2014年に放送されて以来、女の子たちの“ゆるふわ”な会話が人気となったアニメ「ご注文はうさぎですか?」(以下、ごちうさ)。原作が4コマ漫画ということもあってか、主人公・ココアを中心に描かれた女の子たちの会話は、実に他愛もないが、その脱力感が多くのファンの反響を呼んだ。第1期放送から5周年となった2019年。9月26日に新作OVAを発売。さらに2020年には第3期の制作も発表されている。今回、5周年とOVA発売を記念して、ココアを演じる声優・佐倉綾音にインタビューすると、未体験だった「日常系アニメ」について「何も起こらないのに、大丈夫なんだろうかとずっと手探りでした」「ココアの役は受からないと思っていた」というエピソードが明かされた。
-「ごちうさ」が5周年を迎え、新作OVAの発売、第3期の制作も決定しています。この5年間を振り返って、どんな感想をお持ちですか。
佐倉綾音(以下、佐倉) 育てていただいたコンテンツという印象が強いですね。1期が始まった時、日常系アニメというのがちょうど流行り出した時期だったこともあって、私たちは(作品が)たどりつく場所を知らなくて。すごく手探りで、手応えのないままアフレコをずっと続けていた記憶があります。そんな中でもオンエアが始まったら、予想を上回る反響がありまして。「何も起こらないのに、本当に大丈夫なんだろうか」と思いながら、台本読んだり、アフレコを進めたりしていました。何も起こらないことに対してそこまで反響が来ることに、キャスト一同びっくりしていましたね。わからないなりに、肩の力を抜きながら、きちんとやるべき役割をこなしていたらたどりついたという気がします。
-今では定番となった「日常系アニメ」は、大きなイベントがないので不安にもなりますね。
佐倉 「日常系」というアニメの概念を私もちゃんと理解していなかったので(笑)本当に女の子が楽しそうにしゃべっているだけでいいんだろうか、キャラクターたちは楽しいかもしれないけれど、見ている人はどういう気持ちなんだろうとか、毎週見てくれるんだろうかとか…そういう手探り感はありましたね。
-その「手探り感」に手応えが出てきたのは、どんなことからですか。
佐倉 これは私の考え方のひとつなんですけど、作品の手応えが届くのって、ファンの方からだけじゃなくて、周りのスタッフさんや友人から「見たよ」「流行ってるよ」と言われることだと思っているんです。「あ、すごく世の中に響いているんだな」というひとつのわかりやすい指標で、「ごちうさ」も、ちょうど1期が終わったくらいの時期にそういう風に言っていただくことがとても増えたんです。女性の方からも言ってもらえることが増えたのは、2期あたりですかね。キャストたちの中では「本当にこれでいいんだろうか」「今回も何も起こらないけど」という話は、1期あたりからしていたんですけど(笑)これがどうやってみなさんの心に届くんだろう、とも思っていました。
あと私の中で大きかったのは、監督の橋本裕之さんがとても楽しそうに作品を作っていた様子ですね。すごく自信と愛を持って作品づくりをされていて。橋本さんはコミュニケーションもとても上手な方で、監督さんにしては珍しいくらい、1期のときから役者にしゃべりかけに来てくださるんです。橋本さんの自信を、私の自信にも変えながらアフレコに臨んでいました。
-アニメ放送から5年経った今だから話せることを、1つお願いします。
佐倉 オーディションを受けた時ですが、ココア役が自分の中では一番「ないな」と思っていたんです。たまにあるんですけどね…一番「ないな」と思っていて受かることが(苦笑)
-受からないと思った理由はなんですか。
佐倉 ハマる・ハマらないというのもそうですが、作品の中で真ん中に立っている一番個性が少ない子、バランスを取っている子の声として、採用されないんですよ。その時(2014年)のキャリアでは特にそうでしたが、どちらかといえばシャロとかリゼとか、そういう方向性のキャラクターを演じることが多くて、ココアのような役には全然受からなくて。自分として全くピンと来ていないままで「もっと違う、クセのない、透き通った声の人がやるんだろうな」と思っていました。決まった時は「なんで?」と思いましたね(笑)
-ご自身としても新たな発見でしたね。
佐倉 オーディションの時も、どう演じたか覚えていないんです。今となっては考えすぎないキャラづくりをしたから受かったのかな、とも考えたりして、受かった後もココアに対して深堀りすることもなく、ただとってもポジティブで、ひとりごとの大きい女の子というテーマで演じていましたね。あとは周りの女の子たちとのコミュニケーション。ココアがおしゃべりしている相手から出てきたものをちゃんと受けてお芝居する、というのを意識してずっと演じています。
-5周年を迎えて、再びファンの間でも盛り上がりが高まっている状況です。
佐倉 ラジオに来るメールや、いただくお手紙を見て、楽しみにくださっている声はとても大きいなというのを感じています。本編の収録がない時でも、キャラクターソングやコラボ音声などの収録がコンスタントにあったので、緊張感が途切れることなく、OVAのアフレコが出来たかなと思います。全然、久々という気がしなかったです。
-OVAの見どころをお願いします。
佐倉 最終回みたいなOVAだったなと思いました(笑)新しい要素もあれば、今までの要素も、たくさんのものが30分に詰め込まれていて、ちょっとした集大成のような。ここでこんな曲が使われるんだとか、私たちも想像していない作りになっていました。
-OVAはチノがメインに描かれています。チノについての印象はどんなものですか。
佐倉 大きくなったなあって。でもどこか変わらない芯があったりと、ちゃんと安心して成長を感じられる気がしましたね。「ごちうさ」のキャラってみんなそうだと思うんですけど、根幹がしっかりしている上で、わちゃわちゃいろんな感情を見せてくれるので楽しいですよね。これがみなさんに支持してもらえている理由なんでしょう。
-最後にファンの方々へのメッセージをお願いします。
佐倉 作品が始まって、キャラクターたちの声が聞こえてきた瞬間に「ああ、帰ってきたな」と、いつもの「ごちうさ」が迎えてきてくれる感覚がありました。なおかつ作品の奥行きがさらに感じられるような新しいキャラクターが出てきたり、新しい音楽が聴けたりするので、今までどおりの安心感と、新しい要素、両方を楽しんでいただけたら幸いです。
(C)AbemaTV