16日、白鳥大珠がRISE世界トーナメント(-61kg)の決勝において、準決勝に続く2試合連続の「ビッグ・アップセット」をやってのけ、世界一の座を掴んだ。
日本を代表する選手同士の対戦となった決勝戦。白鳥の対戦相手である梅野源治はムエタイの殿堂・ラジャダムナンスタジアムのベルトを巻いたこともあり、日本ムエタイ界の至宝ともいえるトップ選手。ルールの違いがあるもののRISEに参戦し、試合ごとに適応しながら決勝戦まで駒を進めた。
白鳥は那須川天心と同門のRISE現ライト級王者。キックボクシングから一度ボクシングに転向し、そこからキックに戻ってきた。このトーナメントでは一回戦、準決勝とも海外の強豪に勝利している。特に準決勝、ムエタイ王者・セクサンからダウンを奪って勝利した“ジャイアント・キリング”で一気に評価を高めた中で迎えた大一番だ。そんな「新・旧」世代対決という趣もあったこの試合で、ポテンシャルを見せつけたのは白鳥だった。
序盤は梅野が右ミドル、左ローを主体に攻撃。サウスポーの白鳥に対して、右の攻撃はセオリー通りと言っていい。しかし「ボディが当たったことで確信を持つことができた」という白鳥も次第にアグレッシブに距離を詰めていく。梅野が組みつくシーンが多くなってきたのは、「苦しさ」の表れだったのかもしれない。そして間合いを掴んだ白鳥がパンチをラッシュすると梅野がダウン。冷静に時計に目をやると、残りは10秒だ。
「カウント早くしろよと内心思いましたが(笑)、ラウンド内で仕留めるにはコンパクトに打ち抜くしかないと思いました」
狙いどおり、梅野が立ち上がったところへ渾身の左ストレートを一閃。1ラウンド2分59秒、見事なKO劇を演出した。
白鳥は新世代のスターとして申し分ない闘いを見せたと言える。試合後、これまで控えめだった白鳥は「これから自分がRISEを引っ張ります。RISEは天心だけじゃない」とアピール。この世界トーナメントで、白鳥は間違いなく大きな飛躍を果たした。
落ち着きを取り戻した白鳥は控室で「自分と周りを信じて、余計なことを考えなければいいとハッキリわかった。周りの声や試合結果を気にしても、いい結果には結びつかない」と話し、本人も消化不良だったと認める試合結果が生んだ周囲の雑音の影響から、どこか胸を張れずに苦悩した時期を静かに振り返った。
そんな心境に変化が訪れたのは、7月に行われた同トーナメント準決勝で対戦したムエタイの強豪であるセクサン・オー・クワンムアンとの一戦だ。「負けてもいいと思って開き直っていた」という白鳥はパンチでセクサンを圧倒し、フルマークの判定で大金星を収めている。「今までやって来たことが自信につながった」と話す白鳥だが、満足はしていない。「形の上では世界一の称号は得たが、もっとできること、挑戦したいこともある」と決意を新たにしている。
17日に行われた一夜明け会見では、RISEの伊藤隆代表が「間違いなくスターになる選手」と白鳥の成長に太鼓判を押した。自らの拳で周囲の雑音を一蹴した白鳥。名実ともに、“キックの王子様”の快進撃がこれから始まる。
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