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(レスリングの地力に加え荒々しいファイトが持ち味の杉浦)

 昨年、プロレスリング・ノアはGHCナショナル王座を新設した。体重無差別、ノアの国内大会でのみタイトルマッチが組まれる新機軸で、シングル戦線の活性化が目的となる。初代王者となったのはノアでトップの一角をなす杉浦貴だ。今年50歳になるが衰えはまったく感じさせない。むしろ今がピークと思えるほどだ。11月の両国国技館大会、初代チャンピオン決定戦ではマイケル・エルガンに勝利している。

 自衛隊体育学校出身。レスリングでオリンピックまであと一歩という活躍を見せると29歳でプロレスの道に進んだ。ジュニアヘビー級から始まってGHCの5王座すべてを獲得。PRIDEに参戦したことを覚えているファンも多いはずだ。

 コーナーでのエルボー、エプロンから場外に投げる俵返し(サイドスープレックス)など一直線かつド迫力の攻撃が持ち味。キャリアを重ねたが“巧さ”よりも“タフさ”で勝負する。無駄な脂肪のない体を見れば、フィジカルの強靭さが誰の目にも伝わる。

 昨年、ノアが新体制になると、反体制の拳王に対し「ノアのプロレスを広めるためなら、俺は会社の犬になる」と語り、その“大人の熱さ”がファンに支持された。ちなみに杉浦は実際に愛犬家でもあり、飼っている犬をモチーフにした“会社の犬”グッズもヒットしている。必殺技「オリンピック予選スラム」もそうだが、無骨な闘いとキャラクターの中に一ひねりきかせてくるあたりも杉浦の魅力だ。

 ナショナル王座の2度目の防衛戦は、2月24日の名古屋大会に決まった。挑戦者は前GHCヘビー級王者の清宮海斗。2.16後楽園ホール大会では、前哨戦として杉浦&藤田和之vs潮崎豪&清宮のタッグマッチが行なわれる。

 清宮は新時代を担うエースとしてナショナル王座の可能性を自分の手で高めたいところ。杉浦が強いからこそ、勝って「新しい景色に吸収したい」と言う。“新しい景色”とは、清宮が掲げているノア新時代のスローガンだ。

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(挑戦表明した清宮と対峙)

 挑戦表明を受け、杉浦は「アイツしかいないだろう」。しかし“新しい景色”に取り込まれるつもりはまったくない。

「俺はこの20年、ノアですべての景色を見てきたんだ。いい景色も悪い景色も、見たくない景色も。俺だってまだ時代も景色も変えてない。くすぶってんだ。今年50で。プロレスやってよかったって思いたいんだ」

 1.4後楽園大会で初防衛に成功した後には「誰にも負けたくない。ノアの選手にも、隣のドームでやってる団体にも」と口にしている。本人も言うように今年50歳。しかしその胸中は最前線で闘う人間としての上昇志向と危機感でいっぱいだ。

 清宮は今年24歳だから、年齢差は実に26。清宮の母と杉浦が同い年だという。だがそれでも、2人はライバルと言っていい。一昨年12月、清宮がGHCヘビー級王座を獲得した際の相手が杉浦だった。昨年は三沢光晴メモリアル大会で対戦し、大激闘の果てに清宮が防衛している。そして2.24名古屋は真新しいベルトをかけての闘い。清宮はGHCヘビーを杉浦から獲り、守ることで飛躍した。今回も杉浦に勝つことが、ナショナル王座の価値を高めることに直結する。

 それは杉浦にとっても同じことだろう。昨年1年間、GHCヘビー級王座を守り続けた清宮を相手に防衛することには大きな意味がある。この試合に関しては、若い挑戦者が攻める立場、ベテランの王者が守る立場という構図が成り立たない。どちらもどん欲に攻めるタイトルマッチだ。その期待感は、2.16後楽園でさらに高まることだろう。

文/橋本宗洋

(C)プロレスリング・ノア

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