ATP(男子プロテニス協会)が主催する国別対抗戦『ATPカップ』は大会4日目を終え、グループラウンドの2戦目が行なわれた。パース会場のグループBで戦う日本はジョージアと対戦。添田豪の逆転勝ちで先勝し、西岡良仁が世界ランク26位のニコロズ・バシラシビリを破って日本が勝利をおさめた。
西岡良仁の勢いが止まらない。ウルグアイとの初戦で世界ランク45位のパブロ・クエバスを6-0 6-1と封じ込めた24歳は、さらに上の世界ランク26位も粉砕した。機械のようにミスなく、かつ頭を使って変化を交えつつ、170cmの小さな体さえ武器にして相手を惑わす。昨年は自己最高の16位に達したバシラシビリも、序盤からその魔術にかかったように第2ゲームをいきなりブレークされると、その後もミスを量産した。まさかのタイミングでサーブ・アンド・ボレーを試みたり、突如クイックサーブでタイミングをはずしたりと、持てるアイデアとテクニックを随所で実行する西岡。第1セットを6-2で奪った。
第2セットは苦しい展開ではあったが、勝負どころで強かった。第3ゲームで先にブレークを許したが、すぐにブレークバック。第7ゲームでは3回ブレークポイントを握られながらもキープに成功し、意気消沈したバシラシビリから次のゲームをラブゲームでブレークする。一気に勝利へ加速した。
試合後のコートで、インタビュアーから「私自身も含め、多くの人があなたのプレーを楽しんでいますよ」と言われると、「とてもうれしいです。勝つことはもちろん大切ですが、それと同時に、僕は見ている人たちに楽しんでもらえるようなテニスがしたいと思っているので」と笑顔が弾けた。
なお、日本はこのATPカップにおける国別ランキングで7位だが、これはエントリー時の錦織圭のランキングをもとにしたものだ。錦織が欠場となった今、事実上日本は出場チームの中で最下位ということになる。西岡のランキングは73位で、24カ国中のどの国のエースよりも下だからだ。しかしその西岡のジャイアントキラー・パワーが炸裂し、日本チームの快進撃を生んでいる。
昨年11月、今回と同様に錦織不在だったデビスカップにエースとして出場した西岡は、グループリーグのフランス戦で世界ランク10位のガエル・モンフィスを破った。8月には錦織にも勝っており、トップ10からの2勝で得た自信は大きい。次の相手はスペイン。西岡が挑むのは王者ラファエル・ナダルだ。
「勝つために、自分がやらなければいけないことはわかっている」
怖じ気づくなどという言葉は、西岡の辞書にはない。
文/山口奈緒美