「ドスッ」鋭いバックブローがアゴをとらえると、後楽園ホールに鈍い音が響いた。
25日に後楽園ホールで行われた「Krush110」。川崎真一朗(月心会ラスカルジム)との一戦に臨んだ東本央貴(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)が、1R 2分50秒、不意に放った渾身の一撃で勝負を決めた。
KrushからK-1への定着を狙う川崎。3連勝から臨んだ昨年8月のK-1大阪大会では篠原悠人を相手にダウンを奪いながら勝ちきれず判定負けを喫し、Krushでの5カ月ぶりとなる再起戦を迎えた。
一方、この1年で泥沼4連敗を喫している東本央貴に用意されたのが、18年12月に川崎に判定負けをして以来となるリベンジ・マッチだ。
1R、東本が奥足へのローとミドルを軸に試合を作る。得意の左のストレートだけでない変化を感じさせる序盤の入りだ。対する川崎もカウンターから強い左右を当て攻勢をかける。リーチに勝る川崎が制空権を握るが、東本も冷静に距離を測りながら新兵器・奥足ローを的確に当てる。
幕切れは劇的だった。前に詰める川崎が下がりながら左ストレートを出した次の瞬間、東本が左の高速バックハンドブローを打ち込むと「ドスっ」という鈍い音と共に川崎がマットに沈んだ。
1ラウンド終了残り10秒、なんとか立ち上がった川崎だが、足元はおぼつかない。試合続行不可能と判断したレフェリーがゴングを要求した。
あまりにも強烈なバックハンドブローに解説陣から「(川崎選手は)立ち上がるの早かったのかな、もう少しカウントを待ってから立てば」と残り時間の短さを生かせなかったことを惜しむ声も聞かれたが、解説を務めたK-1ライト級王者の林健太は「(川崎選手は)何で?と今は思うだろうけど、映像を見直したらフラついてるので、止られても仕方がないと思う」と、東本の一撃の威力について冷静に伝えた。
スロー映像を振り返ると、東本が一瞬スイッチを見せて回りながら放った左のバックハンドブローだったことも確認。まさに「技あり」の一発KOで悪夢の4連敗からの脱出を果たした。
試合後、東本は「ああ……久しぶりに勝てました」と実に1年3カ月ぶりの勝利を噛みしめながら「やっとトンネルを抜けた感じで、でもあれはマグレなんで……」と謙虚に振り返ると近況報告も。
「あの試合の事とは関係ないんですけど、先月12月21日にハンバーガー屋をオープンして店長をさせてもらってます。町田にあるショーグン バーガー 町田店というハンバーガー屋の店長です。この場を借りて宣伝させてもらいます。ぜひ来てください!」
笑顔でアピールすると、場内からは拍手が沸き起こった。
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