終局の瞬間、思わずこみ上げるものを抑えきれず、ぐっと唇に力を入れた。大和証券Mリーグ2019、11月1日1回戦で、渋谷ABEMAS・松本吉弘(協会)が今期6戦目にして初トップを獲得。インタビューでは開口一番に「お待たせしました!」と語り、「少し重圧から解放されました」と素直に喜びを口にした。
この試合の対局者は起家からKONAMI麻雀格闘倶楽部・高宮まり(連盟)、赤坂ドリブンズ・鈴木たろう(協会)、U-NEXT Pirates・朝倉康心(最高位戦)、松本の並びでスタート。松本は序盤からスコアを伸ばし、東4局に迎えた親番ではツモ・平和・赤2・ドラの1万2000点(供託1000点)をアガってダントツに。オーラスは2着目朝倉にハネ満をツモられなければトップ終了となるため、配牌から安全牌を抱え込む進行。高宮が3着から2着に上がる満貫をツモると、松本の今期初勝利が確定した。
5戦して4着を引かされること実に4回と、ここまで苦戦を強いられてきた松本だったが、この日は「チームのプラス20ポイントが自分のプラスと思って、無理にトップを狙ったわけではなかったです」と語るようにあくまでチーム戦であることを意識、不調の中にあっても焦らず試合へ挑んだ心境を語った。とはいえ「(倍満ツモでマクられる点差の)高宮さんに2000・4000と言われるまで安心できなかったです」と、最後まで逆転されてしまうのではないかと不安だった思いも明かした。
ここまでチームメイトはそれぞれトップを獲得、今期からリーグ参加となる日向藍子(最高位戦)も1勝を挙げている。「チームメイトが勝っていて、自分が不甲斐なかった」と責任感の強さも見せた松本。渋谷ABEMASはチームの仲の良さがこれまで何度もクローズアップされているが、白鳥翔(連盟)は松本との関係について「朝からずっと一緒にいたのに、そのあと1時間電話することもある。こんな話しても足りないかというくらい、いろんなことを話している。意外と松本も精神的にぐらつくこともあって、ということを最近気づいた」とまるで家族のような結びつきを隠さず、お互いが心の支えになっている。
Mリーグ29選手の中でも数少ない20代ながら、常に誠実なコメントを繰り返し、熱いハートを持つ松本。トップ目前で痛恨の逆転負けを喫することもあり、悔しさに歪んだ顔を何度も見せてきた。この日は先制・中押し・逃げ切りと理想的な展開の中で、随所に座右の銘である“ベストバランス麻雀”を体現、最後にはファンに笑顔を見せた。
今期の目標を聞かれると、「僕のマイナスがプラマイゼロになったらチームが凄いことになると思うので、まずはそこが目標」として、「負けたからわかることがあると思います。また一つ強くなれた」とこの経験が自分の麻雀の糧になっていることを口にした。最後は「絶対にファイナルに行って、優勝します」と力強く宣言。この日の試合を解説していたEX風林火山・勝又健志(連盟)は「また強敵が復活してしまったな、という感じです」と、成長著しい若武者を認めた。
このインタビューにおいて松本は「これまで試合が終わって、控室に戻りにくいことばっかりだったので、今日くらいは褒めてもらいたいなと思います」と何度もチームメイトへの思いを語った。チーム後輩の日向も初勝利の際には「早く控室に帰りたい、褒めてもらいたい」と語ったが、松本の同じコメントからも、苦境を支え合うチームワークの良さが伝わった。これでチームは全員がトップを獲得。2年連続のファイナル進出、そして悲願の初優勝まで、“卓上のヒットマン”の躍進が欠かせない。
【1回戦結果】
1着 渋谷ABEMAS・松本吉弘(協会)3万6000点/+56.0
2着 KONAMI麻雀格闘倶楽部・高宮まり(連盟)2万7300点/+7.3
3着 U-NEXT Pirates・朝倉康心(最高位戦)2万3900点/▲16.1
4着 赤坂ドリブンズ・鈴木たろう(協会)1万2800点/▲47.2
※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会
◆Mリーグ 2018年に発足。2019シーズンから全8チームに。各チーム3人ないし4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム90試合。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各16試合)、さらに上位4位がファイナルシリーズ(12試合)に進出し、優勝を争う。
(AbemaTV/麻雀チャンネルより)






