全42試合の長丁場である明治安田生命J2リーグもいよいよ今節から折り返しを迎える。苦しい戦いが続く、FC町田ゼルビアにとっては、後半戦のスタートで白星を飾って勢いに乗りたいところ。
迎える相手は、第9節でアウェイながらも2-0と完勝したアビスパ福岡だ。降格圏に位置するチームだけに勝ち点3は必須。そんな大事な試合で注目すべき選手は、何といっても森村昂太だろう。
アタッカーとしての才能が開花
FC東京U-15でクラブユース選手権に優勝し着実にステップアップを果たした森村は、2007年にFC東京のトップチームに昇格。柔なかなボールタッチや左利き独特のリズムから繰り出されるドリブル、精度の高いプレースキックなどオフェンス面で特徴的な選手だ。
しかし選手層の厚いFC東京では出番に恵まれず、2009年からは水戸ホーリーホックへと期限付き移籍。2011年からはギラヴァンツ北九州へと期限付き移籍を果たすと、トップ下の位置で主力として活躍し、2012年からは完全移籍での加入となった。
そんな森村は2014年、北九州のライバルチームであるアビスパ福岡へと禁断の移籍を果たす。主にボランチとしてリーグ戦31試合に出場するなど多くの出場機会を得た。しかしポゼッションスタイルの中でこそ良さが発揮される森村に対して、チームは真逆の縦に速いサッカーを志向。そのため、手応えを感じることなくわずか1年での退団を決断し、さらに当時J3だったゼルビアへの移籍を果たした。
ここまでは思うようにプレーできなかった森村だが、ゼルビア加入後は水を得た魚のように自身の長所を発揮する。加入直後は福岡時代と同様にボランチでプレーし、中盤のコンダクターを担い自身の特徴であるパサーとしての能力を発揮していた。しかしサイドハーフとしてもプレー機会を得ると、新たな才能が開花。サイドから積極的にボックス内へと仕掛けるプレーが増え、今までよりもより直接的にゴールに絡むプレーが増えた。
その最たる例が第9節の古巣・福岡戦。1点リードで迎えた88分にボックス左まで侵入した森村は、富樫からのクロスボールをワントラップから左足を一閃。強烈なシュートがニアサイドを射抜いた。
試合後の森村が「福岡では悔しい思いをしてチームを出た立場なので、そういった意味ではしっかり結果を出すことによって、自分が町田でまだサッカーをやっているんだぞということを示す結果を残せたことは、とても良かったと思います」と語るように、アタッカーとしての存在価値を見出した一戦だった。
第13節でもゴールを挙げた森村だが、ここ8試合は無得点。残留争いに巻き込まれているチームだけでなく、自身にとってもリーグ戦折り返しの初戦となる福岡戦は大事な一戦だ。これまでの流れを払拭できるか。背番号29の左足に期待がかかる。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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