舞妓パパラッチ、警察沙汰…「観光公害」に困惑、立入禁止を決めた寺も “観光立国”に向けて何をすればいい?
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 20人近くの外国人観光客に取り囲まれ、困惑する舞妓さん。一斉にカメラのフラッシュが焚かれ、中にはタクシーに乗り込むところまで追いかける人も。祇園南側地区まちづくり協議会の太田磯一氏は「着物を引っ張って破いたり、襟元にタバコの吸い殻を入れたりするなど、本当にひどい被害もあった。刑事事件になったこともある」と話す。

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 さらには建物への無断侵入、提灯などの盗難、柵を破壊されるなど、近隣住民に被害も出ているため、地区では昨年12月から私道における撮影禁止の看板を設置した。ただ、外国人観光客からは「よく見ないと気付かない」「全ての道路で撮ってはいけないのか。住宅とか、その他の所でダメなのかが分からない」と話す。「みなさん、ここ自体が観光地とおっしゃるが、人が住んでいる町、お店屋さんをしている商業地なので、来られるだけ迷惑というのが地元の意識だ」(太田氏)。

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 富士山麓の忍野八海(山梨県)でも、世界遺産の一部になったことで観光客が増加、今では来訪者の9割が外国人になった。目立つのが、池に小銭を投げ入れる行為だ。ボランティアで小銭の回収を行うダイバーの坂本新氏は「水草が圧倒的に減っている。潜ると分かるが、水が少し汚くなっている感じが見受けられる」と嘆く。

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 普段から外国人観光客の多い東京・新宿にあるゴールデン街では、ラグビーワールドカップ期間中、かつてないほどの外国人が殺到。荒れに荒れ、混雑に乗じた置き引き、ケンカも急増、機動隊が出動する事態になってしまったという。新宿ゴールデン街商業組合の外波山文明理事長は「木造建築の街なので、タバコが怖い。それなのにタバコをポイ捨てしたり。常連さんが入れなくなってしまった。馴染みさんと一緒に外国の方も楽しんで、ゴールデン街らしさを楽しんでもらえば嬉しいので、そういう受け入れ方をしたい」と語った。

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 このような、外国人観光客が急増したことによるトラブルは「観光公害」と呼ばれている。

 東洋文化研究者のアレックス・カー氏は「決して日本ばかりではなく、世界中で起きていて、バルセロナ、ヴェニス、マドリード、アムステルダムなども困っている問題だ。やはり数十年で世界が豊かになり、貧乏だった旧ソ連、アフリカ、東南アジア、中国の人たちもお金を持つようになった。そしてLCCもでき、ビザも取りやすくなり、みんなが国境を超えやすくなった」と話す。

 日本人もまた、「インスタ映えを狙い、タイの寺院が日本人だらけに。参拝者などの周りで大騒ぎしながら撮影」「イタリアの大聖堂で日本人の落書きが多発」などの問題行動を起こしているのが実態だ。そして、「アメリカ:トイレのドアノック禁止。早く出ていけという意味にとらえられる」「シンガポール:ガムを持っていると罰金」「タイ:子供の頭を触ってはいけない。子供の頭は神聖な場所とされている」「韓国:正座してはいけない。罪人が取るポーズなので縁起も悪くタブー」「ギリシャ:ピースサインはNG。くたばれというネガティブな意味」「中国:時計をプレゼントするのは厳禁。時計を贈る“送鐘(ソンゾン)”が死を意味する“送終(ソンゾン)”と同じ発音になる」「中国:パートナーの女性を褒めるのは禁止。褒める=その女性を狙っている」など、教えられなければ分からない他国のマナーも数多い。

 カー氏は「祇園には日本人のパパラッチがいたこともある。忍野八海では、日本人もコインを投げている。日本人もマナー講義を受けないといけないと思う」と指摘。ギャルユニット『Black Diamond』リーダーで山梨出身のあおちゃんぺは「忍野八海は“コインを入れてもいい”というイメージが付いているので、地元の人も投げ入れてしまっている。投げていい池を別に用意するのではないのでは」と話す。

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 そんな中、「外国人団体客の立ち入り禁止」という策に踏み切ったのが、福岡県にある南蔵院だ。境内にある全長41mの釈迦涅槃像はブロンズ像では世界最大で、年間130万人以上の参拝者がいる。住職が宝くじの高額当選者(1億3000万円)ということもあり、宝くじのパワースポットとしても知られる。そうしたことから、10年前ほどからクルーズ船で寄港した外国人観光客がバスで押し寄せるようになり、大音量で音楽を鳴らし動画撮影、屋根に上って写真撮影、修行の滝で水遊び、境内で飲酒、像の足の裏にガムをつけるといった行為が見られるようになったという。

 副住職の林覚竜氏は「うちは山門がなく拝観料を頂いていない。賽銭もほぼ入れられない。トイレ休憩も兼ねていたようだ。日本の方もそうだが、集団になると気が大きくなり、歯止めが効かなくなる。ガイドさんは先頭を歩くので、離れた人が大声になっていたり、注意を聞かなくなっていく」と話す。そして、ためらいながら「韓国と中国からの観光客に多い」と明かし、「中国からの方はお断り、韓国からの方はお断りというふうにしてしまうと、それこそ外国の方を差別してしまうことになる。相当悩んだが、やむを得なかった。申し訳ないが、日本人の団体の方とは区別をさせてもらうということにした」と説明した。

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 「国の政策として(観光立国が)言われているのは分かるが、来てもらうだけで後は現場に丸投げだ。“日本に来てください。どうぞ色々な所に行ってください”で、来た所がどう対応すればいいのかまでは見てくれないので、こういうことが出てきていると思う」(林氏)。

 また、「注意書きの看板(12カ国語)」「バスツアーを主催する旅行会社に受け入れ停止を通知」「県や町の観光サイトから情報削除を要請」といった策を講じてきたとし、「うちもお願い文をガイドさんに渡したり、業者さんにもお願いしたりしたが、一向に改善されない。“こんなこと書いたって誰も言うこと聞かないよ”とガイドさんに言われたこともあった。参拝目的を事前申請していただき、ルール違反があった場合は即刻退去して頂くというような形も考えているが、今のところ再開は全く考えていない」と話した。

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 訪日外国人は年々増えており、2019年には3188万人、消費額は4兆8113億円に達した。東京オリンピック・パラリンピックを半年後に控え、今年は4000万人を見込み、国は「2030年に6000万人」を掲げる。

 カー氏は「国が悪いとか、なんでそんなに促進しているのかと言っても関係ない。ほっといても来る。ヨーロッパもそうなっている。これからは受け方の問題、管理の問題だ。たとえばヴェニスでは橋に座って食事をした場合、500ユーロ(6万円)の罰金を課すことにしたら、その次の日からやる人がいなくなった。日本は行儀がいいから、看板1つあればみんなやってくれるだろうと思うけど、そうではない。日本はペナルティがまだ甘い」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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