災害時の救護などをはじめとする医療活動を行う認可法人「日本赤十字社」。同法人による献血のPRポスターに対して、アメリカ人男性が「日本では過度に性的な宇崎ちゃんを使ってキャンペーンを実施している」と指摘したことで、ネット上で議論が巻き起こっている。
男性ががっかりしたというのが、漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』とコラボした献血PRのポスター。献血をしてキャンペーンに参加すると、このイラストのクリアファイルが記念品としてもらえるというものだ。
確かに大きな胸が目立つイラストだが、このポスターを巡りネット上では「環境型セクハラをしているようだ」「日赤が広報に使う必要はない」「“表現の自由”と“公共の場”のバランスは必要」「露出もなくイヤラシさは感じない」「若者の献血が増えるなら有効」「巨乳がだめなのか?」と賛否両論を呼んでいる。
日本赤十字社はこれまでも人気アニメなどとのコラボレーションを行ってきたが、“萌え”で献血PRはタブーになってしまうのか。臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は「賛成でも反対でもない」とした上で、「こういう風に反対の声があがると、結局は多数決のような形で『ダメだ』となりそうな気がする。反対の声がそれなりに多くあり、議論が盛り上がると、反対の意向が通る結果になりがちだ。例えばほとんどの人にとって何の問題もないアニメキャラがいたとして、ある1人が何らかのトラウマを抱えていて『吐き気がする』と言ったとしても、その意見はあまり採用されない。しかし一方で相当数の反対票が揃えば止めざるを得ないというのは、多様な価値観に配慮しているように見えて、多数決で“潰される”ことと同じになってしまうのでは」と懸念を示す。
また、今回の議論はイソップ寓話『ロバを売りに行く親子』(道中でのロバの扱いについて様々な人が意見を言い親子はそれに従うが、市場に着く前にロバを死なせてしまう話)に似ているとし、「そもそもすべての人が納得するような結論はないということ。“環境型セクハラ”と言っている人もいるが、これは職場で仕事がしにくくなる、生産性が落ちるなどといった心理・行動的な実害があることが要件になっている。『ただ嫌だ』という感情を否定するつもりは全くないが、それで事が動くなら何でもかんでも『嫌だ』と言ってしまえばいいということになってしまう」と指摘した。
一方、嫌悪感に関してフリーアナウンサーの柴田阿弥は「なんか嫌だなという気持ちをこれまで無視してきて、本当に嫌なセクハラ問題が埋もれていたというのはあると思う。今回、男性・女性ともに何も思わない人もいるかもしれないが、多数決で決めるべきものでもないし、『またフェミニストが~』で片付けるのも嫌だなと思う」と率直な意見を述べる。
これを踏まえ藤井氏は、「この問題は『議論していくことが大事』『一人ひとりが考えるべき』などということで終わらず、ソリューション(課題解決)を考えていかなければならない。背景にあるのは『不足している血液型があったり、輸血用血液には有効期限があり、継続的に献血の協力者が必要』ということ。どうすれば献血する人が増えるか、絶えないかを考えたら協力者に対して効果的にアクセスできるチャンネルを増やすしかないし、これもその一環と考えたら、否定するだけではなく別の方法を提案しなければならない」と訴えた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶映像:「過度に性的」の指摘に秋葉原の人は
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