フェミニズム論争が活発化した2019年、“ツイフェミ”を乗り越え建設的な議論をするには?
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 「女性が職場でヒールやパンプスを履く事を強制されるのはパワハラに当たる」と訴えるキャンペーンで新語・流行語大賞にもノミネートされた「#KuToo」。さらに週刊誌の「ヤレる女子大生ランキング特集」、女子ハンドボール大会のPRコピー「ハードプレイがお好きなあなたに」、献血PRポスター「宇崎ちゃんは遊びたい!」、NHKノーベル賞解説の「キズナアイ起用」、少年ジャンプに「フェミ漫画を!」など、2019年、Twitter上で“フェミニズム”と関連付けられて大きな論争になった問題は枚挙に暇がない。

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 もともとフェミニズムが意味するのは「女性の社会的・政治的・法律的な自己決定権を主張。性差別からの解放と両性の平等を目指す思想」。しかしTwitterを中心にフェミニズム論を戦わせるツイッター・フェミニズム。いわゆる「ツイフェミ」。Twitter上では、激しい論争が繰り広げられており、冷静で建設的な議論の場を作ろうとしてきたAbemaTV『AbemaPrime』にも、「フェミニストは男女平等じゃなくて女尊男卑を目指しているからアンチが生まれるのではないか」「フェミ問題の大部分は本人が対話しないことだろ」などの厳しい意見が寄せられている。

 街で聞いてみても、「女の人がもっと立場上げようみたいな感じですよね」「飛躍したこと言ったりしてるんですよ。自分のことしか言わない人たちって印象しかない」、さらには感情的な意見の応酬に触れてしまった結果、「“髪切ったよね”ってだけでセクハラとか恐ろしくて。極力かかわらないのが大正解じゃないか。過剰な人が減ってほしい」「(男性は)肩身せまいけど、それを言うとまたさらに来るでしょ?女性の方が上乗せして。思ってるけど言わないんですよ」と、議論自体を避けようと人たちも少なくないようだ。

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 ネット論客の青識亜論氏はフェミニズムをめぐるTwitter上の議論について「ネガティブなところとしては、ツイフェミの皆さんが差別やハラスメントの告発などの否定しづらい“正義”の問題に安直に接合していきがちで、感情的になりがちなところ。Twitterがリミッターを外してしまい、いくらでも相手を殴っていいみたいに感じてしまう役割をはたしてしまっているのではないか。一方でポジティブなところとしては、女性にとっての素直な感情をはっきりと書け、議論ができる場所だということ。学者やメディアの方とも平場で話ができるので、良いところを引き出していければ、すごく有効なツールになるのではないかという希望もある。そもそも大手メディアが独占していた言論の場を民主化してくれた役割は非常に大きい。私みたいなネット論客はTwitterがなければ出てくることはできなかったし、そこが入口になり、このように議論しようとなった。だから次の発展に向けた入口みたいな役割を果たしているところはある」と話す。

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 武蔵大学の千田有紀氏教授は「キズナアイの問題に関しては、私も当事者だ。実際には言ってないことがフェイクニュースメディアで拡散されてしまい、裁判係争中だ。そういう点でTwitterでの議論は難しさがあると思っている。問題とされた私の書いた記事がTwitterでものすごく拡散して、ものすごく燃えたが、実は記事そのものは全然読まれていなかった。つまり、“こういうこと言ってんだろ!”と、言ってもないことでTwitterが爆発したということだ。やはり140字だけで文脈を切り取ってしまうし、一度ワーッと拡散してしまうと、後でいくら“違う”と言ってもかき消されてしまう。そういう意味では、議論するメディアとしては難しいと思っている」と自身の経験を元に語った。

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 現代美術作家で文筆家の柴田英里氏は「議論を加速させているという意味では、ハフポストみたいなメディアも同じだ。Twitterで拡散されると議論ができないという構造を分かっているにも関わらず、これは正しい、これは間違っているという結論ありきだったり、複雑な現実を単純化して伝わりやすい形で流してしまっている」と指摘。

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 これを受けたハフポスト日本版副編集長の泉谷由梨子氏も「ハフポストもSNS、Twitter等でたくさん読まれているメディアではあるが、やはりコメントを見ていると、明らかに中身を読んでいないと思われるものが非常に多い。メディアが燃料を投下しているように思われるかもしれないが、それはものすごくバズったところだけをご覧になっている方が多いからで、普段は本当に地道に日々のニュースを実直にやっているつもりだ。ただ、SNS上の議論については私たちも夢を見ていた部分があった。さすがにSNS上だけの議論には限界を感じているので、ハフポストブックスという本を出したり、番組を作ったり、イベントをたくさんやったり、いろんな伝え方を研究しているところだ。全部成功したとはなかなか言えないかもしれないが、徐々にメディアはそういう方向にシフトしていかなければいけない」と訴えた。

 他方、泉谷氏は「フェミニズムでは今、男性学の先生方がすごく熱い」と指摘。千田氏も「最近、一番面白いと思うのは男性学だ。今までの男性学はフェミニズムのネガと言うか、“女の人も悪いことをやっていた”か“自分たちも抑圧されている”のどちらかだった。それに対して、自分たちの男性性がどういう時に自分たちを縛ってしまうのかなど、理論的な展開が出てきている。フェミニズムは、20年くらい新しいパラダイムがないと思っているが、男性学はこれからいけるのではないかとすごく思う」と期待を寄せる。

 青識氏も男性の立場から、「私が発言し、討論しようと言っても、女性の専門家にはなかなか乗ってきてもらえないところもある。ここも不思議な溝があって、それをいかに埋めていくかがこれからTwitterでの議論を建設的にする1つのポイントだと思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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