(逆転一本勝ちを収め夫・鈴木隼人の下に駆け寄る鈴木祐子©MMAPLNAET)
10月5日、ベルサール渋谷ガーデンで開催されたONEウォリアーシリーズで、鈴木祐子は負けられない理由、勝って実現させたい夢と共にリングに上がりエディラー・ヨハニーと対戦した。
昨年7月に彼女の生涯の伴侶となった鈴木隼人もMMAファイターで、既にONE本戦で契約しているストロー級トップコンテンダーだ。その隼人は今年の1月にONE世界ストロー級王者ジョシュア・パシオに挑戦することが決まっていたが、世界戦へ向けてのドクターの診断で小脳嚢胞が見つかりONEのレギュレーションに抵触、王座挑戦が幻に終わった。ラグビーやボクシングではストップがかかるケースがあっても、多くのケースにおいて治療の必要がなく、国内のMMAは出場可能という症状だ。ONEもある程度の大きさまで、小脳嚢胞が確認されても試合に出ることは許されている。その大きさの上限が、他より厳しいことで隼人は今もONEで試合ができていない。
ようやく掴んだチャンスを棒に振ることとなった隼人の無念さを、二人三脚でキャリアップに努めてきた鈴木は発奮材料に変えた。まだまだ実績の足らない彼女にとって、ONEウォリアーという場をステップとし、ONE本戦と契約を勝ち取り、隼人と一緒にONE本戦で戦うことが夢となった。2月の初戦で判定負けを喫した彼女は、人材育成大会で黒星を重ねることは、夢を諦めなければならない状況に陥ることを十分に理解していた。4月に初勝利を挙げ、日本での試合が決まった。MMAにおいて夢を持つから勝てたり、負けられない理由があるから負けないのであれば楽なものだ。全員が勝者になれる。
鈴木は試合開始早々、ヨハニーの右ストレートを浴びてダウン、思い切りパウンドの連打を被弾した。本人が映像を見返し「よく止められなかった」という状況で殴られながらもヨハニーの足にしがみついて倒し、上を取ることに成功する。ここからはマウントを奪い、腕十字で逆転タップアウト勝ちを収めた鈴木は、すぐにセコンドを務めた隼人の下へ駆け寄った。夢の実現へ、一歩前進することができた。
夢があっても勝てない。負けられない理由があっても、負けないわけではない。ただし、夢と負けられない理由があることで、より厳しい練習に臨むことが彼女はできるようになった。と同時に、「バックボーンのない選手でも、コツコツと頑張れば強くなれる」ことを言い伝えたい想いが、鈴木を大逆転勝利に導いた。
「次は12月大会に出場し、ONE本戦との契約を勝ち取ります」という彼女の声からは、揺るぎない覚悟が伝わってきた。
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