「ジンギスカンの料理名変えて」モンゴル出身教授の主張で物議「チンギス・ハンはモンゴル人にとっての天皇」
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 都内にも多くあるジンギスカン専門店。実はいま、この「ジンギスカン」という料理名に物言いがついている。

 きっかけとなったのは、ニューズウィーク日本版に掲載された『キム・カーダシアンの「キモノ」に怒った日本人よ、ジンギスカンの料理名を変えて』という記事。書いたのは、中国・内モンゴル自治区出身で静岡大学の楊海英教授で、「モンゴル人にとってのチンギス・ハンは日本人にとっての天皇家と同じであり、料理の名前にしてはいけない神聖な存在」と指摘し物議を呼んだ。

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 AbemaTV『けやきヒルズ』の取材に対して楊教授は「80年代後半、90年代も日本にいるモンゴル人の間では話題になって、『なんであの料理がジンギスカンなんだ』と。ジンギスカンという名称にみんな抵抗を覚えていた。日本文化なのにジンギスカン(チンギス・ハン)という名称をつけている。一方で、外国の下着だろうと衣装メーカーだろうと、『着物』を使うとなると、日本ではこの前過敏というか大きな反響があった」と答えた。

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 今年6月、アメリカのタレント、キム・カーダシアンさんが発表した補正下着ブランド「Kimono」。これの商標登録を目指したことで、日本からは「文化の盗用だ」と反発が起きた。13万人以上の反対を表明する署名が集まるなど批判が殺到し、カーダシアンさんはブランド名を変える決断に至った。

 楊教授は、「Kimono」を文化の盗用だと主張した日本人がジンギスカンを料理名として使い続けるのは“ダブルスタンダード”だと主張しているのだ。「日本各地で食べているジンギスカンという料理はモンゴル料理にない」。

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 日本人がジンギスカンを料理名として呼び始めたのは、明治後期から大正の間だと言われている。羊肉料理の歴史に詳しい高石啓一氏は「鷲沢与四二と井上一葉という2人が、『正陽楼』というお肉屋さんで食べて、『ジンギスカン』という名前にしようと(決めた)」と話す。新聞社の北京特派員だった鷲沢と北京在住の井上の2人が、正陽楼で食べたのが「カオヤンロウ」という羊肉料理。モンゴルでも食べられていたことから、英雄チンギス・ハンの名前で独自に呼び始めたそうだ。その後、中国在住の日本人の間でジンギスカンの名が浸透し、日本でも羊肉を焼いた料理として広められたと言われている。

 このモンゴルには関係ない料理の名前について、モンゴル人の中には受け入れられないという人もいる。番組が日本にいるモンゴル人の方々に「ジンギスカンについてどうおもうか」と質問したところ、「最初に思ったのは失礼だと。王様の名前が料理の名前だったから。(似た名前には)正直してほしくない」「年をとっている人は『チンギス・ハンの名前を料理に使うな』とか怒ったりする人もいた」「モンゴル人の神様みたいな存在」「モンゴルの人にとって、お父さんみたいな夢のような存在。チンギス・ハンはモンゴルの人たちのために色々やっているし、お父さんみたいな人です」と否定的な声が多くあがった。

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 モンゴル人にとって、神様であり父や先祖のような存在であるチンギス・ハン。日本とモンゴルの両文化を知る楊教授は、日本人が悪意を持っているわけではないことはわかっているとしながらも、「それでも料理として使われるというのには自分の祖先、自分の神様が“食われている”“消費されている”という印象は避けられない。来年オリンピックがあるので、国際化が一層進むと思うし、これをきっかけに見直したほうがいいんじゃないかと思った」と述べた。

 楊教授が指摘した“ダブルスタンダード”について、記事を掲載したニューズウィーク日本版の長岡義博編集長は「私個人としては、キム・カーダシアンさんが『Kimono』という言葉を使ったことはそれほど嫌ではない。それは彼女から日本文化へのリスペクトを感じたからだ。商標権というお金が絡んだので問題になったのだと思う」とした上で、「ジンギスカンを食べる時にチンギス・ハンを思い浮かべる人はほとんどいないだろう。モンゴルの人に突然指摘されて違和感を覚える日本人もいるかもしれないが、我々は自分たちがふだん何気なく使っている言葉を『嫌だ』と感じる外国人がいることに思いを馳せないといけない」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

【映像】「ジンギスカン」の料理名にモンゴル人の声は

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