香港から中国本土への容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案への反対に端を発した香港のデモは収束の兆しを見せていない。それどころか、デモ隊と当局のにらみ合いによる緊張は、時間が経つにつれて静かに高まっている。そんな状況にジャーナリストの堀潤氏が「国際社会は中国のあおりに踊らされてはいけない」と警鐘を鳴らした。
先月に国会の立法院がデモ隊によって占拠された直後、また2015年に発生した雨傘運動の際にも香港を取材した堀潤氏は、現在の状況について「中国当局から仕掛けられて暴動は拡大している」と指摘。その根拠として「雨傘運動のときに若者たちが平和的なデモを行っていたが、突如輪の中に割って入った女性が上げた金切り声によって混乱が既成事実化。若者たちは一斉に両手をあげて無実であることを強調したが、混乱が発生したと決めつけた当局によって一気に逮捕者が出た」と説明した。
さらに今、デモを行う若者たちが疑心暗鬼であることに触れると「デモの参加者の中には私服の香港当局者、また中国当局と何らかの関係があると思われる集団がおり意図的に暴徒化している。国際社会は単純に香港の若者が暴走、テロ行為の兆しあり、鎮圧やむなしと考えるのはちょっとストップした方がいい」と続けた。
そのうえで「若者たちも(その危険性を)わかっている」と話すと「地元の新聞社と連携を取り、サインを決め、アナウンスするなどして、とにかく冷静で平和的・民主的な運動を心掛けている。それだけに彼らは今、日本で『香港暴動』といった見出しでニュースが流れることに対して非常に悔しい思いをしている」と話し、デモを行う若者たちの心境を代弁した。
香港のデモ隊によって暴行を受けたとされる中国人記者については「中国の国営メディアの中でもかなりの右派といわれている環球時報の記者。普段から過激な論調で知られている。暴行を受けて帰国した彼は、中国本土で英雄扱いされている」と明かす一方、中国本土と香港は今や経済的に切っても切れない関係になっていることに触れると「深センから遊びに来た中国の学生はデモのことを一切知らなかった。ツイッターの画像などを見せて状況を説明したが、彼らはこの状況が本土に知れたところで難しいと。彼らはBPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)という中国国外のサーバーを経由して得たい情報を得ている。仮に香港のニュースを得たところで『あぁ、大変だよね。それよりさ…』と関心は他のことに向いてしまうだろう」と述べ、個人の尊厳よりも国家の秩序が重要視される空気を残念がった。
すると東京大学大学院卒で元日経新聞記者の作家・鈴木涼美氏は「日本も1960年代初頭までは政治の季節だったが、高度経済成長期は政治への関心が低かった。今の中国がそういう状況なのだろう」と日本の歴史を振り返り、紐づけて解説した。
(C)AbemaTV
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