菅原経済産業大臣の秘書が地元の有権者に香典などを配った疑いが浮上し、菅官房長官は「菅原氏自身が必要な説明を」と求めた。
「菅原氏の指示を受けて、贈答品と送り先のリストを作成した」と証言したのは、菅原大臣の元秘書とされる人物。立憲民主党の杉尾秀哉参院議員が音声を公開した。立憲民主党は、今月11日には元秘書から入手したという「メロン」や「カニ」などの品名と名前・住所などが載ったリストを示し、事実関係を問いただしていた。
これに対し菅原大臣は、リストに載っている有権者からは「もらっていない」「十数年前のことで覚えていない」などの回答を得ていると説明。また、「リストの作成を命じたことがあるか」と問われると、「私の認識にはない」と答えた。
一方、公開された元秘書のものとされる音声については18日、「その元秘書の方がどなたかわからない。証言となるもの等々を見ていないので、今はコメントができない状況にある」とコメント。『週刊文春』によると、菅原大臣の公設秘書が先週、自身の選挙区である東京・練馬区内で行われた支援者の通夜で、2万円が入った香典を手渡した疑いが浮上している。
24日朝、石油連盟の会合を終えた菅原大臣は、記者団からの「香典を配っていたとの報道があるが事実か?」との質問に、無言でその場を後にした。政府高官は大臣自身の進退に影響しかねないという認識を示し、菅官房長官は「政治家としてご自身、必要な説明をされるべきだと思う」と述べた。
選挙の有無に関わらず、政治家が選挙区内の人に寄付を行うことは、名義の如何を問わず特定の場合を除いて一切禁止されている。総務省HPでは「贈らない」「求めない」「受け取らない」の“三ない運動”として禁止行為を示しているが、香典については「政治家本人が結婚披露宴、葬式党に自ら出席してその場で行う場合は罰則が適用されない場合がある」としている。
この「自ら出席してその場で行う」という行為について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「社交や社会通念と買収のおそれとのせめぎ合い」だと指摘する。
「日本社会では社交や社会通念上、香典が必要になる場合がある。その時、政治家本人が直接足を運ぶことができる数は限られることもあり、その分に関しては限定的に認められる。しかし、家族や秘書、代理人等が代わりに香典を渡し出すと際限がなくなるおそれがあり、票をカネで買う行為に近づいていく懸念があるので禁止されている。今回、総じて秘書が行ってると報じられていて、まさに“政治家本人には限らないのではないか”というところでも懸念が生じている」
一方、テレビ朝日の大木優紀アナウンサーが「大きな結婚式だと地元の政治家が出席したりするが、挨拶だけ済ませて10~15分で会場からいなくなってしまうケースが結構な確率である」と疑問をぶつける。これに西田氏は「重要な指摘で、政治家が制度の隙間を突く形で、頻繁に行っている方法。寄付の制限に『会費』が含まれていないところがポイントで、会費を払って会費制の会合に参加することは認められている。結婚式や季節の会合の場は会費制になっていることが多いが、そこで一瞬だけ顔を出して乾杯だけして『会費』を置いて次の会合に行く。一回で多くの人に顔を見せられる会合は政治家にとって効率がよい機会。もちろん盆暮れ正月にはそうした行事が重なるからでもあるが、結婚式だけでなく、忘年会や新年会でも同様に二軒三軒と乾杯だけして会費を置いていくケースは多々見られる」だと説明。
では、菅原大臣の活動が禁止行為に当たる場合、どのような処分が考えられるのか。西田氏は「公選法上の罰則は軽微な禁固刑や罰金刑が用意されている。しかしさらに具体的な事例が出てくると大臣の立場は相当厳しいのでは」とし、「秘書は政治家と一心同体で、何をやっているか隅々まで見ている。秘書が『違法行為ではないか』と注意喚起を進言した時に聞き入れられなかったり、逆にハラスメント的な対応をされて両者の利害関係が離れていくと、そこから情報がメディアに出てくることは少なくない。政治家は一国一城の主でもあって、期を重ねている人などには古い感覚が残っており、周囲や他人が口出ししにくい雰囲気もある」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶動画:元秘書の証言とされる音声
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