女子格闘技の歴史の中でも、最も感動的な戴冠劇の一つだったのではないか。
12月8日に開催されたパンクラス新木場スタジオコースト大会。そのメインイベントは、藤野恵実vsチャン・ヒョンジの女子ストロー級暫定王座決定戦だった。藤野はキャリア16年になろうとする39歳。国内外さまざまな団体で試合を重ねてきたが、なぜかこれまでベルトを巻くことができていなかった。
今回のタイトルマッチは悲願達成に向けた最大の、そして最後になるかもしれないチャンスだった。試合に向けて制作された告知用VTRでは、藤野と練習をともにする各ジャンルの女子王者たちが「#フジノこっちおいでよ」と“ベルトを巻く人間の世界”へいざなうメッセージを送り、このハッシュタグが試合そのもののキーワードにもなった。試合当日も、藤野と親交のある女子選手たちが彼女の入場を出迎え、拍手でケージに送り出した。選手たちとの幅広い交友関係は「飲み」で作ったという藤野だが、人一倍練習熱心なことを誰もが知っている。