日産前会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンに逃亡した事件で、ゴーン被告が東京の住宅を出た後の詳細な足取りがわかった。10人以上の多国籍チームが協力したとみられている。
防犯カメラの映像をたどる「リレー方式」という捜査では、ゴーン被告が先月29日の午後2時半ごろに東京・港区の住宅を出たことがわかった。ゴーン被告はその後、住宅から約1km離れたホテルで外国人2人と合流。ホテルからタクシーで品川駅に向かい、午後5時前の新幹線に乗り新大阪駅で降りたという。新大阪で降りた後はアメリカ人2人と関西空港近くのホテルに入り、1時間後にアメリカ人2人が大きな黒い箱を押して出てきたが、その際ゴーンの姿はなかった。その日の深夜、関西空港からプライベートジェットで出国したとみられている。
逃亡の手口が明らかになる中、米ウォール・ストリート・ジャーナルが計画の背後には「あるチームの存在があった」と報じている。多国籍の人物からなるこのチームは20回以上来日し、10カ所以上の空港を下見していた。その結果、関西空港のプライベートジェット用のターミナルは、フライトがない場合は人気がないうえ、検査機器が大型荷物に対応していないなど警備上の穴を発見していたということだ。
逃亡に使われたプライベートジェットの登場者名簿にはアメリカ人2人の名前が記されていた。経由地となったトルコの警察幹部は、2人とゴーン被告は機体を乗り換える際に別れ、別々にレバノンの首都・ベイルートに向かったと話している。
アメリカ人2人のうち1人はレバノンの出身で、アメリカでは民間軍事会社に所属し、イラクやアフガニスタンで勤務していたという。しかし、その人物の兄によると、ゴーン被告と同じころにベイルートに戻ってきたということだ。「電話をかけたがつながらなかった」と兄。
また、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏によると、ゴーン被告と一緒に日本から出国したとされる人物は、かつてアメリカ陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」に所属していた。40年前、グリーンベレーとして内戦中のベイルートに入り、レバノンの兵士を教育し現地の女性と結婚。アラビア語が流暢だという。
そして、退役後、民間の警備会社を経営し、人質案件でFBIや米国務省と仕事をしたこともあったという。しかし2000年代後半、同社でアフガン駐留米軍の訓練を請け負っていた際、巨額の水増し請求を行っていたことが発覚し、2012年に逮捕。それ以降、米軍からの仕事を失ったとみられる。
若者の失業率が約40%とされるレバノンでは、一部のエリートが富を独占し、政治の腐敗や汚職を引き起こしているとの批判が強まっている。レベノンで“最も成功したビジネスマン”として英雄視されていたゴーン被告だが、今回の計画をめぐり多額の金を出費したとも伝えられており、「私にとって彼はレバノン政府と同様に腐敗した人物です」といった声があがるなど“汚職の当事者”とみなされ始めている。
ゴーン被告は日本時間8日の夜に会見を開く予定で、そこで何が語られるかに注目が集まっている。BuzzFeed Japan記者の神庭亮介氏は「恐らくゴーン被告は自分を悲劇のヒーローとして打ち出したいのではないか。日本の人質司法は、長期に渡って勾留して自白を引き出して有罪にするシステムで、私も確かに問題があると思っている。しかし、だからと言って海外逃亡は許されない。彼を信じ、保釈を勝ち取った弁護人に対する背信行為でもある。ゴーン被告は決してヒーローではない」と苦言を呈する。
一方、ゴーン被告の逃亡によって日本のセキュリティのずさんさが露呈したと指摘。「楽器のケースに入っていればX線検査をしなくていいのか。『金持ち検査せず』で、今までも好き放題できていたのかと思ってしまう。今年はオリンピックでいろいろな人の行き来があるので、セキュリティのチェックなどを含めてより厳格にやってほしい」と訴えた。
また、日本の司法制度を批判したゴーン被告については、「彼が好き勝手振る舞ったことによって、逆に検察は『それみたことか』『もっと厳格化しなければだめだ』とさらに人質司法へ傾いていく可能性がある。国際社会は会見をどう受け止めるのか。『外圧』が日本の司法制度へもたらす影響も含めて注視していきたい」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶映像:ゴーン被告が乗っていたとみられるプライベートジェット
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