誰もが一度は送られた経験のある"なりすまし"メール。近年これが形を変え、SNSの世界にも進出している。
AbemaTV『AbemaPrime』の出演者の中にも、例えば紗倉まなは本人の公式アカウントとは別に、Facebook・Twitter上に活動を宣伝するアカウントが存在し、本人が「これ私ではない、偽アカウント。フォローしてくださってる皆様お気をつけて」と警鐘を鳴らしている。また、気象予報士の穂川果音に至っては、マッチンアプリ上に本人を装い「そろそろ本気で結婚のことを考えておかないといけないかなと思い立って登録してみました」というアカウントが。
桜丘法律事務所の大窪和久弁護士氏は「インターネット上で他人の名前を名乗る行為自体は犯罪ではない。しかし、嘘をつくなど、外部的評価が低下するような言動をする場合、名誉棄損罪が成立する可能性はある」との見解を示している。
番組では、そんななりすましの最新事情を取材した。
■「嫌われてもOK。罵られたい」
「おはよう!今日は天気良くて清々しいね」「今週のラジオ聞いてくれた?」など、何気ない話題から仕事の話まで、本人になりすまして日々投稿、フォロワー1万8000人を抱える女性芸能人のなりすましアカウント。その運営者に取材班がコンタクトを取ってみると、「どうも(女性芸能人の名前絵)のなりすましです」との返事が送られてきた。インタビューを申し込むと「家だいぶ遠いですよ。四国ですが大丈夫ですか?」。
東京から7時間かけて指定の待ち合わせ場所に到着すると、現れたのは好青年風のサイトウさん(仮名)。嘘だとすぐにバレるのに、どうしてなりすますのか。サイトウさんは「本人にラジオとかでなりすましに触れてもらえたら、僕的には認知されたみたいな感覚になるので、興奮というか。好きなので本人の認知が欲しかった。いつかは本人と対面したい。嫌われてもOK。罵られたい」と動機を説明。「軽いノリで始めたら、フォロワーが一気に増えて。普通にTwitterをやっていても、こんなにリプをもらったりとか、反応とか多分なりきりじゃないと体験できないので、すごい楽しい」と答えた。
とはいえ、このようなアカウントの多くが本人でないことはバレていることも事実だ。そこで、なりすましであることを明言する"なりきり"というアカウントも数多く存在している。
あるアカウントの運用者は「"なりすまし"をするのは嫌だったので、姿をお借りする"なりきり"で本家様の良さを伝えていこうと思った。本家様のテレビや公式SNS等での話し方を意識している」という。なりきりだと気づいているのかいないのか、「頑張って!応援してる!」「可愛すぎます!」というコメントを付けるファンも。中には、なりきりとの会話を楽しんでいるという女子高校生もいた。
■被害に遭ったモデル「警察にも相談に行きづらい」
こうしたアカウントの被害にあったというモデルの古田ちさこさんは、「友人から、"私のSNSにLINEくれた?"と連絡をもらったことで、なりすましの存在に気づいた」と話す。なりすましのLINEがまだ生きている間に友達に招待してもらって、そのトークルームに入り、"おい、偽物!"と言った。すぐ既読になったがリアクションはなく、くまモンが激おこのスタンプを送ると、それも既読にはなったが、リアクションなくそのまま退会されてしまった」。
これまでLINEで2回、Instagramで2回、Twitterで2回、Facebookで3回、なりすましアカウントが登場した。「TwitterもInstagramも、最終的にはLINEに誘導していた。Instagramでは"知り合いだけの鍵アカウントだから、フォローしてね"と書いてフォローバックさせ、DMを送る。そして"LINEのIDも登録してね"といって誘導し、やりとりする。怖かったのは、私が連絡先を知らない小学校の同級生などとも繋がってしまっていたこと。有名な人だったら偽物だってバレやすいと思うが、私だと、いいレベルで使いやすいのかなと思う。ただ、カープ女子としてイベントに出たり、取材に行ったりすることもあるので、選手や球団関係者からの信頼を失いたくない。ただ、ストーカーなど直接的な被害がない分、警察にも相談に行きづらい」。
■学校ではいじめの道具に…
なりすましの被害に遭っているのは、何も有名人だけではない。
「なりすましされたことが何回かある」(16歳・男子高校生)。「友達がその友達を騙すときに女の子になりすましてDMを送って、みたいなのがあった」(17歳・女子高校生)と、若者たちの間では、なりすましたり、なりすまされたり、といったことが行われているようだ。
ある女子高校生は「中学校の時にTwitterのなりすましをされたことがある。友達に"Twitterはじめたの?"って言われて気付いた。転んで怪我したとか、教室で話していたことがそのまんま載っていて、監視されてんのかなって思った。絶対、同じ部活で同じクラスの人だろうと思って、1人ずつ違う情報を話していたら、その中のひとりがツイートしたので、"この子だ"って。すごく怖かった。震えて、ちょっと涙が出そうになった。"怖い怖い"っててみんなで言っている時に、その子も"怖い怖い"って言っていたから」と振り返った。
ITジャーナリストの高橋暁子氏は「いじめたい相手の画像をアイコンにしてなりすまし、飲酒や喫煙をほのめかす投稿をする。これは完全ないじめだ。あるいは嫌いな教師になりすまして、"うちの校長はクソ""女子高生たまらん"などと投稿し、風評被害をもたらしたケースもある。安全圏から簡単に相手に嫌がらせができてしまう。例えば"殺す"のようなひどいことを言われている場合は情報開示請求することもできるが、そうでない場合は難しい。ただ、ほとんどのサービスではなりすまし行為が禁じられているので、運営者に通報してアカウントを凍結してもらうのが早いのではないか」と話す。
慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「今までは準備も大変で時間もお金もかかったような行為がボタン一つでできるようになってしまった。いわば簡単さとそれによって起きる問題の大変さが不釣り合いの問題がある。皆のモラルが高まるのが理想だろうが、悠長なこと言っていると、誰かの人生を無茶苦茶にしてしまう可能性をはらんでいる。警察もちょっと甘い気がするし、厳罰化する必要がある」との見方を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶動画:なりすましについての議論の模様(期間限定)
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