カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐり、衆院議員の秋元司容疑者が東京地検特捜部に逮捕された。元IR担当副大臣の秋元容疑者は2017年、中国企業の「500ドットコム」側から現金300万円などを賄賂として受け取った収賄の疑いが持たれている。
さらに特捜部は、関係先として自民党・白須賀貴樹衆院議員と勝沼栄明前衆院議員の事務所などにも家宅捜索に入った。2人は2017年12月、秋元容疑者とともに中国・深センにある500ドットコムの本社を訪れ、経営トップと面会したことがわかっている。
秋元容疑者は2004年に参議院選挙で初当選した後、衆議院に鞍替えし3回当選している現職の衆院議員。2016年には内閣委員会の委員長として「IR整備推進法案」に携わり、野党の反対を押し切って法案を成立させた。2017年8月の第三次安倍内閣では国土交通省副大臣や内閣府副大臣などに就任し、IR事業の旗振り役を担っていた。
IR事業は安倍政権が掲げてきた成長戦略の1つだ。その旗振り役だった現職の国会議員が逮捕されたことを受けて、野党側はIR関連法を廃止するための法案を共同で提出することを決めた。現在国会は閉会中だが、IR関連法を審議した衆議院の内閣委員会で閉会中審査の開催を要求している。
さらに、野党側は「桜を見る会」に続きIR・カジノに関する追及本部を設置し、ヒアリング調査を行った。立て続けに起きる安倍政権のスキャンダルへの追及姿勢を強めている形だ。2回目のヒアリング調査となる今回は、秋元容疑者の逮捕とカジノ関連法案に今後について。役人側の“ゼロ回答“が続く中、IR関連法案を予定通り進めたい内閣官房側と延期を求める野党側との間で議論はヒートアップした。
秋元容疑者の逮捕について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「現職国会議員の逮捕はかなり異例のこと。およそ10年ぶりと言われていて、特捜部側も事前に相当(証拠を)固めているのではないか。ましてや副大臣は政治任用ポストなので、もし当時に現金の受け渡しや何らかの利益供与が行われていたとすると、当然厳しく任命責任が問われるべきだ。このニュースに関して報道、特にテレビの扱いが全般的に小さい気がするが、かなり重要なニュースだ」と指摘する。
では、今回の事件は安倍政権に影響するのか。複数の政権幹部に取材したテレビ朝日政治部の安間由太記者は「みんな口を揃えて『今回の逮捕と政権運営は全く関係のないことだ』と言っている。捜査の進展状況にもよるが、これはあくまで秋元容疑者自身の問題として、政権と切り離して沈静化したいという印象を受ける」と話す。
秋元容疑者は25日に離党届を提出し、その後受理された。26日朝の朝日新聞によると、秋元容疑者はもともと二階派所属の議員だが、二階幹事長は「政権そのものが関与したわけではない。別の問題」と話し、ある閣僚経験者も「彼個人の問題だ」と強調したという。一方、公明党の山口代表は「副大臣就任中の出来事だとすれば断じてあるまじき、許されないことだ」と話したということだ。
桜を見る会の問題に総務事務次官更迭など疑惑や不祥事が続き、別の中堅議員は「もう政権末期だ」とも話したという。この点について安間記者は「一部の幹部は『秋元氏自身は実はそれほど権限を持っていなかった』『今回の件で直ちにIRに影響が出るわけではない』とかなり強気な姿勢だ。ただこれはある種、逆風への警戒感の裏返しかとも思う」と推察。
また、西田氏はIR議連が多数の超党派議員で構成されていることに触れ、「場合によっては、与党議員に限らず政界全体に影響を及ぼす展開となるのではないか」と指摘。続けて、未公開株が政治家らに賄賂として流れたリクルート事件を引き合いに「IRの問題も多くの利害関係が様々な形で絡んでいる。数千万円の現金を持ち運んでいたという贈賄側についての報道もある中で、300万円の授受だけで本当に幕が下りるのか」と疑問を呈した。
では、衆議院解散の可能性はあるのだろうか。安間記者は「今回の件で直ちに解散・総選挙という声は政府・与党内からは聞こえてこない。自民党の森山国対委員長が来年の通常国会が1月20日に招集される見通しだと明らかにしたが、その後の予算審議などを考えるとスケジュール的にかなり厳しく、解散の可能性は低くなったとみている」と見解。西田氏は「事件の広がりと世論への影響を注視しているのではないか。問題を抱えたまま選挙に突入すると、与党不利というのは定石なのでできれば避けたいはずだ。だが、もし内閣支持率の低下が止まらず、年を越すと言われていた野党の合流が早く進み、候補者調整も進んでいくようだと、野党が強くなる前に選挙をという判断もあるかもしれない。解散は総理の専権事項なので結局はわからないが、これからの事態の展開状況と関係してくる可能性は否定できない」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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