ワールドカップは、華やかだ。アイルランド代表を撃破したラグビー日本代表は、世界中から喝采を浴びた。多くの人に勇気と感動を与えられる、アスリートが目指す最高の舞台――。
しかし、ピッチに立てる可能性があるのはラグビーであれば31人、サッカーであれば23人。日の目を見る選手がいる一方で、必ず“落選者”がいる。1998年のフランスW杯のピッチに立てなかった三浦知良のように。
逆にいえば、当落線上の選手がいるからこそ、選ばれた選手はより一層、奮い立つ。最後の最後までしのぎを削れる仲間の存在があって初めて、「日本代表」が戦える集団になっていくのだ。
2020年のW杯を控えるフットサルにも、当落線上の選手がいる。バサジィ大分の芝野創太だ。
がけっぷちの男の決意と覚悟
フットサル日本代表は、10月のAFCフットサル選手権2020予選を突破して2020年2月(予定)の本大会進出を狙う。その大会の上位5チームに入れば、同年秋のW杯に、2大会ぶり4回目の出場を果たすことになる。2016年にW杯出場を逃した日本代表は今まさに、W杯に向けた最終ステージに突入するところだ。
フットサルの国際大会の登録メンバーは14人。これは想像以上に狭き門となる。
「このままでは、厳しいと思う」
素直にそう明かしたのは9月25日、タイ代表に勝利した、国際親善試合第2戦の直後だった。2016年から指揮を執るブルーノ・ガルシア監督の下では、初めての代表キャップ。しかし、中核メンバーに多くの出場時間が与えられた一方で、芝野の出番は決して多くはなかった。ピヴォという前線のポジションで存在感を放つシーンがあったものの、何よりも期待されるゴールという結果を出せなかった。「結果を残さなければいけなかった」。勝利した試合後でも、チームに貢献したという手応えはなかった。
14人に選ばれる可能性が高くないことは、自分自身が痛感している。この試合は海外組の3人が不在であり、故障中、もしくはケガ明けで招集されなかった選手もいた。同じポジションで蹴落とさなければならないのは、星翔太や森岡薫という、日本代表をけん引するリーダーだ。それでも、諦めるわけにはいかない。
「森岡選手や星選手のように体が強いわけではないし、彼らのようなプレーが得意ではない。その分、自ら動いてスペースでもらうことが武器。そういうところでアピールする必要がある」
現在、好調を維持する大分で11得点をマーク。その数字は、星や森岡を上回っている。左右両方の足を自在に扱い、前線だけではなく、サイドやピッチ中央で味方を助けられる「ピヴォ・アラ」というポジションの適性も高い。芝野には十分に、代表の資質がある。ただしもう、残された時間がわずかしかない。
「終わったことは変えられない。だからリーグ戦で結果を出すだけ。メンバーが固まりつつあるなかでまた呼んでもらえるように。自分が起爆剤になる。そうなれるように準備して、あとはやるだけ」
東アジア予選の初戦まであと20日。そこまでに行われるFリーグは3試合。「起爆剤になる」。決意と覚悟を持ってピッチに立つ芝野は、いったいどんなプレーを見せるのか。そして、どんな結果を示すのか。がけっぷちの男が、フットサルファンの、そしてブルーノ監督の心を動かせるか――。
文・本田好伸(SAL編集部)