インフルエンザが猛威を振るっている。厚生労働省によると、去年と比べて流行が4週間も早く、統計を取り始めた1999年以降で2番目の早さだという。しかも全国5000の病院で先月18~24日までの1週間に報告された患者数1万5390人は、前年同期比で約6倍という多さだ。
背景にあるのは、ラグビーワールドカップ2019を観戦するために南半球から移動してきた人々の影響との見方もある。
AbemaTV『AbemaPrime』に」出演したナビタスクリニックの久住英二医師は「北半球ではインフルエンザが冬に流行り、2月、3月になると皆が罹りきるので勝手に流行が終わっていく。そして夏の間、ウイルスは冬の南半球に行っている。だから例年、夏の時期は東南アジアや沖縄などで流行っていて、そこに旅行に行ってきた方々が持って帰ってくることも多い。今年は流行期に入ったのがどの都道府県も早いという状況なっているが、要因として、今年の北半球の夏がすごく暑かったことと、南半球から移動してきた人が多かったということが考えられる」と話す。
「感染者と半径2mくらいで接した方は、ウイルスにまぶされているはずなので、いわば“無症状”のインフルエンザ感染者はすごくたくさんいる。発症する人としない人の違いは明確には分かっていないが、一つには睡眠不足や疲労があると風邪をひきやすくなるとされている。また、検査の感度については、正しく診断できる確率は60%~80%程度だ。だからインフルエンザではないということで会社に行っている方の多くが、実はインフルエンザということも多い。やはり年に一度くらいしか風邪をひかないような元気な方が風邪のような症状を覚えたら、インフルエンザだと考えてもいいのではないか」。
そして必ず話題に上るのは、予防接種への疑問だ。 今シーズンのインフルエンザワクチンの見込み供給量は約2951万本で、昨年の使用量(2630万本)や平成29年を除く過去6年間の平均使用量(2598万本)を上回っているという。厚生労働省は「発症をある程度抑える効果や重症化を予防する効果があり、特に高齢者など罹患すると重症化する可能性が高い方には効果があると考えられる」としているが、受けたのにもかかわらず感染・発症してしまったという声は後を絶たない。
体調管理には人一倍気を遣ってきたテレビ朝日の平石直之アナも、予防接種を受けたにも関わらず罹患(A型)、39度近い高熱を出した。欠勤を余儀なくされ、番組の司会進行役は別のアナウンサーが務めることになった。
この点について、久住医師は「ウイルスというのは、殻の中に遺伝子が入っている、生き物とも言えないようなもので、遺伝子がコロコロ変わっていく。特にインフルエンザウイルスは定期的に遺伝子の組み換えが起こる特殊なもので、鳥や豚など、人間以外の動物の中でも変化していくので、なかなか抑えることができず、毎年新しいタイプのワクチンを打つ必要がある。さらに“有効率”と言って、ワクチンの当たりが良かったり、悪かったりする。インフルエンザワクチンの場合、平均すると60%くらいと言われている。また、予防接種を受けてから、抗体というタンパク質が作られて、防御する効果が出てくるまで2週間くらいかかる。ワクチンは10月くらいから受け始めて、11月くらいの方が多いが、今年のように流行が早いと今まで通りだと、それが遅かったということも考えられる。また、ワクチンの出荷数を見ると需要は満たされているが、逆に言えば8000万人近い方々は打っていないということだ。自分だけ受けていても周りからウイルスを浴びてしまうから、ワクチンの効果がより出にくい状態になっている」と説明する。
「現在、日本で主に使われているのは不活化の4価ワクチンといって、ウイルスそのものではなく、ウイルスの表面にくっついているタンパク質を精製したものだ。いわば警察犬に臭いを嗅がせて犯人を覚えさせるように、免疫細胞がタンパク質を攻撃すればといいと学習させるようなイメージだ。このタンパク質が毎年変わるので、ユニバーサルワクチンを作ろうという研究や、鼻に噴霧するワクチンの開発も進んでいる。また、世界的には生ワクチンや、貼るワクチンもある」。
そんなインフルエンザワクチンだが、実は接種率が下がってきているという。1962年、“勧奨接種”として一般向け予防接種開始が始まり、1976年には、小中学生に対する集団予防接種が義務化された。しかし1987年になると、希望者への接種に変更され、1994年は学校での集団接種が中止されている。
久住医師は「ワクチンを受けた後に、副作用や別の原因で具合が悪くなる方が一定数いらっしゃることと、自分で打つ・打たないを決めたいという方の意見が大きくなってきていることが原因となっている。世界的にも、日本はワクチンを信頼していない国の一つだと見なされていて、自分の健康を過信している人がワクチンを受けずに持ってくるケースも多い。川崎市の開業医の先生の研究では、家庭にウイルスを持ち込むのはお父さんが多いという結果も出ている。それは医療者も同様で、実は“俺はかかったことがない”と言って、インフルエンザワクチンを受けていない医療者もたくさんいる。打たなければいけない事情がなければなるべく打ちたくないという意識が変われば、流行は今よりも抑えられると思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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