「問題が生じれば責任を取る」。23日の衆議院内閣委員会でこう述べた、北村内閣府特命担当大臣。事の発端は15日の参議院予算委員会で、国民民主党の森ゆうこ議員が台風19号や国家戦略特区などについてした質問に関して、事前通告が第三者に漏れていたという。
「事前通告」とは、衆参両院の委員会審議などの前に、総理など政府側に対して質問する議員が主旨を予め伝えるという慣習。正確な答弁ができるよう、各省庁の担当官僚が事前通告の内容を基に準備を行う。
15日の予算委員会の前日、ある大学教授がインターネット番組『虎ノ門ニュース』で「事前通告を見た」と発言したことで、内容が漏えいしているのではないかと問題になった。他にも、省庁内部の資料とみられる画像も拡散されたとして、野党の調査チームは関係するTwitterの匿名アカウントの特定を求めている。野党統一会派は公務員の守秘義務違反に当たる可能性があるとして、今後は詳細な質問内容を通告しないとしている。
一方で、この事前通告をめぐっては別の問題も浮上している。森議員が事前通告したのは11日で、翌日の台風19号が迫る中でのことだった。すると11日夜、Twitterに「森議員の事前通告が遅く、役人は徹夜作業になる」といった主旨の情報が書き込まれる。他にも、「夜8時半に『質問要旨暫定版』を受け取った」など内部の人物しか知り得ない内容のものもあり、官僚によるリークのような書き込みだった。このツイートが拡散されると、「官僚へのブラック残業ですか…」「官僚は奴隷じゃないぞ?」「ルール通りに質問通告しなさい」と森議員への批判が殺到した。
これに対し森議員は16日、「次々と実在の人物なのかわからないような方たちからのツイート。私もそれを見てどういうことなのかと思っていた。質問の通告は申し合わせの時間通り11日金曜日の17時より前に提出されたということが、15日の予算委員会の理事会で正式に確認された」と真っ向から反論している。しかし、期限内に精査した内容のものが全て送られたどうかは議論が分かれている。
事前通告の期限と漏えいの疑惑。東京工業大学准教授の西田亮介氏は「ふたつは別の問題で、無理にまとめて語ろうとして論点が錯綜している印象だ」と指摘し、次のように述べる。
「いろいろな習慣や権利がせめぎ合っている。1つ目は野党が政府や与党に対して権力をしっかり監視し、政府もしっかり答えるために練りに練った質問を事前に政府に送り、政府、各省庁が回答を準備する習慣。その善し悪し。2つ目は、この質問通告が期限ギリギリになりがちで、官僚の働く環境がブラックになっているという指摘がかねてからあったこと。さらに台風が迫るなか前倒しで質問通告したかどうかという道義的問題もある。3つ目は、国家公務員が第三者に内容を知らせたとすると国家公務員法等の法令違反となる可能性が高いが、民間から民間の場合はそうともいえない。したがって、“誰が知らせたのか”が重要な問題になってくる。今回の件はこのように少なくとも3つの異なる問題に切り分けてそれぞれ解決策や責任の所在が問われるべきだが、どうもネットではあえて一緒くたに論じられ、議論が錯綜している印象だ」
国民民主党らの調査チームは、国家戦略特区ワーキンググループのメンバーによって質問が漏えいした経緯について調査するとしている。同グループは民間の有識者らで構成されているが、西田氏は「誰が情報を提供したかによって問題か、問題でないかということが分かれてくるので、情報漏えいの経緯について精査することは妥当」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶映像:森ゆうこ議員、官僚への“ブラック残業疑惑”を否定
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