ATPが主催する国別対抗戦『ATPカップ』は大会3日目。グループラウンドの2戦目が行なわれ、パース会場のグループDでは、ノルウェーから金星を得て勢いに乗るウルグアイと、ロシアに敗れてもう負けられないイタリアが対戦した。第1試合で世界ランク84位のステファノ・トラバグリア(イタリア)が332位のヴィクトル・ドゥラソビッチ(ノルウェー)に6-1 6-1で快勝し、第2試合は54位のキャスパー・ルードが12位のファビオ・フォニーニを6-2 6-2で撃破。勝負の行方はダブルスにかかった。
初戦はシングルス2試合でチームの負けが決まったために、予定していたダブルスはベンチからサポートしたフォニーニだが、勝負がかかれば別だ。2015年の全豪オープンを制したシモーネ・ボレッリとのペアで必勝を期して臨んだ。24カ国の出場者の中にはダブルスでのグランドスラム優勝経験者が少なくないが、チームに優勝ペアとして存在する国はドイツとこのイタリアだけだ。
誰と並んでもアニキ面のフォニーニだが、年齢はボレッリのほうが2つ上の34歳。気性が粗く暴走しがちなフォニーニの隣で、おとなしそうなボレッリが実はうまく手綱を操っている。両者サービスキープで迎えた第1セット第8ゲームのルードのサービスゲームで、ファン待望のフォニーニ劇場が不意に開幕。リターンをミスしてラケットを地面に叩きつけたかと思うと、次は目の前にこぼれてきたボールをスタンド高くに打ち込み、警告を受けた。これで火がついた闘志の矛先は、ネットのすぐ向こう側にいたドゥラソビッチだ。その体目がけてフォアの猛烈アタックでポイントを奪うと、これが効いたのか、次のポイントではフォニーニのフォアはドゥラソビッチの脇をすり抜けた。最後はルードのミスを引き出してブレークに成功。第2セットはタイブレークを制し、6-3 7-6(3)でイタリアの勝利を決めた。
試合後、肩で風切ってインタビュアーのもとへ向かったフォニーニだが、先月2人目の子供が生まれたことついていきなり聞かれ、「何の話?」と気取りながらも「もちろん大きな出来事だし、感動的だった」とニヤリ。試合については「疲れていたし、あまり力も残っていなかったけど、負けられない試合だった。なんとか望みをつなげてよかったよ」と話した。一方、「ファビオと組めば僕はいつも自信を感じるんだ。お互いをよく知っているから、ちゃんと戦術がある」とボレッリ。頼もしいイタリアの切り札だ。
文/山口奈緒美