台風上陸から1週間が経った、千葉県・鋸南(きょなん)町。上空から見てみると、ブルーシートで屋根が覆われている家の数から、町の広範囲にわたり台風の被害を受けたことがわかる。
週末、鋸南町には多くのボランティアが集まり、物資の仕分けやがれきの撤去、壊れた屋根にブルーシートを貼る作業など、人手が必要な作業が町の至るところで行われた。しかし、16日は作業の邪魔をするかのように雨が降り続いた。
さらに山間部に行ってみると、深刻な台風被害の様子が明らかに。がけ崩れが起き山肌があらわになった場所や屋根ががれきとなって庭に積まれた家も。住人の石井陽子さんは「あのお兄さん1人で(補修を)やってるのよ。自衛隊の人がいたらもっと楽じゃない。これなくなっちゃたら(雨で)ビタビタ」と話す。家の中にも雨が入り手のつけられない状況で、畳は濡れて使い物にならず、天井にも雨ジミが残っている。
今一番欲しいものは「生野菜とかそういうもの」と答える石井さん。支援物資として届けることが難しい生ものを食べられないことがストレスに感じるという。
自宅で過ごすことができない今、普通の生活に戻る目処も立っていない。石井さんは「こんな家でもなんでも、自分の家っていうのは違うんだよね。ちょっと雨漏りしてもいいから自分の家に帰りたい。自衛隊に頼むのが遅いんだよね。県はこんなにひどくないと思っていたと思う。電気もすぐにつくって言ってたでしょ、電気会社が。みんなそう思ってた。でもつかないじゃん。なんでこんなに遅いのって。それから真剣になったみたい」と話した。
千葉で大規模停電が発生してから、復旧に関する東京電力の説明は二転三転し、国の災害対策本部は今も設置されていない。こうした状況にBuzzFeed Japan記者の神庭亮介氏は「政府や県庁、東電の初動は鈍く、メディアの報道も大きく出遅れた。台風が来る前は『すごいのが来るぞ』と盛んに報道していたが、その後電車が徐々に再開し始めると、事態が収束したかのように錯覚してしまった。テレビ局や新聞社などのメディアの多くは東京にあり、在京メディアの人間は、そこまで千葉の状況がひどくなっているとはわかっていなかった」と指摘する。
鋸南町に関しては、Twitterに投稿された1本の動画と「報道をしてください」「助けが必要」だと訴える声がネット上で拡散されたことで、被害状況が知られることとなった。神庭氏は、そうした声はSNS上で盛んに発信されていたとした上で、「メディアは内閣改造や韓国の話ばかりを重点的に報じ、ニュース価値の判断を誤った。東京は大きな被害はなかったものの、千葉では断水、停電とまだら模様に被害が出ていた。“正常性バイアス”という言葉があるが、非常事態を過小評価してしまったのではないか」と苦言を呈した。
千葉県では停電後、これまでに熱中症の疑いで3人の死亡者が出ている。神庭氏は「台風で亡くなったのは自然災害だとしても、熱中症は正しい情報が伝わって適切に避難したり、早めに電源車を出したりすれば防げていたかもしれない被害。SNSの情報から顧客ニーズを探ることをマーケティング用語で『ソーシャルリスニング』というが、テレビや新聞などのマスメディアも、災害時にはSNSの声にもっと耳を傾けたほうがいい」と訴えた。
また神庭氏はメディアの災害報道の意義として、「被害状況を外に向けて発信すること」「被災者に必要なライフラインの情報を発信すること」をあげる。「今回は両方とも十分ではなく、特にライフライン情報の発信が不足していたのでは。停電エリアの被災者の方はテレビも見られないわけで、スマホで情報を確認していたはず。早い段階でネット上にまとまった情報を出せていたら『報道が足りない』という言い方はされなかったと思う。ネットメディアに果たせる役割も多いと思うので、自戒を込めていい方向に進んでいけたら」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶【映像】1週間経った千葉・鋸南町の現状
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