17日の衆議院予算委員会は、「不規則な発言をしたことをお詫びします。今後は閣僚席からの不規則発言は厳に慎むように、総理大臣として身を処してまいります」という安倍総理の謝罪から始まった。
きっかけとなったのは、12日の予算委員会での発言だ。立憲民主党の辻元議員が「『鯛は頭から腐る』という言葉はご存知ですか。ここまで来たら原因は“鯛の頭”。頭を変えるしかないのではないですか」と質問を終え退席しようとした際、安倍総理が「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばした。
これに辻元議員は「意味のない質問って、今誰が言ったんですか?」と追及。安倍総理は「(辻元議員の質問は)罵詈雑言の連続だったわけですよ。『頭から腐る』『腐っている本体が私である』と。私はそれでは質疑が無意味になってしまうと思ったから、これでは無意味ではないかと申し上げた」とした。
しかし、野党は翌日の審議を拒否。新型コロナウイルスなど課題山積みの国会が、一時空転となる事態になった。
安倍総理が謝罪し、「厳しいことを言っても受け止めてほしい。そうじゃないと、みんながイエスマンの議会になったら、議会は大政翼賛会になってしまうと思う。二度とこのようなことがないようにすると5年前にも私に仰ったんですけど、今度こそ総理お願いします」と受け止めた辻元議員。しかし、桜を見る会について追及を始めると、与党側からのヤジがあったのか「『パフォーマンス』って誰か言った?」と指摘し、審議が一時中断。再び委員会は紛糾した。
自民党の伊吹元衆議院議長も「安倍総理も一国の宰相なのだから、その程度の人に対して同じレベルにおりて、あまりムキにならない方がいいと思う」と諌めたが、なぜこのようなヤジが出てしまうのか。臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は、今回は安倍総理の「自己投影」が垣間見えると指摘する。
「安倍総理のヤジを客観的に見ると、やや自己投影があるように感じた。自己投影というのは、自分の嫌なところや納得いかないところ,認めたくない性質や感情を他の人に見て、そして自分のことのようにイライラすること。国会での答弁を遡るとモリカケ問題や、この桜を見る会に関してもはっきりと説明できないことに対して、『これでは納得できないだろう』と思いながら話している節はあると思う。この辻元議員の納得できない発言も、自分の発言に対してモヤモヤしていることと同一のものとして見てしまい、イラッとしてしまう。例えば日常でも、親子関係で子どもに自分に似たところがあってイラッとするようなことがある」
“ヤジは国会の華”とも言われるが、「個人的には感情論にならず冷静な議論に終始して欲しいという意味で、いらないと思っている」と藤井氏。一方で、安倍総理のヤジは機能している部分もあるとし、「ヤジがこうやって問題になると、元々野党は何を言っていたんだという話になる。辻元議員は『鯛は頭から腐る』と言ったが、これは例えば僕らが学生を叱る時に行動そのものを指摘するのにとどまらず、『お前は本当にダメ人間だ』と人格否定してしまうことと似たようなもの。ヤジがあることによって元の発言の質が問い正されるので、野党へのブーメランになる可能性がある。そうなると、野党としては発言に気をつけざるを得なくなり、結果、場合によっては追及が甘くなる局面もあるかもしれない」と指摘する。
また、ヤジは野党だけでなく自民党内にも効いているとし、「政治は妬みの世界なので、長くトップに座っている人に対して納得いかない人、モヤモヤしている人も党内には一定数いると思う。このような問題発言があった時に、表立って立場を表明していない人も含め反安倍の人たちは『またああやってヤジ言って、みっともない』と陰で仲間内で話して、少しスッキリする。安倍総理は意図せずやっていると思うが、『問題発言の責任を取って辞任しろ』などという進退の問題までにはつながり得ない、ちょうどいいガス抜きの問題行動になっているのでは。今回のように型通りの謝罪につながったとしても、対党外、対党内ともに一定の効果を発揮して、結果、安倍総理が利する結果になっていると思う」との見方を示した。
なお藤井氏は、「今回の内閣支持率の増減が、統計学的に意味を持つかといえば、それははっきりとそうであるとは言えない。心理学研究でもアンケート調査を多く用いるが、支持する、支持しないの2択では、より直近のイメージに左右されてしまうところがある。選択肢の設定方法、調査対象者の属性、年齢層、調査媒体、人数など、より本質に迫るために改良する余地はあるのでは」とした。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶映像:「意味のない質問だよ」ヤジを安倍総理が謝罪
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