「真実が伝わっていない」「間違いなく叩かれる。でも黙っているのは逃げ」日大アメフト部の井上元コーチが問うスポーツ指導とパワハラ、そしてメディアの罪
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 2018年に起きた日大アメフト部の悪質タックル問題で同大を解雇された井上奨元コーチ(30)が今月13日、AbemaTV『AbemaPrime』の独占インタビューに応じた。テレビカメラの前に姿を見せるのは、内田正人前監督と2人で記者会見に出席した去年5月以来、実に1年7カ月ぶりのことだ。

「自分から見た騒動の真相を歴史に残したい」という思いを抱きながらも、周囲からの「再びメディアに叩かれ、傷つくだけ」との意見を受け、一切のメディア対応を控えてきた井上元コーチ。一方、事件当時から競技関係者の協力も得つつ、この問題を多角的に検証してきた番組では、当事者である井上元コーチへの取材交渉を重ねてきた。日大からの懲戒解雇が下りてからは報道は下火となり、世間の関心も薄れつつあったが、今年11月に検察が嫌疑不十分として不起訴処分を決定した。刑事責任は問われないことが確定したこと、そして、周囲の理解も得られたことから、今回の取材が実現した。

 聞き手は番組レギュラーMCを務めるカンニング竹山。当時は報道・情報番組などで前監督や井上元コーチを厳しく批判していたが、改めて資料を読み「あれ?と思うことがあった。相手を傷つけない、こっちも傷つかないためには厳しい指導がないとまずいスポーツだと思っていた」と語るなど、過熱する報道やスポーツ指導のあり方に疑問を抱くようになったという。

そんな竹山の率直な質問に対し、井上元コーチも飾らない関西弁で思いの丈を語った。

■「僕が何も答えへんって、それはないんちゃうか」

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コーチ辞任後、大学時代の同級生に誘われ、建築関連の会社で現場に人を手配する仕事に就いている井上元コーチは、初めて味わった“社会人経験”の新鮮さを次のように振り返る。


井上:大学を卒業してすぐ日大で働いて、コーチやっているんで、ほんまに職員とコーチと、それだけです。そこしか知らなかったです。建物が建っていることとか、道路が真っ直ぐなこととかも当たり前のように思ってて。でも、こんだけ苦労して、しんどい思いして働いている人がおってできるんやなっちゅうのを、1日目で思ったです。大変な仕事やなって。


その“修行”の現場で出会った人たちからは「日大の井上さん?」と尋ねられることもあったというが、「全然ちゃうやん!」「全然気付けへんやん!」と驚かれることも多かったようだ。


井上:皆、偏見を持たないというか、快く受け止めてくれた感じなんで、そこら辺は感謝しています。テレビに怖い顔のでかいパネルが準備されて、それがずっと映ってるじゃないですか。そのイメージってでかいと思うんですよ。でも僕、そんなんちゃうでって(笑)。

竹山:実際お会いすると全然違うタイプ。人が違うみたいな感じがする。学生諸君も、本当はこういう人だって知っている?

井上:(キャラクターは)学生のノリに近い方やった。そういう人間がいないと成り立たないと思いますよ。150人くらいおるチームやったら、やっぱり監督と学生って距離あるんですよね。その穴埋めをするのって、僕らコーチやと思うんです。

竹山:やっぱり内田前監督が“恐怖政治”をしている悪の組織だった、みたいな印象になってるじゃないですか。

井上:内田前監督はすごく優しいんですけど、表には出さない。だから学生にとっては厳しい人。僕らも学生の時はそう思ってましたからね。でも全然、“独裁政治”とかじゃない。

竹山:こうやって取材を受けて下さる、このことの意味は。

井上:メディアの前で喋ったっちゅうのは、あの記者会見以降ないんですよ。あれが全てになってしまっている。そして、日大フェニックスやった子らが取材を受けたりしている中で、“監督とかコーチには感謝している”とかね、そう言うてくれてるのあるんですよね。それなのに、僕が何も答えへんって、それはないんちゃうかと。

竹山:やっぱり真実が伝わっていないと。

井上:伝わってない。今回のインタビューも、必ずどこかで叩かれたりね、批判されたりって、間違いなくあると思うんです。出えへんっていうのは簡単ですよ。でも、ずっと黙っているのってね、ちょっと逃げているような感じがしてね、どこかでは出なあかんな、取材を受けなあかんなと思っていました。

■「選手の自主性に任せているだけでは難しい」

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 インタビューでは、調査に当たった日大の第三者委員会、そして関東学生アメリカンフットボール連盟への不満、警視庁による捜査との違いについても話が及んだ。


井上:警察へは朝の8時に呼ばれて、初日は嘘発見器にかけられたんですよ。“YESかNOで答えろ”って言われて。“No!No!No!”みたいな。そんなんで1日目は乗り越えたんですよ。“お前が悪いで!”っていう風にも言われました。でも、細かいとこまでよう調べてくれたなって。第三者委員会や連盟ではでそこまでやってくれへんかった。やって欲しかったんですよ。

竹山:実は警察の取り調べの方が良かったということですか。

井上:第三者委委員会、連盟の調査結果は、”独裁的な指導やパワハラに選手が怯えている”、 なんですよ。問題のタックルに限らず、全部やらされて、恐怖に怯えながらやっていたと。でも、これにはすごい違和感があってね。全然違うんですよ。ほんまに何で分からへんの!?っていう。ただ、すごく難しいんですよね、これを伝えるのが。

竹山:どの辺が難しい?

井上:日大フェニックスは日本一じゃないと意味がないチームっていうことなんですよ。日本一になったっていう、そのプライドが卒業してどんだけ自分の糧になるかっちゅうのを、僕らは教えたかったんですよ。でも、チャンピオンになりたいから日大に来たという子ばかりじゃないし、勝つためには、できへんかったことに対して、学生同士でできるとこまで追及するんがベストなんですけど、自主性に任せているだけではなかなか難しい。だからある程度、こっちが発破かけてやらないと、勝てないと。

竹山:マスコミに関しては、どうお考えですか?

井上:テレビって、最終的に何を伝えたいんかなって思ってたんですよ。ありもしない話が出てきたりね、すごく偏ってるんですよ。ほんまにパワハラを失くそうとしてんの?って。失くそうとしてんのやったら、こっち(選手側)の目線もあって、こっち(指導者側)の目線もあって、っていうことをやって欲しいって思います。皆が皆、一緒の指導で上手くなるんじゃないよ、人によって色々な指導の仕方があるよって。その正解を、もっともっと話す必要があるんちゃうかって。

■「考えてくれる機会になれば」

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焦点となった「関学のQB潰してこいよ」「あれは友達なんか」といった発言についても、選手との長年の関係性から出てきたものだったと強調する井上元コーチ。

「一概にパワハラかって言うと、それは違うって思うんですよ。ほんまに情熱持っている人もいっぱいおるんやで、っていうのを分かって欲しいです」との訴えに、改めてカンニング竹山が「井上さんがやってきた指導、それは今も間違ってはいなかったと思いますか?」と尋ねると、次のように答えた。

「間違ってなかったと思います。でも、彼に対しては多分間違ってた。彼との向き合い方は、ちゃうかった。アプローチの仕方がもっと他にあったんやないかって思うんです。でもそれが何か?っていうのは、あの時は分からなかった」。

 タックルした選手や内田前監督との関係、第三者委員会、学生連盟の調査、そしてメディアの報じ方、大炎上した会見の舞台裏など2時間に及んだ井上元コーチへのインタビューの模様は、大晦日のAbemaPrime年末SP(21時から生放送)内でオンエアされる。

▶日大アメフト悪質タックルの真相

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