ATP(男子プロテニス協会)が主催するテニスの国別対抗戦『ATPカップ』は大会2日目、優勝候補最有力のスペインが登場し、日本と同じグループBの初戦でジョージアと戦った。第1試合で世界ランク9位のロベルト・バウティスタ アグートが678位のアレクサンドル・メトレヴェリとの格差対決で6-0 6-0のパーフェクト試合をやってのけ、世界ランク1位のラファエル・ナダルはジョージアのエース、ニコロズ・バシラシビリを6-3 7-5で振り切った。勝敗が決してからのダブルスは、急きょナダルに代わったフェリシアーノ・ロペスがパブロ・カレーニョブスタとのペアで快勝した。
失セット0の圧勝だったが、決してスペインの強さだけが印象に残ったわけではなかった。裏の主役はナダルに食い下がったバシラシビリだ。ジョージアのテニスの歴史を次々と塗り替える27歳。一昨年はジョージア人初のツアー優勝を遂げ、昨年はジョージア人初のトップ20入りを果たした。前回の対戦で1-6 0-6と完敗したナダルに対し、第1セットを失って第2セットも2ブレークを許す。足に痙攣もきていたという。しかし、破壊力のあるフォアを武器に2-5から反撃を開始。5-5に追いつく猛追を見せた。
試合を生中継したAbemaTVの視聴者の中にも、この頃にはバシラシビリのファンが急増。「バシラのフォアえぐい」「バシラのテニスはロマンがある」「バシラー増えそう」といったコメントが寄せられた。どこかもの悲し気な表情、内に闘志を秘めた雰囲気から、父がジョージアの国立バレエ団の元ダンサーというのもうなずける。ちなみに6年前に結婚した妻はモデルで、4歳の息子もいる。
ただ、反撃はそこまでだった。次のゲームで再びブレークを許し、もうブレークバックのチャンスは訪れなかった。
「あのゲームは本当に取りたかったよ。でもサーブが100%の調子じゃなくて攻めきれなかった」
昨年11月に肘の手術をしたという。しかし、何がなんでもこの『ATPカップ』には出場しようと調整してきた。他のメンバーは全員600位以下。彼がいなくては成り立たないチームだ。
「チームメートたちに囲まれて、最高に楽しい。みんなワクワクしているよ。すばらしい経験だ」
ジョージアの次の相手は日本、そしてバシラシビリと対戦するのは 西岡良仁だ。バシラシビリの肘の具合は気がかりだが、両者が持ち味を発揮する好試合に期待したい。
文/山口奈緒美