1月3日(金)から12日(日)の期間で行われるテニス国別世界一決定戦「ATPカップ2020」。
優勝を目指す日本代表だがエース・錦織圭、さらにシングルスとダブルスの双方をこなすことができる内山靖崇までもけがで欠場となってしまった。そんな絶体絶命の日本チームに追加召集されたのが、松井俊英だ。
松井の年齢は41歳。最新のATP世界ランキングでは、シングルス・ランキングを持っている全1927人の選手のうち最年長にあたる。現役最年長シングルス世界ランカーなのだ。
ちなみに同い年である1978年生まれのアスリートでは澤穂希や井上康生などがいるが、ほとんどの選手が一線を退いているような年齢だ。それはテニス選手も例外ではない。近年、選手寿命が延びてきているとはいえ、それでも35歳までに引退するケースがほとんどなのだ。
そんな松井の経歴は当然異色だ。普通のテニス選手はジュニアの頃から頭角を現し、20代前半にはキャリアのピークとなるような結果を出すことが多い。しかし松井は16歳でカナダに留学。現地の大学を卒業してからプロ転向をしている。テニス選手では数少ない大卒プレイヤーなのだ。
シングルスで活躍する時期もあったが、それでも最高ランキングは261位。ツアー下部の大会を転戦しながらシングルスとダブルスをこなしていたが、サーブやボレーの技術を活かして次第にダブルスに注力するようになった。そして2018年、40歳でダブルス・ランキング自己最高位の130位に到達。現在でも177位という成績を維持している。テニスの常識からは考えられないほどの超晩成型プレイヤーなのだ。
松井の日本代表入りは話題づくりのためだけではない。この最新のダブルス・ランキング177位は、マクラクラン勉に次ぐ日本選手の2番手に位置している。2019年は下部ツアーを中心に、実に29大会のダブルスに出場。今の日本で最もダブルスの試合をこなしている男子テニス選手は松井なのだ。今の日本で勝てる選手を選んだ結果が、41歳の大ベテランの起用ということである。
本戦ではそのマクラクラン勉とのダブルスに出場する可能性が高い。今組める日本の最強ダブルスペアで、世界に挑むことになる。日本代表としての大会への出場は実に2010年以来10年ぶり。試合数は少ないが、デビスカップ通算4勝1敗と国別対抗戦への相性はいい。プロ歴20年にして、史上最大の大舞台への登場となる松井。今、最も脂の乗った『世界一テニスの巧い41歳』が、日本代表の救世主となるかもしれない。
文/今田望未(テニスライター)
写真/Hiromasa MANO