ATP(男子プロテニス協会)が主催する国別対抗戦『ATPカップ』が開幕した。出場24カ国がシドニー、ブリスベン、パースの3会場を舞台に10日間に渡る熱戦を繰り広げる。開幕試合でノルウェーがアメリカを破る波乱が起きたパース会場では、ロシアとイタリアが夜の部に登場。欠場した世界ランク8位のマテオ・ベレッティーニに代わってイタリアのエースを務めるファビオ・フォニーニは、昨年の全米オープン準優勝者で世界ランク5位のダニール・メドベージェフに敗れたものの、その奇才ぶりを随所に散りばめてファンを楽しませた。
ロシアに先勝を許して迎えた2試合目。エース対決で絶好のスタートを切ったのはフォニーニだ。最初のゲームでいきなりダブル・ブレークポイントを握られたが、4度のデュースの末にキープに成功し、そのピンチをしのいでからは一気にゲームを重ねる。メドベージェフにはこのところ2連敗中だったが、鼻歌でも歌い出しそうな上機嫌で第1セットを6-1であっさり奪った。
しかし第2セットからは風向きが激変。本来のディフェンス力を発揮し始めたメドベージェフに対し、思うようにポイントが取れなくなる。タッチの巧みさ、脱力系のフォームからのスーパーショットを随所に見せるものの、第2、第3セットではブレークポイントも握れない。
最終セット2-4の第7ゲームではついに苛立ちもピークに。癇癪持ちで試合中の悪態では何度も罰金処分を受けているフォニーニにしてはよくここまで我慢したが、このゲーム2度目のデュースのあとについにラケットを地面に叩きつけた。しかし壊れもせず、警告もとられなかった中途半端な行為では不満が解消されなかったか、2ポイント後に今度はボールをスタンドへ打ち込み、警告をとられた。そこからの飄々とした3ポイント連取もフォニーニらしく、32歳になっても感情の爆発をあらためない理由かもしれない。しかし残念ながらこのゲームが最後の見せ場となった。
なおフォニーニが打ち込んだボールは観客の男性が好捕。場内は二度、沸いていた。
文/山口奈緒美