「報道と情報バラエティの境界が曖昧」「アンテナの感度が著しく欠如」BPOが投げかけた番組制作現場の課題
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 「時代の課題へのアンテナの感度が著しく欠如しており、人権を尊重すべき放送局としては、深刻な問題と言わざるをえない」。BPO(放送倫理検証委員会)は10日、読売テレビの報道番組『かんさい情報ネットten.』が放送したコーナーに対し、「放送倫理違反」との判断を示した。

 問題となっているのは、今年5月に放送された番組内のコーナー「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」で、飲食店から「男か女か分からない客がいる」との話を聞いたお笑いコンビが一般人の身体を触るなどして性別をしつこく確認。「失礼かもしれないが、性別ってどっちなのかな」「お兄さん今さ、財布に免許証とか入ってる?」と話しかけたVTRで、スタジオのコメンテーターが「個人のセクシュアリティに踏み込むべきではない」「こんなのよく放送したな」と怒りを露わにする場面も見られた。

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 10日に公表されたBPO意見書によると、チェック体制がプロデューサー1人だけであり、本人が放送を承諾したのかディレクターに対し2度にわたって確認したものの、性的指向を確認すること自体の問題まで意識が及ばなかったこと、また、「メインキャスターも解説デスクも、質問がしつこく、踏み込んだ内容だが本人の同意は取れているのかと疑問を持った。しかし、性別確認などが性的少数者やLGBTの問題となる点は、明確な認識がなかった」と指摘。そして“テレビ局の人間”という特権意識が取材対象者に対する思いやりやリスペクトを失わせたのではないかとしている。

 会見に出席した委員長の神田安積弁護士も「性的少数者の人権や当事者の社会的困難への配慮が議論されている時代に、最も感性が鋭敏であるべき放送が著しく配慮を欠くやり取りを放送した点で看過できない問題がある」と説明した。

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 また、BPOは報告書で、近年、報道番組と情報バラエティ番組の境界が曖昧になっている危うさがある、とも指摘。「「報道道番組」であるうちは、プライバシーの尊重、人権意識や事実を確かめる裏取りといったことについて神経をとがらせていたチェック体制が、「情報バラエティー番組的」になったからといって、軽んじられていいはずはない。逆に、政治や社会問題を扱うようになった「情報バラエティー番組」においても、「報道番組』」同様の、深い問題意識やチェック体制は必要であろう」と提言している。

 意見書を受け、読売テレビは「BPOの意見を真摯に受け止め、今後の番組作りに生かしてまいります」とコメント。また、当事者のsabuchanさんは「ワンちゃんと一緒にテレビに出られて良かったが、意図しない形で大騒ぎとなり出演者やスタッフ、お店の方に迷惑をかけてしまった」、さらに「保険証を見せたり胸を触らせたのは、僕が面白くしようとして提案したことだったが、それが重大な問題点として挙げられていて責任を感じている。申し訳ない」と話している。

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 11日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した女優の宮澤エマは「報道、ニュースとバラエティの区別が付かなくなってきているということもあるかもしれないが、それ以上に、情報番組として視聴者にとってどう役立つのか、そこの意図が欠落しているのではないかと感じる。また、本来メディアの人間は感度が高くないといけないのに、何人もの人が、100%良いものだとは言い切れないと思いながらも、誰もちゃんと言い出せなかったことも問題だ」と指摘。

  番組に出演した経験もあるジャーナリストの堀潤氏は「番組ではたまたまコメンテーターの方がきちんと空気に水を差すことのできる方だったから、なんとか首の皮一枚で繋がった感じがしたが、番組の終盤のあの尺の中で、よく言えたと思う。本来、その役割を担わなければいけないのはメディア自身だ。ご本人が“いいよ”と言ってくださったのだとしても、公共の電波を扱うテレビ局が誰かのセクシュアリティについて根掘り葉掘り聞くような行為については慎重になるべきだ」と話す。

「報道と情報バラエティの境界が曖昧」「アンテナの感度が著しく欠如」BPOが投げかけた番組制作現場の課題

 「報告書によれば、担当者は何となく“大丈夫かな”という違和感を覚えてはいたが、生放送で指摘されて動揺し、さらにやって来たに報道局長“どうなってるんだ”と怒られて、頭の中が真っ白になってしまったと証言している。各放送局とも、LGBTQの問題を含め、人権に関する研修会は開かれているが、やはり正社員が対象のコンプライアンス研修の一環になっている。本来、番組ごと、チームごとに勉強、共有できる場をちゃんと作っておかないといけないし、それはテレビ局に限った話ではない。僕は渋谷男女平等・ダイバーシティセンター(通称:アイリス)の運営委員長を努めているが、こうした問題についてディスカッションする場があまりないと感じている」。

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 お笑い芸人のパックンは「アメリカでも、かつて『サタデー・ナイト・ライブ』という人気お笑い番組に男性なのか女性なのかわからないキャラクターが出てきて、そのことをネタに毎週コントをやって皆が笑っていた時代があった。今回のVTRも、5年前だったら問題視されていなかったのかもしれない。より優しい社会にシフトしようと、世論や線引きが日々進化している中、制作者そこに追いついていかなければいけない」とコメントした。
 
 視聴者からは「では、同じようなことがあった時、コメンテーターの方々は放送中に“違う”と言えるのだろうか」との質問も寄せられた。司会進行の平石直之アナは「気づけば言えるだろうが、やはり色々な問題を扱う中で、気付くことができない可能性はあるかもしれない。だからこそ我々は常にアップデートしていかないといけない」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:テレビ番組で性別確認 放送倫理違反に

テレビ番組で性別確認 放送倫理違反に
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