ヤフーによる買収で業界地図に異変?ZOZO執行役員の田端信太郎氏と考える、ECの多様化と”買い物の未来”
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 12日、突如発表されたヤフーによるZOZO買収計画。ヤフーは年間購入者数800万人を超えるZOZOを傘下に収め、PayPayとの相乗効果によって「相互送客効果でユーザー数爆増」「取扱額爆増」「営業利益も爆増」を狙い、EC業界で高い壁となっている楽天とAmazonを上回る"国内ECナンバーワンの座"を目指す。ヤフーの川邊健太郎社長は「楽天さん、アマゾンさん強いんじゃないの?(1位になると)言っているだけなんじゃないの?という意見も一部あったと思うけれど、我々は2020年代前半で国内ナンバーワンに手が届きつつあるのではないかと考えている」とアピールした。

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 国内ECの物流総額(2018年)を見てみると、楽天(楽天市場+ラクマ)約3.6兆円、Amazon約2.7兆円、そしてYahoo!(ヤフオク!+ショッピング)約1.6兆円、ZOZO約0.3兆円となっている。一方、インフルエンサーマーケティング型ダイレクトECや実際に商品を使用する映像をライブ配信し購入に誘導する「ライブコマース」、LINEやInstagram上のコミュニケーションを通じ購入する「SNSダイレクトコマース」など、インフルエンサーを中心に据えたECの形態も注目を集めている。

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 20日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演したZOZO執行役員の田端信太郎氏は「全体的に成長は鈍化するとは思うが、まだまだ3合目くらいで、まだまだ伸びると思う。あと10年か20年くらい経つと、消費支出の3分の1くらいはECになっていても全然おかしくないという気がする。我が家の場合、もう半分くらいはECで購入している。ただ、流通総額については、例えばZOZOやメルカリ買ったものをまたそこで売るとなると、ダブルカウント、トリプルカウントになる。1万円の服を買って1、2週間着て、7000円で売れば消費者にとっては実質3000円だったりもする。つまり流通総額をどう定義するか、なかなか悩ましいところがある」と指摘。

 ヤフーによるZOZO買収については「まだTOBも終わっていないので、"買収された"という過去形で語るのは若干問題があるが、良くなるのではないか。良くなると思うが、それ以上は(笑)」とした上で、「一般論としては、各社が手がけている決済サービスも含め、新しくクレジットカード番号を打ち込む必要性・必然性が無くなってきていると思う。そうなると、基本的にはクレカ番号を既に押さえていて、ペイメントにすぐ繋がるようになっている大手の方が相対的に有利なので、徐々に寡占状態になっていくのかなと思う」との見方を示した。

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 今回の提携発表について、楽天でECコンサルタントの経験があり、現在は日本ECサービス株式会社代表取締役を務める清水将平氏は「びっくりはしたが、提携の選択肢としては一番あり得た相手ではないか。楽天市場の数字には楽天トラベルなども含まれているので、一概に3.6兆円で1番、とは言えないかもしれないし、Amazonも直接販売している部分が含まれているので、単純に比較するのは難しい。ただ、ヤフーとしてはZOZOと一緒になることによってアパレルを買う若年層が取り込まれるだけではなく、今回の提携を機にYahoo!ショッピングやPayPayモールで買い物をする方が増える可能性もある。いい意味で伸びてくるんじゃないかと思う」と話す。

 「8割くらいの人がAmazonと楽天の両方を使っているとみられ、早く届いてほしいものはAmazonで買い、食品になると品揃えの多い楽天で、という具合に使い分けていると思う。セブン-イレブンとローソンとファミマの中で、セブンしか行かないという人はいないと思う。それと同じで、自分の会社の近くにセブンがあればそこに行くし、家の近くにローソンがあればローソンに行くという感じで、状況や距離に応じて使い分けるはずだ。そういう感覚だと思う」。

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 また、自身もECを手がける株式会社ウツワ代表のハヤカワ五味氏は「どのプラットフォームのアカウントを持ち、メインで使うかも購買の動機に繋がるし、例えば楽天やZOZOではAmazonのAmazon Payが使えるし、Amazonに登録している住所に配送することができる。いわば最終的にどこが情報を持つのか、ということもカギだと思う。また、私が関わっている生理日の予測から生理用品の購入まで行えるプロジェクトはLINEと連動している。それは自分の住む沿線で買い物をするように、オンラインでの買い物も普段の生活の中で使っているところで買えたほうがいいという発想からだ。これからは特に中小のブランドの場合、どこのプラットフォームに所属するのがキモになる気がしている。ファッション分野に関して言えば、『東京ファッションウィーク』のメインスポンサーがAmazonから楽天に替わった。基本的にAmazonはファッションには消極的なので、ここはヤフー+ZOZOと楽天の一騎打ちになるのではないかと注目している」とした。

 一方、迎え撃つAmazonと楽天は物流の強化に動き出した。Amazonは再配達など運送業者の負担を減らすため、駅やコンビニに専用のロッカーを設置すると発表。セルフサービスの導入でより柔軟な受け取りが可能になる。楽天は、無人ロボットを使った配送の実証実験を開始するなど次々と新機軸を打ち出している。

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 また、物品別にEC化率を見てみると、事務用品・文具が40.79%、電化製品等が32.28%、書籍・映像・音楽ソフトが30.80%、雑貨・インテリアが22.51%、衣類等が12.96%、食品等が2.64%となっているが、全体として日本国内の「EC化率」(B to C)は6.22%にとどまる。それぞれEC化に向けた余地があるとも考えられる一方、実店舗の方がまだまだ強い分野もありそうだ。

 視聴者からは、ダンボールの処理に困るという訴えやポイントの還元率の問題、セキュリティやレビュー欄のサクラへの不安、さらには番組出演者が着ているものすぐに買えるという機能があれば等、様々な意見が寄せられた。

 清水氏は「冷蔵・冷凍になると送料が高くなってくるので、そこは実店舗のニーズがまだまだ残ると思う。楽天が来年から送料を一律無料にする基準を設けるので、それがどう影響するのか気になるところだ」と指摘。ハヤカワ五味氏は「過疎化でスーパーが減って近所で買えなくなってくるとECのメリットが出てくると思うが、郊外や地方ではイオングループが圧倒的に強い。そこにどのようにアプローチしていくのかが気になる。また、Amazonが即時配達サービスの『プライムナウ』のエリアを縮小させたばかり。ポケットマルシェなど、生産者と直接繋がるECも出てくる中、食料品の分野をどこが取るのかは気になっている。ファッションについては5Gになり、素材感が動画でもっと伝わりやすくなると変わるかもしれない。」とコメント。

 また、紗倉まなは「ECでは買えないものは何だろうかと考えると、洋服の場合はお店に行って世界観を買っているというような部分があると思う。その点、ECは商品が膨大なために、何が買いたかったのかを忘れてしまうことさえある」と指摘。

 田端氏も「やはりファッションは相対的に遅れている部分だが、逆に言えば伸び代があるも言える。"実際に触ってみないと…""返品するのは心苦しい"というのがハードルになっていると思うが、それも問題を解消できる余地はあると思う。実はZOZOTOWNも最初は3DCGでバーチャルな街を再現していた。結果的には不要な機能だったかもしれないが、それによってユナイテッドアローズさんを筆頭に、"単なるネット通販だったら出店しないよ"というブランドにも入っていただくことができた。最近ではVRやARなども出てきているし、ラグジュアリーブランドなど、"十把一絡げに並べられるのは嫌だが、世界観を感じて欲しいけど、店に来てもらう人だけに限るのも限界がある"というニーズとそれに対する解決策はあると思う」とした。

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 ECはさらに多様化を見せている。実店舗では無人コンビニ「Amazon Go」などの最新テクノロジー店舗や、自転車ショップとカフェのハイブリッド店舗「Rapha」を筆頭に体験型店舗と呼ばれるものも存在している。他にもプロが選ぶおもちゃのレンタル「トイサブ!」や家電・ガジェットのレンタル「Rentio」、洋服のレンタル「airCloset」なども人気だという。また、先日アリババのCEOを退いたジャック・マー氏は「10年、20年後の未来には"EC"がなくなり、代わりに"新しい小売"が出てくるだろう。これはオフライン、オンラインと物流の融合である」と予言している。

 元経産官僚の宇佐美典也氏は「僕も場合は都心に住んでいるので、コンビニで買えるものはECでは使わない。ただ、子育てに必要なものはECの方が品揃えもいいのでネットで買う。そこで思うのは、妊婦さんや子育て中の人にとっては近所のスーパーに行くのも大変。そこで知らないところからネットを経由して送られてくるよりは、信頼している近所のスーパーとECが繋がるのが良いとお思う。あるいは日本中の親が、アンパンマンのおもちゃで遊んでいるYouTuberに救われているはずだ(笑)。例えばそこからおもちゃをレンタルできるようになれば、ものすごく流行るのではないか。そのように、リアルに近いところから生活を良くする方向に進んでほしいと思っている」とコメント。

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 田端氏は「果たしてUber EatsはECなのだろうか、という問題だ。例えば蕎麦屋に電話で出前を頼むということは大昔からやられている。これとUber Eatsとの違いは、単に電話なのかスマホでピッと注文するかの違いしかない。あるいはビールが減ってくると、お気に入りの銘柄を自動で注文して補充してくれるIoT冷蔵庫などはECなのだろうか。また、LINEとスターバックスが手がけているサービスを使えば、地下鉄の中から注文して決済も済ませておき、駅の最寄りの店舗でゲットしてオフィスに行くということができる。これはECなのだろうか。つまり、"0か1か"ではなく、境目はなだらかに溶けていくと思う。そして、連絡手段、決済手段、受け取り・物流の手段の組み合わせは様々なパターンが考えられる。それぞれを独立で好きに選べる時代が来るのではないか」と予測。清水氏も「"EC化率"という話も、今はネットで注文・配送されるもので考えられていると思うが、今後はネットで注文して実店舗に取りに行く、あるいは実店舗で買った人がオンラインで配送してもらうといったものも含まれるので、さらに伸びるはずだ」とした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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