「思い出がたくさん詰まった川原の自然や風景が私は大好きです。故郷・川原が奪われるのは絶対に嫌です」。家族との何気ない日常やふるさとを愛する気持ちは水の底に沈んでしまうのか。ダムの里に生まれた女子高校生を追った。
 長崎県川棚町の川原(こうばる)地区。集落を流れる石木川は清流として知られ、夏はホタルが飛び交う自然豊かな里山だが、半世紀にわたり人々が闘い続けてきた「石木ダム」の建設予定地でもある。
 ダム建設を国が認可したのは1975年のこと。目的は隣の佐世保市の水不足解消、そして下流の洪水対策だ。近年、日本列島を襲う大規模災害によって、ダムの役割に改めて注目が集まっている。長崎県も石木ダム建設の理由に、100年に一度の大雨による洪水を防ぐことを挙げている。