「一日一日の積み重ねによって、今日という日を迎えることができたと思っている」。
20日、第一次政権も含めた通算在職日数が2887日となり、明治・大正時代に3度総理を務めた桂太郎を抜いて憲政史上最長となった安倍総理。政権運営の停滞、健康問題などにより、わずか1年で退陣。その後、2012年に民主党から政権を奪回し、およそ7年にわたって政権を担ってきたことを振り返り、「薄氷を踏む思いで、その緊張感を持って歩みを始めた初心を忘れずに、全身全霊をもって政策課題に取り組んでいきたいと考えている」とも語った。
同日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した、前産経新聞政治部長で政治ジャーナリストの石橋文登氏は、ここまでの長期政権となった理由について、「安倍総理は“嫌いな人に嫌われても何とも思わない”。これが大事だ」と分析してみせる。
「人は誰しも“皆に好かれたい”という願望を抱く。第一時政権の時の安倍総理にも、そんな願望があったと思う。そして皆にいい顔をしたことで信用されなくなり、一気に崩壊してしまった。どん底に落ち、寄ってきた人間もほとんどが去ってしまった。そこから“自分のことが嫌いな人間に嫌われても仕方ない、何ともない”、と割り切るようになった。それが強さの秘密ではないか。かつて、敵をバッサリと斬ってしまう小泉元総理は“信長”と呼ばれた。一方、安倍総理は家康型。嫌いな人間を真綿でジワっと締めつけ、苦しむのをニコニコして見ているような感じ。歳をとって、そういう不気味な恐ろしさがますます身についてきた」。
さらに“一強多弱”の状態が続いている理由については「旧民主党系の人たちが取り組むべき問題である最低賃金や、財界が反対した働き方改革などを実現させ、野党がやりそうなことを先に打ってしまう。そのようにして野党を割り続けることによって、いつでも解散できる体制を敷く。これは与党も野党も震え上がる。そして、野党は国民民主党なら国民民主党、立憲民主党なら立憲民主党が“俺たちだけで政権を取るんだ”とい言わないとといけない。最初から“手を繋いでやろう”と言っている間は絶対、安倍政権に勝てない」と指摘。
先月辞任した菅原前経産相、河井前法務相をあわせ、安倍政権での閣僚の交代は10に上っていることに関しても、「政治とカネの問題で辞めた甘利氏も党税調会長という重要ポストに戻ってきているし、党内でのフォローアップをしている。そもそも河井氏の件は、明らかに現状と公選法が合っていないということだ。特殊技能が求められる上に、朝から晩まで拘束されるウグイス嬢の仕事が日当15000円だったら、誰も来てくれないだろう。では、他の与野党議員はどうしているのか。皆が知っているはずだが、地域で一律3万円、4万円と決まっているものだ。立法府が解決しないと、これからも延々とやる問題になると思う。その他の辞職についても、半分くらいが今にしてみればどうでもいい理由だ。松島氏のうちわ問題も、後ろに段ボール箱を置いて回収箱にしていれば何の問題もなかった。蓮舫氏は“うちわに証紙を貼っていたから大丈夫だった。政策ビラだ”と言っていたが、細かい話でおかしい問題については与党も野党も気付いているんだから、自分たちで何とかしろよと思う」と語った。
■パックン「柔軟性、政治の能力の高さについては誰もが認めざるを得ないのではないか」
ジャーナリストの堀潤氏は「やっぱりインターネット時代だなと思う。強いイデオロギーやメッセージ、インパクトのあるアクションによって賛否を巻き起こし、国論を二分し、自分たちのファンを強固にしていくのは、SNSやインターネットでの発信があってこそ。また、外せないのは経済界との関係の強さだと思う。例えば企業献金を規制していく動きが進んでいた中、安倍総理になってからはむしろ復活させ、財界の要望をしっかりと汲んで一体となっている。そして、現場のことを知っている野党が共産党くらいで、他は机上の空論みたいなものが目立つ中、自民党の子育て政策などを見ていても、国民生活と向き合い、ニーズをすくい上げようとしていると思う。ロビー活動をしている団体の皆さんと見ていると、自民党の議員たちが“これは自分たちでやる。野党に持ってかないで私に持ってきて”と積極的に呼びかけていることもある。むしろ野党の皆さんが“本当に政権奪取に関わる話なのか”みたいな感じで冷ややかなところがある」と指摘。
さらに「官僚は一枚岩になっているという実感する。官僚の皆さんからは、ある意味で“うちのボスは言うことも聞いてくれるし、聞く耳を持ってくれる人だから安心してできる”という声をたくさん聞いた。ある元経産次官の方は、“安倍総理は話を持っていくと、どうすればいいのか聞いてくれる。それがいい”と言っていた。しかし、だからこそ“大きな声”に繋がることのできる人々の利益は確保されるが、そこから弾かれてしまったマイノリティの声は届きにくい。安定が得られるなら少々のことは目をつぶってもいいだろう、という空気が生まれていくことに対してはノーと言い続けたい」とコメントした。
お笑い芸人のパックンは「第一次政権で辞任したとき、もうもう復帰は難しいと思っていたし、僕は安全保障政策もアベノミクスについても懐疑的で、色んな所で批判してきた。それでも柔軟性、政治の能力の高さについては誰もが認めざるを得ないのではないか。首相の任期が1年くらいの時期が長く続いていたが、もしかしたらこれからは長期政権がニュー・ノーマルということなのかもしれない。小選挙区制度の下では、基本的に首相がハンコを押した人だけが立候補できるからだ。そして、霞が関では省内人事が動くが、官邸の官僚だけは残る。そこで上下関係が生まれ、反対派が声を上げにくい“忖度大国”になっていくかもしれない」と懸念を示した。AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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