買ってもらうという世界になれば面白いと思う」。

 議論を受け、平石直之アナウンサーは「テレビ局も予算をふんだんに使える時代ではなくなった。僕は新聞が好きだが、大統領が自らツイートする時代。1分1秒を争うよりも、それをどう読み解くかや検証、組織ジャーナリズムにしかできないスクープなどに全力投球してもらいたいと思う」とコメント。

 また、若新雄純・慶應義塾大学特任准教授は「JALも最大手だったからこそ、あまり使われない路線を全国隅々まで張り巡らせ、それをやめられずに破綻した。うちの親父は学校の先生で"知識人は朝日新聞だ"と言って購読していたが、山奥にいるうちの親父一人のために採算割れしたとしても、その販売網を維持するべきなのだろうか。それをやめないことに価値があると考えているのかもしれないが、インフラの形は変わったのだから、選択と集中をしなければいけない。一方、地方新聞は訃報や"友達が大会で入賞したよ"といった記事が読める地域面がインフラのようになっている部分があるし、それを紙に残しておきたいというニーズもあると思う。また、僕たちは共同通信の記事を"共同通信新聞"として見たことはなくても、そこの記者さんが取材した情報の価値はネットで見ようが紙で見ようが認めていると思う。日経新聞のデジタル版も、購読者は高い月額料金を払ってくれている。つまり、記者さんの価値はデジタルになっても残るし、新聞社は"新聞を発行する会社"ではなく、"ジャーナリストがいる会社"になれば生き残れると思う」とコメントした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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