日産の資金を不正に支出させた特別背任などの罪で起訴され保釈中だったカルロス・ゴーン被告が無断で出国、国籍を持つ中東のレバノンにいることが判明した。
さらにゴーン被告は広報担当を通じて「基本的な人権が否定されている。日本の司法制度の人質にはならない。不公平と政治的な迫害から逃れた」との声明を発表した。
弁護団の一人・弘中惇一郎弁護士もこの事態をテレビで見て知ったと明かし、「こちらの方も寝耳に水という感じで、びっくりしているし、当惑しているという状況だ。我々としても事実だとすれば、保釈条件に違反していると考えざるを得ない」とコメント。パスポートは弁護団が預かっていたとして、「相当大きな組織が動かなきゃ(出国は)難しいんかないでしょうか」と話した。
レバノンの首都ベイルートで取材に当たっているテレビ朝日の阿部健士カイロ支局長は最新の情勢について「現地メディアによると、所有する建物の周辺では先日からゴーン被告の妻やメイドの姿が目撃されており、関係者の話では、すでにゴーン被告自身も中にいるもようで、今後、記者会見を開くという情報もある」とレポート。
「現地メディアによると、ゴーン被告は妻や娘の助けを借り、楽器を入れる木箱に入れて日本の地方空港から出国し、トルコ到着後にプライベート機でレバノンに入ったという。また、レバノン政府関係者は、入国に際してゴーン被告はフランスのパスポートとレバノン国籍のIDを所持し、合法的に入国したことを認めているといい、到着後には大統領と面会したとの情報もあるという。これらが事実だとすれば、レバノン政府がゴーン被告の出国を把握し、日本からの出国についても何らかの手助けした可能性もあり、豊富な人脈を駆使して入念に準備していた可能性がある。いずれにせよレバノンではゴーン被告が切手になっていたり、地元企業が支持を表明する公告を掲出したりするなど、ゴーン被告のことを擁護する風潮がある」。
元入管職員の木下洋一氏は「対面での出国審査で発見できるはずで、ありえない事態だ。ただ、外国要人扱いであれば対面審査がないケースもあるし、その際に荷物に紛れたり偽名を使用したりされた場合、気づきようがない」と話す。
元東京地検検事の郷原信郎弁護士も「ニュースを聞いて驚いた。何らかの形でレバノン大使館が関わっているのではないか。通常は手荷物検査があるが、大使館員はそれがないらしいので、そういうことで出国が可能だったかもしれない。検察も大使館が関わるというところまでは想定できていなかったのだろう。ただ、こういうことが起きると、保釈を認めた自体ことが問題だとか、今後は保釈を認めないようにした方がいいという話になるが、これは本当に特異なケースだ。国際的なカリスマ経営者であり、3つの国の国籍を持ち、しかも大使館ごとサポートしてくれるような人はそうはいない」と話す。
その上で、無断で出国に至った理由について「やはり保釈の条件がひどすぎたのではないか。奥さんとの接触が9カ月も禁止されているが、その必要性がよくわからないし、国際的に人権侵害とみられても仕方がない。そういったことから、あえて出国し、海外メディアに日本の司法はとんでもないんだと訴えていけば支持が得られ、名誉も回復されると思ったのではないか。今までは国内の問題だったのが、これからは国際的な問題に発展にしていく」と推測する。
「最初の逮捕事実は、役員報酬の虚偽記載だが、これは犯罪になるかどうかが疑問視されているようなレベルの話で、“こんなもので逮捕したのか”と批判が高まっていた。さらに特別背任で再逮捕したが、こちらは中東での話で、実際に何があったのはわからない。これからゴーン氏が中東で証拠を集めれば、検察が立件した容疑があまりに薄弱だったと反論をすることも可能になるかもしれない。そういう中で身柄の引き渡しをしてもらえるよう、説得していかないといけない」。
慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「日本のメディアではすっかり悪者として報じられているが、世界には“日本が酷い扱いをしている”という考えをしている偉い人たちもたくさんいるということに気をつけないといけない」と指摘。編集者・ライターの速水健朗氏は「今後の発言の内容如何では世界で大スターになると思うし、Netflixがドラマ化するんじゃないか」とコメントした。
これに対し郷原弁護士は「米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道を見ても、これまでの動きを淡々と報じていて、かなりニュートラルだ。決して“逃げ出した、けしからん”という論調ではない。日本の刑事司法はどうだったのか、今回の捜査にどんな問題があったのか。これからのゴーン氏の記者会見や発言に注目しているのではないか」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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