“国費27億円”に批判も…皇位継承の重要祭祀「大嘗祭」の課題は
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 皇居・東御苑に建設された大嘗宮で行われていた、皇位継承に伴う一代に一度の重要祭祀「大嘗祭」は今朝3時過ぎに終了した。

 大嘗祭は奈良時代の天武天皇の頃から行われてきた即位儀礼で、天皇陛下は悠紀殿で「悠紀殿供饌(ゆきでんきょうせん)の儀」、次いで主基殿(すきでん)で「主基殿供饌の儀」を行われ、国や国民の安寧や五穀豊穣を神々に感謝し、自然災害が起きないように祈られた。悠紀殿の中で何が行われるかは「采女(うねめ)」と呼ばれる女官以外は誰も知ることはできないなど、「秘儀」という側面もある。

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 この点に対し、ネット上には「税金を使う以上、公開が原則であるべき。公開できない天皇家の私的祭事なら、天皇家の私財を使うべき」「秘儀の中の天皇が国民の象徴?おかしな話だ」「宗教行事で非公開なのに、税金が使われる不思議」といった批判の声も投稿されている。

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 元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司氏は「天照大神をお招きし、これからも国の発展や五穀豊穣や安寧というものをお願いする。この大嘗祭をやってこそ初めて天皇になるという考え方だ。今でも田植え祭りなどがあるように、大嘗祭や新嘗祭(にいなめさい)といったものも仏教伝来の前からあった土着的な収穫の儀礼だ。ただ、今は神道も宗教の扱いになっているし、こうした宮中祭祀も宗教という位置づけになっている。私は平成2年の大嘗祭の時には総理よりも前で拝見したが、暗くてほとんど何も見えない中、篝火の“パチパチ”という音が聞こえ、非常に厳粛な雰囲気だったことを覚えている。今回、映像があまりにもシャープで驚いたが、これで大嘗祭の雰囲気というものが一般の方にも伝わるのではないかと思う」と話す。

 また、政教分離の観点から、大嘗祭の費用を国費で賄うことの妥当性についても議論が続いており、昨年11月には秋篠宮さまが「宗教色が強く、皇室の行事として行われる以上、天皇家の私的財産である内廷会計を使うべき」「身の丈に合った儀式にすることが本来の姿ではないか」との考えを示されたこともあった。さらに秋篠宮さまは「(この考えを)宮内庁長官に伝えたものの、話を聞く耳を持たなかった。非常に残念なことだ」とのお気持ちも明かされている。

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 今回の大嘗祭では、約22億円が計上された平成の時よりも招待者を約200人減らし、施設も約8500平方メートルの敷地と約40棟の建物から、約6500平方メートル・30棟の建物としたほか、主要な建物の屋根を萱葺きから板葺きへと変更、一部の建物はプレハブ化されるなどの簡素化も試みられたが、それでも予算は前回を超える約27億円に達している。

 「全体的にコンパクトにするといった経費削減はやっているが、基本的には前例を踏襲するという方針を政府は早々に打ち出していた。最も大きいのは人件費の高騰だろうし、消費税もある。結果的には前回よりはおそらく下回るのではないか。そもそも皇室は質素倹約を旨とし、あまり華美にならないようにというのが基本姿勢だ。7回の儀礼を4回、3回にするなど、削減できるものは削減するということで今回も実施されている」(山下氏)。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「江戸時代、民衆の中で天皇家はあまり認識されておらず、“京都の奥の方にいる神主さんの親玉”くらいの位置づけだった、というような話もある。それが明治維新後、藩ごとにバラバラになっていた国民を“日本人”として統合するための象徴、帝国主義の時代に欧米列強と対抗していくための権威の象徴になった。そして国家神道と結びつき、儀式も非常に派手になった。太平洋戦争のこともあって悪いイメージがついている面もあるが、本来、日本の神道というものは地味なもの。松明の中で静々と歩かれる厳かな雰囲気を残し、太古の昔のように簡素なものにした方が今の日本人には受け入れられやすいのではないか。また、上皇さまのイメージでもあるが、この何十年かで、もはや天皇は“偉い人”ではなく、“我々の日常を見守ってくれている人”というイメージに変わっていると思うし、それに沿うような新しい儀式があってもいいのではないか」と問題提起。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「これによって国民に神道を強いるといったメッセージもないと思うので、僕は全く気にならなかった。そして、本来の目的が達成されていれば、安いコストでできていてもいいが、この“目的”というのがとても難しい。世の中の色々なものがオープンに向かっているし、プロセスを開示して合理的にやるということも大事だが、国というものは、そんなに単純ではない。不完全さや完璧ではないものをあえて神秘性で補うことで大きなものがまとまることもあると思う。だから公開すべきものは公開して明確にしつつも、不明確な部分もあえて守るということでないか」とコメントしていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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