視聴者からの意見やSNS投稿、テレビ局はどんな姿勢で臨むべき?ふかわりょう「感謝を忘れるな」
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 テレビ番組に対し視聴者から寄せられる様々な意見や、ネット上の書き込み。改善すべき問題には真摯に向き合って番組に反映させなければならない一方、どこまで対応していくべきなのだろうか。

 例えば先週土曜日に放送されたフジテレビ『週刊フジテレビ批評』でアニメ『ちびまる子ちゃん』で、60代の視聴者から寄せられたという「まる子がねだる話があるが、少ない年金の小遣いに友蔵が悩んでいるのを見ていてつらい。まるちゃんはおじいちゃん思いの可愛い子だから、そんなシーンは悲しくなる。できるだけ配慮してくれたら嬉しい」という声が紹介されるや、ネット上では論争が勃発。「なるほど。こういう意見がくるのか」「よくある孫とおじいちゃんのやりとりでは…?」「配慮ってなによ」など、様々が飛び交うこととなった。

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 テレビ解説者の木村隆志氏によると、テレビ局への問い合わせ件数は増加傾向にあり、毎月3~5万件ほどに達するといい、とりわけ「BPO(放送倫理・番組向上機構)」についての言及や番組スポンサー企業へのクレームの示唆が現場にもたらす萎縮効果は大きいという。

 実際、バラエティ番組では"食べ物を無駄にした"と言われないために「この後おいしく頂きました」といったテロップを挿入、ドラマでも未成年に配慮し喫煙シーンが少なくなっている。また、ISによる日本人人質事件の際には歌番組で曲目や歌詞を変更した例や、最近では京都アニメーション放火事件を受けて放火事件を扱ったドラマを放送延期するなど、社会情勢に鑑みた対応がなされる場合も少なくない。

 AbemaTV『AbemaPrime』にも、「嫌なら見なくて良し」「重要なのは、ごく少数や1人の意見で放送内容を変更したり、やめたり、過剰反応しないこと」「文句が実際に制作者に届くようになった。届けるインフラが整ってしまったというだけのことではないか」などのコメントや、「視聴者の声は市民の声だという謙虚さは大事」「安楽死の話や批判はOK。今回についても、批判に対してテレビが過剰反応し過ぎではないか」などの意見が寄せられた。

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 こうした現状について、ふかわりょうは「テレビに対して目くじらを立てる人が増えたと思うし、昔はそんなに熱くなかったと思う」との見方を示す。

 「昭和の時代は番組に対して違和感を覚えたとしても、不満や憤りに繋がらなかったと思う。しかし時代が変わり映像コンテンツが多様化、情報量が増えたおかげで、"つまらない"という感情や違和感、不満が増幅するようになってしまった。しかし、テレビ局やBPOにクレームを入れるというのは、また次の段階だと思う。また、クレームだと一括りにできてしまうが、それはもしかしたら番組愛による、貴重な声になり得るものも含まれていると思う。例えば昔『東京ラブストーリー』が流行った時に、二人の結末をどうか変えて欲しいという声もあった。でもこれは大ファンの声であって、向き合う必要のないただのクレームとは質が違う。だから局への問い合わせ自体がいけないものだとは思わない。そこがややこしいところだ」。

 さらにふかわは「この番組(AbemaPrime)の場合、視聴者がコメントを書き込むことができるが、ちらっと見ると"ふかわがまたバカなこと言ってる"といったコメントが目に入る。いちいち心を乱されていたら何も話せなくなってしまうが、だからといって無視することもできない。今の社会では、そういうクレームをストレスの捌け口にしている人もいるだろうし、それらに対して反応することが欲求を満たすけっかになってしまっている」と話した。

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 一方、古坂大魔王は「テレビもタレントも偉くなったし、それが右肩下がりになってきたからつつかれているのかもしれない。それでも、クレームを言える手段が増えてハードルが下がっただけだと思う。昔はテレビ局に文句を直接言うためには電話帳で電話番号を調べて電話をかける必要があったが、今はテレビの前で言う軽口のようなものでも名前も出さずSNSで"ポン"だ。Twitterでもそうだが、誰が、いつ、どんなふうに言っているかということも大事だ」と指摘する。

 「僕はテレビに出ていない期間が長かったので、しばらくニコニコ動画を月~金でやっていた。最初は"死ね""クズ"というコメントにいちいち腹が立っていたが、毎日見ていると、それが"色"に見えてきた。"つまんない。クソが"というのは赤っぽく、"おもしろかったよ"というのは青や黄色っぽく。そうやってネット耐性が付いていった」。

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 テレビ朝日平石直之アナウンサーは「"嫌なら見なくても良い"という意見もあるが、実際には見ていない人たちがネット上で知って、放送から数日後にSNSなどで討論になることもある。シンプルに言えば、やはりスポンサーに電凸されるかもしれないと思えば萎縮してしまうだろうし、次の放送回はディフェンシブに、となってしまうと思う」と話す。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「80年代の視聴者が良くて、今の視聴者が悪いということではないと思う。"4マス"と言われた時代は視聴者も関係者その空間の中で生きていたし、そこに対して議論する外側の空間は作られにくかった。しかしそこにインターネットというメタ的な空間ができたことにより意見が共有され、その熱量も高まるようになった。にもかかわらず、テレビ業界の人はあまりにもネットの中の空気や」議論を知らなさすぎる。例えば、とんねるずが"保毛尾田保毛男"というキャラクターを久々に出したことで批判を受けた。これも、すでにネット空間を中心にした世論がLGBTを笑いものにするのはおかしいという流れになっていたことを把握していなかったことによるものだと思う。だから直接クレームを入れてくる少数の意見には答える反面、社会やネットの空気を読んでいない、ということが起きる」と話す。

 「調査の結果、実際に炎上に加担しているのはネットユーザーのうち、わずか0.5%という数字も出ている。その程度の人がワーっと騒ぐことで、まるで世の中の人全員が批判しているように見えてしまうという問題もある。それを朝のワイドショーなどが"こんなふうにネットで批判されている"と報道するから、ますますクレーマーが炎上を成功体験にしてしまう。ただ、そもそも社会が今どういう状況なのかということを直感できるのがメディアの良いところ。ネットで誰でも発信できるようになった結果、今までクレームを言えなかった人が言えるようになる、ひどい番組に対して抗議できるようになるということはすばらしいことで、決してマイナスだけではない。問題はネットに振り回されたり、苦情をすべて引き受けたりしてしまう点にもある。その点、テレビ局も広告主まだリテラシーが低い」。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「100を0にするのが配慮ではなく、色んな意見を取り入れて塩梅を良くするのが配慮だと思う。その点、今までメディアがやってきた対応というのは、意見が出た瞬間、100を0にしてしまう"遠慮"だ。それによって、"自分たちの力によって0にしてやったぜ"というような、やってやった感がクレームを言う側に生まれてしまう」とした。

 最後にふかわは番組視聴者に向け、「どんなクレームだろうが、見てくれた上でのクレームだったら"見てくれてありがとうございます"ということは心から言うべきだ。今、この時間に見ていてくれていることは奇跡だ、心からそう思わないといけない。みなさん、見てくれてありがとうございます」と感謝。古坂も「無視が一番怖い。アンチはファンの手前だ」と賛同していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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