10月13日東京・両国国技館で開催されたONE Championship「ONE：CENTURY 世紀」。そのパート１でメインイベントを務めた女子アトム級王者・アンジェラ・リー（シンガポール）が、ション・ジンナン（中国）を最終5ラウンドの末にリアネイキドチョークで「チョーク葬」で一本勝ち。3月の日本大会のリベンジを果たした。
3月31日、同じ両国国技館のケージには全く逆の光景が広がっていた。これまで絶対王者、「ONE女子の象徴」ともいえる存在だったアンジェラは、ションのどこまでも折れない気迫と、無尽蔵のスタミナから繰り出される打撃に顔を歪め人生初のTKO負け。アトム級に続き、ストロー級の2階級制覇の夢が打ち砕かれた瞬間だった。
ONEの絶対女王の前に立ちはだかったのは“ザ・パンダ”ことストロー級王者のション。彼女はKO率70％という生粋のストライカーだ。両者引かない打撃戦のなか5ラウンド。ションの右ストレートがアンジェラのボディに突き刺さり顔を歪める姿は、多くの観客にとっても想定外のものだっただろう。ボディやミドルを浴びる一方的な展開にレフェリーが試合を止めた。
この敗戦のダメージは思った以上に大きかった。敗戦から3カ月後にストロー級で挑んだミッシェル・ニコリニ（ブラジル）戦にも3-0の判定負けを喫して連敗。そこでアンジェラは、自身の階級で、ションとのリマッチに打って出た。同じ相手に2階級で負けるといよいよ後が無くなる「背水の陣」で臨んだ試合だ。
1ラウンド序盤、やはりションの打撃がアンジェラを上回る。悪夢の再演、ボディから左フックに早くもぐらつくアンジェラ。その後も振り回すようなションのフックがアンジェラを追い込んでいく。
2ラウンド、ここでもションが打撃で優勢だが、ラウンド後半になると攻め続けたションから勢いが失われていく。ラウンド終了間際には、低いシングルレッグ・テイクダウンでションをケージ際からひねるように倒すと、アンジェラが力で押さえ込み、ヒザを打ち込むなど形勢逆転となった。
3ラウンドに入るとアンジェラの打撃やステップにもリズムが生まれ始める。首相撲や寝技に自信のあるアンジェラと、打撃で勝負したいション。両雄の戦術の違いも明確だ。組合いの攻防、首投げでケージを背に押さえ込んだアンジェラがションにパンチを打ち込む。バックを取りチョークを狙いながらパウンド、防戦一方のション。3ラウンド終了明らかに潮目が変わった。
五分五分で臨む、最終5ラウンド。両選手ともスタミナ切れで足元が頼りないが戦う気持ちは折れていない。ションの打撃でフラつきながらも、組み合うとアンジェラがガッチリと相手を掴みヒザを落とす。スタンドではションが力を振り絞り鋭いパンチ、2発3発と顔面に貰いながらもアンジェラは後退しない、明らかに3月の両国とは違う。
そしてアンジェラ・リー魂の大逆転劇が始まる。バックを取り後ろに投げると、亀になったションに後ろからリアネイキドチョークを伺い徐々にガードを解いていく。粘り強い執念のグラップリングに抵抗するションだが、パウンドでしつこく攻めるアンジェラの意地が上回り残り20秒で遂に陥落。試合終了12秒前、ザ・パンダがタップした。
女子アトム級王座を防衛したことで連敗を脱出したアンジェラには新たなチャンピオンとしての道が開かれる。両国大会では日本のVV Mei 、山口芽生がアンジェラ・リーとの再戦を直訴した。日本の新たな才能、平田樹も急激な成長を遂げながら最終的には「打倒アンジェラ・リー」を目標に掲げている。
一方敗れたションもストロー級王者の名に恥じない戦いぶりをみせた。2人の偉大な女子王者がONEの女子を牽引することでこのリーグはさらに活性化されていくことだろう。しばし休戦となるが、決着戦となる「アンジェラ・リーとション・ジンナン第三章」への期待も高まる。
(C)AbemaTV
▶映像：アンジェラ、終了間際の「チョーク葬」
▶映像：青木真也、54秒殺KOで圧倒的存在感
