持ち時間5分、1手につき5秒が加算される将棋の超早指し戦「第2回AbemaTVトーナメント」の決勝(三番勝負)が7月21日に放送され、前回優勝者の藤井聡太七段(17)が、糸谷哲郎八段(30)をフルセットの末、2-1で勝利し、大会連覇を達成した。限られた時間での読み、決断が求められる対局の中、長時間対局ばりの指し手を見せ、改めて棋界に「最速最強」であることを示した。
早指し戦における超強敵との激闘を制し、再び頂点に立った。全ての戦いを終えた後「最後はなんとか勝つことができてよかったです」と、ギリギリの戦いだったことを思い出し、ホッとした笑みを浮かべた。早見え早指しで知られる強豪・糸谷八段と、フルセットの激闘。自ら「相当危なかった」と思う場面もあっただけに、大会連覇は前回の優勝時とはまた違った達成感に包まれた。
第1局に勝利して先制し、連覇に王手をかけた第2局。ここからが正念場だった。先手の糸谷八段の誘導により、対局は序盤から大乱戦模様に。解説を務めた羽生善治九段(48)も「大胆不敵というか、薄い玉でもどんどん指してくる」と言うほどの斬り合いに持ち込まれた。ここで早指し戦でも冷静に指し続けてきた藤井七段の心に乱れが生じた。「少し焦ってしまったというか、ちょっと落ち着いて指せなかったところがあった」と、超早指し戦で最も大切である、冷静な判断力を欠いた。怪しげな手で力戦調に持ち込む“糸谷ワールド”をもろに食らい、109手で敗れタイに持ち込まれた。
運命の第3局は、またも糸谷八段の先手。第2局と似たような出だしになったが、対局間の休憩時間で心を落ち着けたのか、今度は藤井七段が穏やかな戦いに誘導した。これが羽生九段も高く評価する修正能力の高さだ。お互いが玉をしっかり囲い合う将棋に誘導し、勝負どころでも相手に手を渡す冷静さも発揮。糸谷八段の豪腕の威力を半減させる巧みさで、ついに連覇を決める勝利を掴み取った。
全棋士参加の早指し棋戦・朝日杯将棋オープン戦を連覇し、公式戦にも類を見ない超早指し棋戦・AbemaTVトーナメントも連覇。瞬時の判断、反射神経が求められることから、若手有利と言われる早指し戦だが、その中でも藤井七段は「最速最強」として突出した存在だと結果で示した。「第1回(大会)、第2回とも本当に楽しく指すことができ、結果も残すことができました。やはり次は3連覇を狙いたいなと思います」。17歳になった藤井七段だが、来年大会に向けての成長速度もさらに増していく。
敗れた糸谷八段のコメント 3局、結構過酷な戦いでしたけど、楽しく指せたんですけどね。ちょっと最後悔しいですね。ただ、まだこれだけ戦えるのは自信になりましたね。(次回)呼んでいただければ、もちろん出させていただきます。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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