2019年11月、スペインのマドリードで開催されたデビスカップファイナルで、日本と対戦したのがA組第2シードのフランスだ。そのときは、シングルスを戦ったのがツォンガ、モンフィス、ダブルスがエルベール/マウというメンバーだったが、今回の「ATPカップ」には、モンフィス、ペール、シモン、マウ、ロジェ バサランという5人体制で挑んできた。
こんな認識はされていないかもしれないが、フランスは世界に誇るテニス大国だ。たしかにランキング1位のチャンピオンは生んでいない。しかし、層の厚さでは、ジョコビッチを擁するセルビア、フェデラーを擁するスイスを凌駕する。フランスと匹敵するのは、ナダルがいるスペインくらいのものだ。
団体戦で競われるデビスカップやこの「ATPカップ」で重要な様子となるのが層の厚さだ。とくにシングルス2本、ダブルス1本のフォーマットでは、ダブルスの勝敗が大きな鍵となる。その点、ダブルススペシャリストとも言えるニコラス・マウがチームにいるのがデカイ。なにしろマウは2019年のATPファイナル・ダブルス優勝者(パートナーはエルベール)。この大会でもダブルスに出てくることは確実。フランスは、マウがいるダブルスで星勘定ができる。
一方のチリは、23歳のクリスチャン・ガリン(33位)、24歳のニコラス・ジャリー(77位)が2トップを組む若いチームだ。チリという国名を聞いて、なおかつ2トップという単語が来れば、古くからのファンならすぐにニコラス・マスーとフェルナンド・ゴンザレスの顔を思い出すことだろう。
2004年のアテネオリンピック。マスーはシングルスで金メダルを獲得、さらにダブルスでもゴンザレスとのコンビで金メダルに輝いた。単複で金メダルを獲得したのは1924年のパリ大会以来のこと。大会後、凱旋帰国した2人はチリの英雄となった。
そんなにテニスが盛んとは言えないチリからは、ときに面白い選手が出る。錦織圭選手が子供の頃に憧れていたと言っていた「コートのマジシャン」マルセロ・リオスもチリ出身。マスーはしぶとく粘るタイプだったし、ゴンザレスはこれでもかと言うほどボールを叩くタイプ。プレイに統一感はないが選手は個性的で多くのファンを持っていた。マスー、ゴンザレス時代から団体戦では強さを見せていたのがチリ。ガリンとジャリーの2人が、フランス相手にどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ。
文/井山夏生(元テニスジャーナル編集長)