前原雄大(連盟)は所属団体の最高峰タイトルである「鳳凰位」を4度獲得する等、数々のタイトルを手中に収めてきたレジェンド雀士である。そんな百戦錬磨の男が「チーム戦は初めてだったんですが、本当に麻雀ってこんな辛いんだなって初めて思いました。長い麻雀人生の中で、あんなにうまくいかなかったのも初めて」と今だから言える心情を吐露した。
確かにKONAMI麻雀格闘倶楽部は出遅れた。開幕からチームのエース、佐々木寿人(連盟)が出場7試合トップ無し。チームは▲393.9と最下位に沈んでいた時期もあった。プレイングマネージャーとして、選手起用を決めていた前原は「最初はとにかく寿人に投げさせようと。ただまさか蹴躓くとは思わなくて。そこで逃げの手を打つことも出来たんですが、それだと寿人が伸びない。逃げ癖だけはつけることは出来ない」と佐々木を登板し続けた。
「苦しい時期が人を育てると思っていますし、チームも3人でひとつになっていった」という通り、佐々木が試合数を重ねるごとに本来の麻雀を取り戻していくとチームは一気に浮上。レギュラーシーズンを+39.2で3位通過し、ファイナルステージに進出した。
超攻撃型メンバーが顔を揃えるチームに、受けのスペシャリストである藤崎智(連盟)が新規加入した。「謙虚だし、相手が何を考えているのかすぐに察知する。自分が何をすべきかの判断も速い。人としての品格も品性もある」と同団体で藤崎がプロデビューした当時から知っているだけに信頼感は厚い。
10月1日に初戦を迎える今期から、前原はプレイングマネージャーとしてではなく、選手に専念することにした。「今回は采配はしません。残りそんなに長い麻雀人生ではないから、悔いのないように選手に徹したい」と監督も置かず、選手に専念する。
Mリーグオフシーズンの間、前原は体を絞り込んだ。「オフシーズンをどう過ごすかで、シーズンが決まるからです。寿人はRTDトーナメントで頑張っていましたけど、僕は僕でとにかく体を作っていかなきゃしょうがない。何時に寝ても目覚ましを5時過ぎにセットして、とにかく歩きました。Mリーグという舞台に出る以上、年齢がどうのこうのとは言ってられない」と毎日1万2000歩以上を自分に課した。さらにホットヨガで新陳代謝をアップさせ、日々の稽古に没頭した。
「麻雀人生を振り返った時にやりきったなって思えるよう、麻雀プロをまっとうする」。Mリーグの大ファンだという3人の孫たちの夢を叶えるためにも、グランパは真摯にまっすぐに戦う姿勢を、大きな背中で見せる。【福山純生(雀聖アワー)】
◆前原雄大(まえはら・ゆうだい)1956年12月19日、東京都生まれ。A型。日本プロ麻雀連盟所属。主な獲得タイトルは第12・25・33・34期鳳凰位、第14・15・24・25・26期 十段位。第3・8期麻雀グランプリMAX、第7・9回モンド名人戦、第8回モンド王座他。著書は「麻雀 何が何でもトップを取る技術」他。
◆Mリーグ 2018年に発足。同年10月から7チームによるリーグ戦を行い、初代王者の赤坂ドリブンズが優勝賞金5000万円を獲得した。2019シーズンから新たにKADOKAWAサクラナイツが加入し、全8チームによるリーグ戦に。各チーム3人ないし4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム90試合を行う。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各16試合)、さらに上位4位がファイナルシリーズ(12試合)に進出し、優勝を争う。





