宿の無断キャンセルで“捕まった”親子、被害総額300万でも“お咎めなし”の男性 弁護士が語る「刑事事件のカベ」
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 今月23日、宿泊予約サイトを通じて高級ホテルに虚偽の予約を入れ、コンビニなどで使えるTポイントを不正に入手したとして51歳の女とその息子(30)が私電磁的記録不正作出・同供用と偽計業務妨害の疑いで京都府警に逮捕・送検された。

 親子は去年8月にインターネットのホテル予約サイト「一休.com」を通じて京都市内の4つのホテルに偽名で宿泊予約を入れた後、無断でキャンセル。ホテルの業務などを妨害した疑いが持たれている。親子は去年2月から10月にかけ、全国のホテルで虚偽の宿泊予約を2215回繰り返しており、およそ190万円分のTポイントを不正に得ていた。

 一方、栃木県の那須塩原や鬼怒川温泉にある高級旅館で、正月のかき入れ時に同時に8件の旅館で無断キャンセルが発生。総額300万円に上る被害に遭っていたことが明らかになっている。

 そのうちの一つ、個室露天風呂完備の部屋で無断キャンセルの被害に遭った西那須野温泉「大鷹の湯」の専務取締役である飯沼鷹佑さんは「1月2日の御一泊10名様で露天風呂付の部屋でご指定いただきまして、すべて合わせると29万円くらい」と被害額を明かした。例年、年末年始の予約は秋ごろに埋まってしまうことが多いというが、無断キャンセルを受けた1月2日には、誰も宿泊客が居なかったという。さらに飯沼さんは「8月の時点で予約が入っていた。それ以降はお断りしていたので、何十件か、何百件なのかはわからないが悪質だ」と頭を抱えた。

 また同様の被害に遭った創業130年の歴史を持つ那須塩原温泉郷の「湯守 田中屋」の専務取締役である田中佑治さんは、最上階にある個室露天風呂付の最もグレードが高い部屋で無断キャンセルを受け、被害総額が36万円に上ったことを明かした。田中さんは「通常通り来るものだと思っていたので、食材の準備からお客様を迎える準備を進めていた。かなり悔しい。ショックだ」と胸中を吐露した。

 その後、無断キャンセルをした男性の関係者が謝罪に訪れたことも明かした田中さんは「オーナーとみられる方が来て、予約を行っていたのが会社のアルバイト従業員であったことを聞かされた。その上で予約を任せてしまっていたところもあり、責任は少なからずあると思っていると謝罪を受けた」ことなどを説明した。その際、予約をした男性の上司らはキャンセル漏れがあったことは把握していなかったと主張したそうだ。

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■「ただの凡ミスでした」では済まされない

 事の発端は、会社の上司がアルバイト男性に正月の社員旅行の宿泊先予約を依頼。「個室露天風呂付きの高級旅館10人分」を指定したことで、条件に合う宿の確保を優先させた男性が8つの高級旅館の予約を同時に行った一方、宿泊不要となった宿のキャンセルを失念していた可能性が考えられる。

 しかし、被害総額は300万円を超える。それでも罪に問われていない男性と逮捕された京都の親子の違いは、一体どこにあるのだろうか。飲食店専門弁護士の石崎冬貴さんは次のように説明する。

「よほど悪質なケースでない限り刑事事件にするのは難しい。今回の場合は無断キャンセルなので当然、当日かかっている部屋代については満額請求できる。ただ刑事事件にするとなるとだいぶハードルは高くなる。キャンセルというのは最初から全く行くつもりがないかどうかわからない。間違いなく行く気がないのに予約をしただろうと捜査機関として立証できるのであれば刑事事件として進めていくこともあると思う」

 その一方、石崎さんは旅館側が事前にとれる対策として「ある程度前金でデポジットでもらっておく。また欧米では一般的だが、クレジットカードを押さえておくのが基本。キャンセル料も勝手に引き落とす対策が可能になる」などとアドバイスをした。

 8つの高級旅館で10人分の予約をとって、うち1つに宿泊。残り7軒を無断キャンセルして総額300万円相当の被害を発生させた男性は予約時にパンフレットを取り寄せるなどして前向きな検討を行っており、何よりも実際にそのうちの一つの旅館に宿泊をしている。つまり「泊まる気があった」と考えられることから、前者、京都府の親子の件とは異なり刑事事件としての立件は難しい。とはいえ、故意ではなくとも、ただの凡ミスで済まされては旅館側も納得できない。この件に関して千原ジュニアは「まずはパンフレットだけ取り寄せて、そこから予約をすればよかった」と話した。(AbemaTV/『Abema的ニュースショー』)

【映像】「凡ミスでは済まされない」旅館も憤り

旅館の無断キャンセル、逮捕とお咎めなしの境界線は? | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
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