「麻雀好き」と聞いた時、真っ先にどんなことを連想するだろうか。競技麻雀のような“ガチ勝負”が好きな人もいれば、楽しくワイワイ話しながらやるエンジョイ派もいる。打ち方についても、小さな打点のアガリを積み重ねるタイプから、一撃で勝負を決める高目追求タイプなど、実に多様だ。デジタル雀士として、オンライン麻雀「天鳳」の頂点に2回立ち、現在はプロ麻雀リーグ「Mリーグ」のU-NEXT Piratesに所属する朝倉康心(最高位戦)は、ファンの間で理論派として知られる選手。そんな朝倉に「麻雀好き」の分類について聞いてみると「結構みんな好みが違うんですよね」と切り出した後、スラスラと分類を始めた。
たとえば「映画好き」といった場合、邦画か洋画かに始まり、コメディ・アクション・SF・ホラーなど、ジャンルは多数ある。「アニメ好き」でも同様で、ギャグ・ロボット・恋愛・日常など、これもまたひと括りにはできない。朝倉からすれば、麻雀に縁がない人からすれば、全て一緒に「麻雀好き」と思われそうなところも、細かく好みが分かれるという。
朝倉 麻雀を頭脳ゲームとして考えるかどうか、ですかね。最善の手を追求するかどうか。エンタメとして楽しみたい人もいっぱいいるじゃないですか。おもしろい展開、大きい手、逆転トップとか。
麻雀における「理」を、手牌の中から最善と思われる牌を切り、損得も含めた期待値が最も高い選択をするものとすれば、あえて大きい手を狙い、まるで無理だと思われた逆転トップを目指すことは、理に反するが、ただ人はこの理を越えた「エンタメ」に興奮することも多々ある。どちらが正しい、ということではなく、これだけで麻雀に対する楽しみ方、「好き」の種類が違う。
朝倉 駆け引きの勝負として楽しんでいる人もいますよね。そういう方は頭脳ゲームというよりは、人との間合いや距離感、勝負感みたいなものを大事にしていると思うんです。
これが朝倉による3つ目のパターン。「理」でも「エンタメ」でもなく、「人間模様」とでも言うべきか。対局の勝敗や点数とはまた違い、卓に向かって座っている4人の様子が、またおもしろい。
ちなみに朝倉がどこに属するのかと聞いてみると「こういう意図で切って、損得はどうこう、こっちの方が得、みたいな話が好きです」と、やはり「理」グループ。さらに、この「理」にも、さらに小ジャンルがあり「数字の話が好きな人と、読みの話が好きな人とがいるんですよね。僕はどっちも好きなんですけど」。所属するU-NEXT Piratesのチームメイトは、こんな麻雀話にいくらでも付き合ってくれるような選手ばかりだ。
Mリーグの各チームにおいても、共通の麻雀観を持った選手が集まっている傾向が強く、チーム内での会話がこの上なく楽しい、という選手も多い。大量のファン、関係者、スポンサーなどから注目を集め、日々プレッシャーを感じながら戦う朝倉をはじめとしたMリーガーだが、延々と続く麻雀トークを満喫しているという点において、一番楽しんでいるのは本人たちかもしれない。
◆Mリーグ 2018年に発足。2019シーズンから全8チームに。各チーム3人ないし4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム90試合。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各16試合)、さらに上位4位がファイナルシリーズ(12試合)に進出し、優勝を争う。






