去年1年間に行方不明になった人の数、8万7962人。その原因や動機で最も多いのが、認知症や統合失調症などの疾病関係によるものだという。
その一人、温井和恵さん（69）の帰りを待つのが、娘の寿子さんだ。2013年8月4日の夜、寿子さんと電話で話した後から音信不通となり、6日までに墨田区東向島付近の自宅を出たまま、行方不明となった。
「薬を飲まないと大変なことになってしまうので、それまでは毎日連絡を取って、声の調子で本人の体調が分かるようになっていた。特別行かなければいけないということがなければ、1～2週間には1度会うようにもしていたが、その時、連絡が2日間取れなくなった。家に様子を見に来たら、電気はついたまま、鍵は開いたまま。荷物は全部そのままの状態で、靴もあった。そしてテーブルの上にメモ書きだけ置いた状態でいなくなっていた」。
統合失調症の症状により、それまでも鍵を開けたまま、突然家を出てしまうということが何度かあったという。「長いと半年くらいの入院と退院を繰り返していた。誰かを家に呼ぶということを希望しなかったので、デイサービスという形でレクリエーションには通うようにしていた。大きなニュースになるような災害があった時に、全部自分のせいだと思い込んでしまって、“私が死ねば世界は平和になる”みたいなことをよく言っていた。“自分がいなくなればいい”という思いで、靴を履かず、隅田川の方に向かって出かけていたこともあった。ただ、家に帰って来られなかったということはなく、私の電話番号などもきちんと記憶していた。ただ、失踪する1カ月前まで閉鎖病棟に入院していたので、万全ではなかったのかもしれない」。
普段から妄想に悩まされていた和恵さんが残した、「ありがとう」「しあわせ」「よろしく」「わかって下さい」と書かれた1枚は、寿子が1歳の時に離婚した、元夫にあたる男性に宛てたメモだった。「“よろしく、わかって下さい”というのが、思いを分かって下さいと訴えられている気がしてはっとした。怖くて離婚した理由をはっきりと聞いたことはなかったが、多分、母はずっと（元夫を）想っていた」。
和恵さんが住んでいた家で6年間、諦めることなく母の帰りを待ってきた寿子さん。しかし、思い出が詰まった家を離れる決意をした。「突然フラって帰ってこないかなと思うことはある。でも来年4月に引っ越すので、それまでになんとかこの家に戻ってきてほしい」。
来年、法律上「死亡」とみなされる「失踪宣告」をすることが可能となる7年目を迎えることになる。親戚の間でも、その話題が出るようになった。
「叔父や叔母には、家のことなどを考えると、決断しなければいけないのではないかとは言われた。でも、私の中ではまだ踏ん切りが付かなくて、まだ葛藤している。母一人、子一人だったので、私の反抗期もすごかったし、あまり素直に感謝の気持ちを言うことができなかった。あれから子どもが2人生まれ、母という立場になって、そういう気持ちをきちんと伝えたいし、とにかく子どもたちにも会わせてあげたい」。
和恵さんは失踪時63歳、身長155cm・体重60kg、白髪交じりの天然パーマで、妊婦のようにお腹が出ており、両目の間に傷跡があるのが特徴だという。些細なことでも知っていることがあれば、Twitterの「#アベプラ」または日本失踪者協力機構（代表電話：0570-034-110）まで。
また、愛知県碧南市松江町で今年8月7日13時ごろ、近所の公園へ出かけたまま行方不明となった、失踪時74歳の岡田保一さん（身長165～170cm、体重45～50kg、アルツハイマー型認知症。前歯が数本なく、鼻の横にホクロ、踵を引きずって歩くのが特徴）。
岩手県一関市で今年7月3日、日課の散歩に出かけたまま行方不明となった、失踪時33歳の佐藤金善さん（身長170cm、体重60kg、統合失調症。幻聴により独り言をつぶやいていることがある。目の瞳孔が開いており、強張っているような表情）。
昨年11月8日15時30分ごろ、北海道札幌市西区で、外出したまま行方不明となった失踪時43歳の菊池嘉之さん（身長168cm、体重73kg、若年性認知症。服装はグレー系のジャンパーにボーダー柄のパーカー、青系のジーンズ）の情報も募集している。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
▶映像：ネットで行方不明者を探せ!情報提供を
この記事の画像一覧
