3日にオーストリア・シドニーで行われたテニス国別対抗戦「ATPカップ」。イギリス対ブルガリアの試合は大熱戦の末に、2勝1敗でブルガリアが劇的な勝利を挙げた。試合が終わったのはなんと、現地時間の午前2時47分。ダブルスの試合後に勝敗が決すると、ブルガリアのチーム全員がベンチから飛び出して、まるで優勝したかのような歓喜に酔いしれた。
初戦から空気が違った。世界ランキング423位のディミタル・クズマノフが、53位のキャメロン・ノリーを相手にフルセットの末惜しくも敗れた。これを見て燃えないわけがない。ブルガリアのエース、グリゴール・ディミトロフは選手兼監督を務める。続いての第2試合で選手として勝利を収めると、迎えた第3試合では、監督自ら炎の連闘策を取った。メンバー変更でアレクサンダー・ラザロフとのペアでダブルスに出場したのだ。
相手のイギリスペアは、グランドスラム優勝経験もあるジェイミー・マレーを中心に、ダブルスの技術に長けている強豪。いくらディミトロフを投入しても勝てる保証は一切ない。
チームのベンチに座っている仲間たちもチームの勝利を信じられないのか、最初は座って見ていたが、白熱する試合に少しずつ感情が高ぶり、ついには全員が立ち上がるようになっていった。
イギリスのマッチポイントを2本凌いだ後に訪れた、最初のマッチポイント。決めたのはラザロフだった。渾身のストロークがなんとオンライン。イギリスペアはがっくりと肩を落とし、子供のようにコートに駆け寄ってくるブルガリアチーム。ディミトロフのワンマンチームではなく、ラザロフ、クズマノフの頑張り、ベンチからの声援。まさにチーム一丸となって勝ち取った大金星となった。
試合の様子を中継したAbemaTVの視聴者も、深夜にもかかわらず劇的決着にお祭り騒ぎとなった。コメント欄では、朝8時の試合から17時間もこの激戦を視聴し続けた“ある意味猛者たち”が、1日の出来事を振り返る感動的な展開に「コーフンして寝れなくなる」「気合いのノリが違った」「この喜びようは(次の試合の)負けフラグ」などたくさんのコメントが寄せられていた。
大会初日から大きな盛り上がりを見せているATPカップ。12日まで続く大会で、次はどんなドラマが生まれるだろうか。グループCはこのブルガリアの金星で大混戦の展開になってきた。
文/今田望未(テニスライター)