今から遡ること約12年、アニメ界に画期的な作品が誕生した。「女子高生×麻雀」という、これまでなかった掛け合わせを実現したのが、同名の人気漫画からアニメ化された「咲-Saki-」だ。それまでのギャンブルイメージが強い麻雀漫画・アニメとは一線を画し、女子高生がスポーツ部のように本気で麻雀と向き合い、戦う姿が描かれると大きな反響を呼び、後に実写ドラマ化・映画化もされた。漫画は今なお連載中で、アニメの続編を期待する声も根強い。今回、シリーズ作品に登場した宮永咲役・植田佳奈、鶴田姫子役・大亀あすか、上重漫役・伊達朱里紗の3人に当時のエピソードや、現在の作品に対する思い、麻雀について話を聞いた。
-はじめに「咲-Saki-」という作品との接点は、どんなものだったでしょうか。
植田 アニメの前にラジオシリーズをやっていたんです。そのころから携わっている作品でして。ラジオドラマ、CDドラマを制作するにあたって、スタッフさんから「麻雀番組をやりたいね」と言われて、キャスティングされたのが私と原村和役の小清水亜美でした。全く何もなしで麻雀の番組というのも突拍子もないから、何か作品を絡めてやりましょうってことで、選ばれたのが「咲-Saki-」だったんです。
大亀・伊達 へー!!
植田 ラジオとは別にアニメのラインは動いていたので、本当ならアニメ用にオーディションをやるんでしょうけど「咲-Saki-」のラジオを聞いてくださっているスタッフさんたちが、ラジオのキャスティングをそのままスライドしたいと。
大亀 素敵!いい話ですね!
植田 (清澄高校の)最初の5人は、ラジオにゲストに来てくれる仲のいい声優友達で集めていて。このキャラなら、この人がいいねと決めました。
-後から作品に参加したお二人は知らなかったですか?
大亀・伊達 初めて聞きました!
伊達 そんなことあるんだ!めっちゃうらやましいです。麻雀が好きで集まって、それがラジオになってアニメになって。しかも仲いいみんなでできて、神のようなコンテンツ!
大亀 麻雀を知らない人がやるよりも、理解している人をやる方が、愛情込めて演じてくれるので、すごくいいですよね。
伊達 意味分からず二盃口(リャンペーコー)って言うのと、分かって言うのでは全然違いますもん。
-今では「咲-Saki-」を見て声優界に入ってきた方も多くいます。
植田 今だから普通ですけど、「咲-Saki-」のアニメが始まったころは、こんなに長く続くとは思っていなかったです。当時はまだ麻雀は怖いというイメージがすごくあって。アニメに出ている役者さんの中でも、アニメに出るのはいいけど、テレビで麻雀を打つとか、麻雀の仕事は受けませんという方もたくさんいたんですよ。でも、今では「咲-Saki-」と言ったら、若手声優さんの登竜門だとオーディションで言われていたりもするみたいで。時代は変わりましたね。
-そんな中、大亀さんと伊達さんは、声優だけでなく日本プロ麻雀連盟所属のプロ雀士にまでなりました。
大亀 でも佳奈さんがいたから、私たちも存在してるんだと思いますよ。
伊達 本当にそうですよ。プロになろうって思ったのは「咲-Saki-」があったからですね。
大亀 麻雀を知ったのが「咲-Saki-」なので、そこで麻雀の楽しさを知りました。初めて番組で麻雀を打った時は、正直平和のアガリ方も怪しいくらいだったんですけど(苦笑)
そんな私がプロですからね。
-「咲-Saki-」のキャラクターになりきって打つことはありますか?
大亀 キャラクターはみんな能力持っているので(笑)ただ見ている人にとっては、キャラクターの何かがシンクロしているのを見るのは、おもしろいかなって思います。
伊達 「咲-Saki-」が出るまで、麻雀ってずっと個人競技だったじゃないですか。でも「咲-Saki-」の世界ってずっと団体戦。5人でバトンをつないで、10万点を持って。昨年から「Mリーグ」というチーム戦のプロ麻雀リーグができましたが、その世界観とか戦い方って、「咲-Saki-」発信のところがあるのかなって思うところがあるんです。団体戦って、応援するのむちゃくちゃおもしろくないですか?
-ちなみに「咲-Saki-」はスピンオフ作品が連載中で、テーマは「麻雀めし」です。みなさん、何かこだわりはありますか?
伊達 私は鉄板でカレーですね。おいしすぎる…(笑)雀荘のカレーって異様においしくないですか!?
大亀 わかるー。わかるー。雀荘で食べるジャンキーなものってとってもおいしいよね!私は焼きそばが好きなんですけど。家で食べるのと、雀荘で食べるのと、同じものでも違う味がする気がする!
伊達 今日はあそこの雀荘行くから、あのカレーが食べられるぞ!みたいな。
植田 私はそんなに長時間、雀荘にいないので。出前とかだと、イメージでカツ丼とか?験担ぎみたいで。
-「麻雀めし」は食べるタイミングが難しいのが、あるあるネタです。
伊達 そうなんですよー。
大亀 一時期、伊達さんとよく雀荘でセット打ちしてたんですけど、伊達さん本当に食べるのが遅いんです(笑)ただでさえ食べるが遅いのに、麻雀しながら食べるから、もっと遅くなって(笑)気づいたらご飯とか冷えてて、カピカピで…。店員さんも下げていいのか、どうだかわからないくらい(苦笑)
-ちなみにプロ麻雀リーグ「Mリーグ」(9月30日開幕)は、1チーム3人か4人で構成されることになっています。みなさんでお好きに「チーム咲-Saki-」を作るとしたら、どうなりますか?
大亀 4人ですか。「僕が作るチーム」みたいな? 姫子と白水哩は2人でないと。ニコイチなんで。
伊達 実際、能力的にはどうなんですかね。テルさん(宮永照)1回もらいますか?(小声)
大亀 ずるい、ずるい、ずるい! 佳奈さんはどうですか?
植田 どうなんだろう。でも清澄高校は、やっぱり仲間の絆が強いから。他の学校から入れるとか考えづらいかな。
大亀・伊達 うわー!!!!(大拍手)
大亀 これがチーム愛ですよ!!聞きましたか、みなさん!伊達さんなんか真っ先に、違う学校選びましたから!!
※伊達演じる上重漫は南大阪代表姫松高校。宮永照は白糸台高校のエース。
伊達 違うよっ!違うよっ!!
一同 (爆笑)
伊達 やっぱり自分のチームが一番ですよね(笑)
大亀 私は、姫子と哩、園城寺怜と清水谷竜華で「チーム百合」を作りたいです!
一同 (爆笑)
伊達 カップルちゃんとカップルちゃんだ。
大亀 需要があるかなと(笑)
-「咲-Saki-」は漫画、アニメ、さらには実写でドラマや映画にもなりました。
大亀 姫子役ではないんですけが、私だけちょっと出させて頂いて(照)若い子たちの中に混じって、学生服で出るっというとんでもない経験をしました(笑)現場では監督やスタッフも作品を愛してくれているのが分かりましたし、役者さんたちも空いた時間で牌を触って切り方の練習をしていましたね。
伊達 ドラマの第1話見た時に、女優さんが牌に触れ慣れていないのが分かったので、「頑張って!」と思ってました。我々は声だけですが、女優さんは全部を演じないといけないので大変だなと。
-初心者の役を麻雀が得意な人がやると、所作が上手すぎてしまうという話もあります。
大亀 現場でカメラチェックの時に「一人切り方うまい子いるよ」って言われて。「ええ、プロなんで」って言いました(笑)
-「咲-Saki-」という作品をきっかけに麻雀に触れ、さらには大亀さん、伊達さんのようにプロ雀士にもなる方が出てきたことについて、改めてお願いします。
植田 私は横の2人より世代がだいぶ上で、自分が出ている作品がきっかけで、アニメに触れたり、麻雀に触れたりという機会がだいぶ多くなってきてはいるのですが、「咲-Saki-」に関しては、実際に見てプロになっている方がすごくたくさんいるんです。人の人生を変えてしまう作品だったなと、今さらながらすごい作品に出会えたなと思います。
大亀 麻雀という世界に入りやすくしてくれたのは、「咲-Saki-」という作品や、植田さんみたいな素敵な女性のおかげです。麻雀のイメージをクリーンにしてくれて、ちゃんと打ってくれる先輩がいてくれたからこそ、私たちもプロになれたと思います。
伊達 私はプロになる前から声優の後輩の女の子に「麻雀教えてください」って言われることがすごく多くて。そこのきっかけには、「咲-Saki-」の流れが絶対にあると思います。プロになってからは、より一層雀荘で話しかけられることが多くなったんですよ。「咲-Saki-見てました」って。影響力、やばいですよ。
-アニメの続編を期待する声があります。
植田 漫画の原作がまだ終わってないじゃないですか。終わりが見えないのが、いいことでもわるいことでもあるかなと最近思っていて。前のアニメが終わった時は、原作に追いついてしまってというのがあったのですが、いつかまたやれればいいなと思っていました。第1期のメンバーは、(14年前の)あの声がいつまで出るかなと怯えていて(苦笑)早めにやってくれないと、代替わりしてしまうので(笑)
大亀 中の人問題がっ!(笑)
植田 それがネタで言えるくらい長く続いているのがうれしいです。
(C)AbemaTV