衆院本会議での国民民主党の玉木雄一郎代表の質問中に議場に響いた、杉田水脈議員によるものと見られるヤジ。不規則発言はこれまでも度々問題になってきたが、“議場の華”とも言われ、無くなる気配は一向に見られない。さらに衆院予算委員会での“桜を見る会”に関連する質疑で飛び出した安倍総理の「嘘つき」発言など、国会でのやりとりに有権者からの批判も高まっている。
国際政治学者の舛添要一氏は「とにかく演壇に立てば誰が発したかが分かるし、周りの人も絶対に分かる。それなのに箝口令を敷いて言わせないというのはどうなのか。そして、発言責任は全て本人あるので、逃げるべきではない。また、委員会は丁々発止でやりとりする場だし、本来は本会議場で飛ばすべき。そして、政府側が言うことでもない」と指摘する。
その一方、舛添氏は東京都知事時代、「こういうヤジが良いという例というのはないけども、“あっ、よくぞそれを言ったな”というようなヤジというのは、国会議員の時には結構あった」とも話していた。
自身が初めてヤジを飛ばしたのは、参院議員時代。「政審会長の時、憲法改正しようとしない野党に対して本会議場で無茶苦茶大きな声でヤジった。あとから“政審会長からはあまり言わないでください”と言われた(笑)。国会に比べれば、都議会の方がはるかに楽だった。都知事の答弁は一言一句書かれていて、それが面白くないからアドリブを入れたらブーイングが起こった。“それを読んだら終わりなのに、お前が喋りすぎて長くなったぞ”と。都議会はこんなに偉くなったのかと思った」と振り返る。
逆に自身がヤジられたのは、厚生労働大臣在任中。「“年金は大丈夫です”と言ったら“何が大丈夫だ”と。確かに大丈夫ではなかったので一生懸命やった。ヤジに対して“ちゃんとやるぞ”ということを示さないといけなかった。戦前の国会では、ヤジで物事が動いたこともある。やはり、いいヤジはどんどん飛ばしてほしい。しかし今はSNSがあるので、そっちでチクった方が早い、という感じになってしまっている。だからヤジ、言葉の力がなくなったような気がしないでもない」。
その上で舛添氏は「国会でも党によりけりだが、自民党では部会の中で激しい“ヤジり合い”のようなことをやるが、それをそのまま国会の本会議場に持ってきたような感じがしないでもない。やはり小選挙区制がよくないのではないか。中選挙区制で派閥がちゃんとしていた頃、先輩議員が“そういうヤジはダメだよ。言うならこうしろ”と教えていた。今は“みんなでヤジり倒せ”みたいなことを言ったり、逆に“総理がいるときには皆で手を叩け”と、全体主義のようになってしまっている。だから面白くもない。私は参議院議員時代に先輩に“なんのために参議院があるんだ、野党よりもっと厳しく政府を追及しろ”と言われた。しかも私が大臣をやっていた頃は“ねじれ国会”で、参議院は野党が強かった。今みたいに安倍一強だと、ヤジも飛ばせないし。アメリカ連邦議会の一般教書演説でもトランプが国を分断するようなことを言い、ペロシさんが原稿を破る、ああいう風潮になってしまうと、温かいヤジは無くなる気がする」と指摘した。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「昔の地方議会の本会議はいわば“儀式”で、誰も発言せず、裏の根回しで終わっていたところがある。その意味では国会がヤジも交えて丁々発止のやりとりをするのも悪くはなかった。ただ、そこも55年体制の下では自民党と社会党の国対同士が手を握っていて、落としどころも踏まえた枠組み中でヤジを飛ばし、議論するという、芝居的なところもあったと思う。それが今は折り合い、調整ではなく党派闘争剥き出しになり、Twitter上の罵り合いがそのまま持ち込まれているようになっていて、行き過ぎだと感じる」とコメント。
慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「SNS上で野党が色々な意見を言える今、国会の形も変わるべきかも知れない。しかし、国会では最終的に多数派の意見が通る。だからこそ採用はされないけれども、“こういう意見もあるんだ”ということを発して記憶に残さないと、議場が多数派の声だけになってしまう。その意味では、“黙っときなさい”と言っていいのか、難しい」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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