新型コロナウィルスの感染が拡大する中国。一方、内モンゴル自治区の村で撮影された、ドローンが人々に屋内に入るよう警告している映像が話題を呼ぶなど、同国のIT技術が著しい進化を遂げている様子も見え隠れしている。
振り返ってみれば、1999年創業のEC最大手アリババが急成長したきっかけは、2003年に猛威を振るったSARSだった。人から人への感染が確認され、外出への危機意識が高まったことで、同社の利用者が急増加したのだ。今回もIT各社がリモートワークのためのビデオ会議システムを無償提供、今月3日にはアリババ傘下の「ディントーク」の利用者が約2億人/日に達している。
中国のデジタル事情に詳しい中国ITジャーナリストの滝沢頼子氏は「IT企業にとってアピールのチャンスになっていると思う。生活面でも、TikTokなどは皆が外に出ないよう映画の権利を買い取って無料で公開するなどしている。子どもたちも、TikTokのほか、“快手”のような動画系のアプリを良く見ている」と話す。
こうした動きは教育面でも進んでおり、上海の教育委員会はeラーニングの一環として電子テキストを配布している。「オンライン教育自体は中国で普及していたが、上海では2月中は休校になったということで、公教育で電子テキストの配布が決定されたのが注目されるところだ。“快手”も教育系の企業とコラボし、無料で勉強系コンテンツの提供を始めている」(滝沢氏)。
それだけではない。中国の病院ではロボットが導入されており、「病院にスマートロボット:医薬品や食事の配達、ゴミの回収。医療従事者と患者の接触を減らし、院内感染を防止」「体温測定ロボット:駅などの公共空間で、発熱している人やマスクを着けていない人に警告。パトロールの負担を軽減」などの事例がある。今回、感染源となった武漢に10日で建設された病院でも、5Gを使った遠隔医療を取り入れられ、オンライン問診サービスも始まっているという。
元外務省医務官の勝田吉彰・関西福祉大学教授は「非常に広い国土に人がまばらに住んでいる中国では、昔から遠隔医療が考えられていた。私は2003年ごろ、北京郊外にある精神科の病院で、ゴビ砂漠の向こうにある新疆ウイグル自治区を結んでカウンセリングをしていた。今から見れば旧式の機器ではあったが、すでにそういった素地があったということだ。今では無料オンライン問診は結構行われているし、どの地域でどのくらい感染者が出て、そのうち何人が死亡、何人が治癒した、といった情報が情報も共有されている。日本に比べて、電子カルテを一元化するといったことも進めやすいと思う」と話す。
さらに「看護ロボットがあれば、感染症の飛沫が飛んでいるところに物を届けるといったことができるし、武漢に新しくできた病院には無人コンビニがある。省人化、コスト削減という文脈で語られていたものが、人と人との接触を最低限にするという理由で活用されていて、かなり意義があると思う。やはり医療は規制産業なので、何かをしようとすると、様々な規制にぶつかる。平時だと手続き、許可がなかなか進まないところが、こういう非常事態が起こったことで、進みやすくなるのだろう。戦争が起こると科学が飛躍的に進化するといわれるが、新型コロナウイルス対策について、中国では“これは戦争だ”という言い方をされているので、まさにそうなのだろう」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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